「おひとりさま」の遺産は誰が相続? トラブルを未然に防ぐ方法を専門家が解説

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2024年06月23日 09:00  女子SPA!

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※写真はイメージです
 5月13日、政府は2024年1〜3月に自宅で亡くなった一人暮らしの人が全国で2万1716人いることを確認しました。しかも、そのうち65歳以上の高齢者が約1万7000人で8割近くを占めているといいます。年間の死者数は約6万8000人と推計されるそうです。

 また、厚生労働省が身寄りのない人が亡くなり、引き取り手のない遺体について、初の実態調査始めることを発表しました。50代は、親の死などを経て、老いや死が身近になってくる時期です。上記のようなことも決して遠い先の話ではありません。

 そして、この頃から、今まで経験してこなかったお金や健康、相続などに関する出来事も他人事ではなくなってきます。

 特に子どもがいない夫婦やおひとりさまにとっては切実な問題です。「自分が死んだら、自分の財産はどうなるのか?」を知って、生前にできる限りの対策をとっておくことが大切となります。そのようなときに、どのような対策をとればいいのかをご紹介いたします。

(この記事は、相続実務士の曽根恵子さんが監修によるムック『子のいない人の相続準備』より一部を抜粋し、再編集しています)

◆おひとりさまの相続は、まず法定相続人を確認しておくことが大事

 子どもがいない夫婦やおひとりさまの相続にとって、大事なのは「次に託す人が誰なのか、託す人がいないのかを確認すること」だと、相続実務士の曽根恵子さんはいいます。

「誰かが亡くなったとき、その人の財産をどうするかは法律で決められています。相続する権利のある人を法定相続人といいますが、配偶者は必ず法定相続人になります。その後、子ども、親、兄弟姉妹の順で法定相続人になります。

 たとえば、子どもがいない夫婦で配偶者と死別した場合、親が生きていれば親と配偶者が財産を受け継ぎます。

 親がいなければ配偶者と兄弟姉妹で分け合います。おひとりさまの場合も同様に、親がいれば親が相続し、親がいなければと兄弟姉妹が法定相続人となります」

◆相続後に異母きょうだいが発覚すると、円満な遺産分割協議はできない

 ここで問題となるのが兄弟姉妹です。離婚や再婚をしている人が増えている昨今、異母きょうだいがいる可能性もゼロではないという点です。

 曽根さんによると、「異父母きょうだいがいるのに相続まで知らなかった」ケースもあると言います。さらに、「相続後に発覚すると、円満な遺産分割協議はできないことが多い」と警鐘を鳴らします。

 そのため、異母きょうだいの存在を確認しておく必要があります。親が離婚や再婚をしている場合は、特に気をつけましょう。

◆希望通りの相続のため「遺言書」を書いておくのもおすすめ!

 異母きょうだいとはいえ、法律では立派な相続人です。もちろん、異母きょうだいでも仲良くしている人もいるでしょうが、音信不通だったり疎遠だったりする場合はどうでしょう。

 そんな人に、財産を残したいと思うでしょうか。これは実の兄弟姉妹にも当てはまりますが、兄弟姉妹は法定相続人ではありますが、遺留分はありません。

 遺留分とは、法定相続人が最低限受け取れる相続財産のことです。そこで、遺言書を残して、「兄弟姉妹に相続させない」と記しておけば、彼らに財産が渡ることはありません。

 近年は、兄弟姉妹ではなく、甥や姪に財産を残したいと考える人も増えているといいます。同世代の兄弟姉妹に財産を残すよりも、お金を有効に使ってくれるという思惑がありそうです。

◆甥や姪に相続する場合は遺言書が必須

 甥や姪に相続したいときに気をつけるべきポイントがあります。曽根さんによると、「甥や姪は相続人ではないため、遺贈するとした遺言書が必須」とのことです。

 また、遺言書を公正証書にする場合は、本人確認のために当事者の住民票が必要となります。したがって、甥や姪本人の承諾が前提となるので注意してください。

 いずれにしても、兄弟姉妹を相続人からはずす場合は、遺言書を残しておくことが大切となります。

◆自分の財産が配偶者の兄弟姉妹に渡る可能性も!?

 配偶者がいる場合も、気をつけたいポイントがあります。自分の財産を配偶者に残すことに問題はないとしても、その配偶者が亡くなったらどうなるでしょうか。

 子どもがいないわけですから、配偶者に残した財産は、配偶者の親や兄弟姉妹に渡ってしまう可能性もあります。自分の兄弟姉妹ならまだしも、配偶者の兄弟姉妹となるとほぼ赤の他人という人も多いのではないでしょうか。

 そうした事態を避けるためにも、甥や姪に財産を残す選択肢は大いにありではないでしょうか。

◆何もしなければ「自分の財産」は国のものになってしまう

 法定相続人が一人もいない場合、財産はどうなるのでしょうか。遺言書がなければ、国庫に帰属することになります。ですから、おひとりさまの場合も、やはり遺言書は残しておくべきでしょう。

 遺言書を書いておけば、お世話になった人に財産を残したり、ボランティア団体に寄付したりすることができます。

 おひとりさまであれば、財産を残す必要はなく、すべて自分のために使っていいのですが、葬式や火葬など死後の処理をしてくれる人のためにも、遺言書は書いておきましょう。

 自分はおひとりさまだと思っていても、「調べてみると身内がいた!」なんてことは相続ではよくあること。戸籍謄本などできちんと調べておくようにすることをおすすめします。

 また、自分がどのように財産を残したいのかをきちんと遺言書に書くこともお忘れなく!

<文/曽根恵子 構成/女子SPA!編集部>

【曽根恵子】
相続実務士®。公認不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士、株式会社夢相続代表取締役、一般社団法人相続実務協会代表理事。相続実務士®の創始者として、1万5000件以上の相続相談に対応。3000件以上の実務実績を持つ。感情面、経済面に配慮した「オーダーメード相続」を提唱し、「相続プラン」の提案にて実務もサポート。家族の絆と財産を守る“ほほえみ相続”をサポートしている。『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2024年版』(扶桑社)、『いちばんわかりやすい 相続・贈与の本 ‘22〜’23年版』(成美堂出版)などの監修を手掛ける。著作も多数。

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