「モデル3」なら最大85万円 テスラ購入で外せない「CEV補助金」の話 支給されて分かったこと

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2024年06月23日 17:01  ITmedia NEWS

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iPhoneにタイヤをつけたようなクルマ」と表現されるTesla。IT・ビジネス分野のライターである山崎潤一郎が、デジタルガジェットとして、そしてときには、ファミリーカーとしての視点で、この未来からやってきたクルマを連載形式でレポートします。


【画像を見る】最大85万円。いま受けられるCEV補助金の概要


 筆者のModel 3は、2021年9月の納車から、はや2年半が経過しました。60代も後半に突入すると時計の針が加速度をつけて怒濤のごとく進んでいくように感じます。筒井康隆氏の小説で「急流」という、時間の進みが加速度的に早くなり、最後は時間がごう音と共に滝つぼの深淵へと落ちていくという、ドタバタ作風の名作があります。そんな感覚です。そんなわけはないか……


 愛車のModel 3は大きなトラブルもなく、日々順調に走っています。時々、降ってくるソフトウェアアップデートのたびに愛車の魅力は増し、クルマとしての「価値」は下がるどころか向上しています。


 誤解があるといけないので付け加えると、ここで言う「価値」とは、査定時の下取り額のような金銭的価値ではなく、自己の内奥に確かな手応えで存在する「愛車精神」に依拠した価値です。


 余談ですが、最近のアップデートでせっかくの価値を下げてしまう変更がありました。雲ひとつない晴天の空の下、突然、オートワイパーが結構な頻度で誤作動するようになりました。


 一般道ではオートワイパーの設定をオフすればいいのですが、高速道路でオートパイロット(運転支援機能)作動中は、オフにはできない仕様です。通常のように雨滴感知センサーだけではなく、カメラだけで周囲の状況を判断しているTeslaだからこそのマヌケな所業なのでしょうか。はやくなんとかしてください。


●Model 3 LRは、85万円の補助


 前置きが長くなりましたが、今回はEV補助金について触れます。EV購入時に日本政府が補助金を支給しているのはご存じでしょう。現在適用される「令和5年度補正CEV補助金」の場合、Model 3 RWDには65万円、同ロングレンジ(LR)には85万円、Model Y RWDと同LRには65万円が支給されます。


 同じTeslaでも金額に差異があるのは、クルマに関する要件に加え、充電インフラ整備やアフターサービス体制の確保、災害時の地域との連携等、メーカーの取組を総合的に評価したためとしています。


 Model 3 LRが85万円と満額評価です。電費性能などに加え、スーパーチャージャーという独自の充電ネットワークが評価されたためだと思われます。Model Yは、航続距離が短いがために65万円にとどまった可能性があります。


 詳しい仕組みを知りたい方は「CEV補助金における評価の基準について」をご確認ください。


●年に1回の報告義務がある


 令和3年9月に購入した筆者の場合、令和2年度第3次補正予算における環境省補助事業で80万円のCEV補助金が支給されました。


 購入時、Tesla Japanより補助金申請の手引きを記したメールが送られてきました。難解で落とし穴がありそうな役所への申請も、この手引きの通り実施したこともあり、問題なく受理されました。


 補助金には支給条件があります。その中でユーザーとして気を付けなければならないのは、車両の保有義務期間が設定されている点です。Teslaのような乗用型のクルマの場合、4年間の処分制限期間が設けられています。


 保有義務期間の間は、年に1回、実態調査として、保有を証明する書類の提出が求められます。ただし、書類といっても、全てWebページからアップロード申請できるので大きな手間ではありません。


 毎年、5月の連休明けに調査への対応を促すメールが来て、6月中旬頃に締め切りが設定されています。筆者の場合は、環境省のCEV補助金だったので、次の項目の提出が求められます。


1. 自宅での再エネ100%電力の消費を証明する書類のハードコピー等


2. 車両の運用実績を示す写真等


 (1)については、再エネ100%電力会社の自分のアカウントから、6カ月分の請求明細をPDFでダウンロードし、それでアップロード申請します。(2)に関しては、Model 3のスクリーンに表示されるオドメーター画面を撮影しJPEGファイルをアップロードします。


 それら書類を事務局側で審査し実態調査「適合」となったら、その旨のメールが送付されるので、その年度の実態調査は終了です。


●新制度では残存期間と補助金額のみで算出が可能


 ここで気になるのは、処分制限期間内に車両を手放す場合の条件です。当然ながら、所定額の返納が求められます。ただ、令和4年度を境にそれ以前とそれ以後では、算出方法が異なるので注意が必要です。


 仮に、令和4年度以前に、税別価格500万円・補助額80万円の車両を200万円で売却した場合は、「200万円×(80万円÷500万円)=32万円」という計算になります。


 この算出方法からも分かるように、保有期間は考慮されず、売却額のみで返納額の多寡が決定されます。なんとも釈然としない仕組みです。だからというわけなのかどうかは分かりませんが、令和4年度の補正予算以降は、残存期間と補助金額のみで算出が可能になりました。


 これなら下取り額という、ディーラーや業者等に売却しなければ決定できない要素を気にしなくていいので、他車への乗り換え時に予算計画が立てやすくなります。仮に、Model 3 LRの85万円の補助額を設定し、他は同じ条件で算出すると次のようになります。


・85万円×(12カ月÷48カ月)=21万2500円


 これであれば残存期間に応じて返却額が算出されるので、ユーザーの肌感覚としてもフェアな印象です。ただ、次も新車のEVを購入し新たに補助金を受けたい場合は、返納終了後でないと次の申請ができない仕組みです。


 ただし、筆者が受けた「令和2年度第3次補正予算における環境省補助事業」については、例外的な扱いを受けています。


 CEV補助金の事務局に確認したところ、「環境省補助事業に限っては、令和4年度補正予算以降の残存期間による計算書式が適用される」とのことです。


 また、処分申請を実施する場合の書式も環境省補助事業だけは別の書式が求められます。2021年にTeslaを購入した人は、筆者のように環境省補助事業による補助を受けた人が多いのではないでしょうか。売却の際には、事務局に確認することをお勧めします。


●「終のクルマ」はアップルカーがよかった?


 とまあ、ここまで読んで「山崎はもしかしたら乗り換えを考えているのか」という疑念(?)をお持ちの方もいるかもしれませんが、現状、その気はまったくありません。最短でも、補助金の保有期間が終了する1年半先、状況によってはそれ以後も乗り続ける気持ちでいます。


 本連載の初回「iPhoneにタイヤをつけたような『Tesla Model 3』を買ってしまった “人生最後のクルマ”になぜ選んだか」で「最後(になるかもしれない)のクルマ選びを楽しむ」と記したように、現状のModel 3を8年、10年と乗り続け、免許返納に至る、などということもあり得ます。


 OSが「漢字Talk」と呼ばれていた1980年代後半からのMacintoshユーザーとしては、ドライバー人生を終了するときのクルマはアップルカーがいいな、と考えていましたが、残念ながら開発を中止したとの報道がありました。


 ならば、「走るiPhone」の異名をとるTeslaが「終のクルマ」となるのもすてきなことではありませんか。というわけで、ITmedia NEWSの編集部が許す限り本連載は続き、2021年製Model 3のアップデートによる進化(一部退化?)とクルマとしてのハードウェアが劣化する様子をお伝えする所存です。


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