春ドラマ女優ベスト3。“子宮を1000万で貸した貧困女性”も凄いけど、今クールの圧倒的No.1は

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2024年06月24日 08:50  女子SPA!

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画像:関西テレビ放送 カンテレ『アンメット ある脳外科医の日記』公式サイトより
4月開始の春ドラマが終焉に向けて盛り上がっています。4月スタートのドラマで、大いに私たちを楽しませてくれた主演女優についてご紹介します。

※以下、6月17日までに放送された内容のネタバレを含みます。

◆『Destiny』石原さとみ

まず、6月4日に最終回を迎えたドラマ『Destiny』(テレビ朝日系)で主演を務めた石原さとみ。産後の復帰作となった本作で、父の自死や恋人の失踪という過去をもつ検事・奏(かなで)役を演じました。石原の得意な“仕事”と“恋愛”の両方の要素が盛り込まれ、胸キュンあり、ハラハラありの展開。どちらにおいても、石原らしい演技が光っていました。

◆女優魂を見せつける圧倒的な存在感

石原の魅力といえば、なんといっても圧倒的な存在感! 第1話の冒頭では、検事としての覚悟をもって気合いを入れる“お仕事顔”の石原が登場。ヒットドラマ『アンナチュラル』における主人公の法医解剖医・ミコト役を思わせ、これから始まるドラマ、起こる事件への期待感が高まる幕開けでした。

その後舞台は14年前へと遡り、運命の人・真樹(亀梨和也)と出会った大学時代へ。37歳の石原が10代の学生を?! と思いましたが、彼女の見せた“垢ぬけなさ”と“あどけなさ”は秀逸。真樹と恋に落ち夢中になっていく様子は、石原が過去に出演してきたドラマ『リッチマン、プアウーマン』『失恋ショコラティエ』『5→9〜私に恋したお坊さん〜』での恋模様を想起させる、さすがのヒロイン力でした。

自殺した父の過去、再会した恋人の現在、そして事件――全身全霊でぶつかっていく奏の姿は、観る者を惹きつけます。そして、最終話のラスト。振り向きざまの笑顔からの、無音での表情は圧巻。まさに熱演でした。

5月17日から公開中の映画『ミッシング』においては、失踪した少女の母親役を主演。極限状態へと追いつめられた母親の絶望と狂気には圧倒されました。女優魂を見せつけた、彼女の代表作となる1本でしょう。『Destiny』『ミッシング』両作品で、表現の幅と同時に存在感を印象付けた石原。次の作品も楽しみです。

◆『燕は戻ってこない』石橋静河

次にご紹介したいのは、ドラマ『燕は戻ってこない』(NHK総合、火曜よる10時〜)で、代理母になろうとする主人公・リキを演じる石橋静河。手取り14万円で貯金もない貧困故に、日本では認められていない代理母出産を選択したリキの葛藤や欲望を見事に表現しています。

◆視聴者の心をザワつかせる感情表現が秀逸

石橋自身は俳優の石橋凌と原田美枝子の次女として生まれ、幼い頃にはじめたクラシックバレエで海外留学。ダンサーから女優へと転向した表現者のサラブレッドです。

朝ドラ『半分、青い。』における佐藤健の妻役で存在感を示し、映画化もされたドラマ『前科者』では保護観察の対象者・仮釈放中の前科者・みどり、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、源義経(菅田将暉)の愛妾・静御前など、意思の強さを感じさせる役どころを多く演じてきました。しかし『燕は戻ってこない』においては、自分に自信がなく幼さすらも感じさせる、“負のオーラ”を纏った貧困女性を演じています。

代理母出産という特殊な題材をテーマにしている同作の登場人物たちは、皆なかなかに共感しづらい設定です。石橋演じる主人公のリキも、育ちや不運が重なったにしても、不安定な生活から抜け出すための“懸命さ”は感じられず、行き当たりばったり。感情と欲望に身を任せて父親が誰か定かではない妊娠をするなど、自分勝手な印象すらあります。

でも、清廉潔白な人間なんていない。無知だけど傲慢で、欲深い。共感はできずとも、リキの行動の背景に潜む人間の“業”をまざまざと石橋は見せつけてきます。自分がその立場だったら、リキのように誤った選択をしてしまうかもしれない――と心がザワザワするのは、石橋の豊かな感情表現に見入ってしまうから。視聴者がリキに苛立ちを覚えるのであれば、それは石橋の表現力のなせる技といえるでしょう。

◆『アンメット ある脳外科医の日記』杉咲花

記憶障害案件が多発した春クールのなかで、最も繊細にその心情を表現したのは、6月24日に最終回を迎えるドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系、月曜よる)主演の杉咲花ではないでしょうか。

杉咲演じる川内ミヤビは、不慮の事故により脳に損傷を負い、記憶障害の重い後遺症をもった脳外科医。過去2年間の記憶が抜け落ちており、今日起こったことはすべて明日には忘れてしまうのです。ミヤビは毎日の細かな出来事と気持ちを日記に綴ります。毎朝5時に起きて、戸惑いながら日記を読むところから始まるミヤビの日常。それを丁寧に表現する杉咲の演技は大いに注目を集めました。

◆泣き演技の天才は、“日常の描写”でも凄かった

もともと演技力には定評のある杉咲は、特に近年難しい役どころを務めています。ドラマ『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』では、ヤンキー青年と恋をする強度の弱視を抱えた女子高生。映画『市子』では、過酷な家庭環境で育ち、無戸籍で生きることになった壮絶な半生を背負う女性。そして今年公開された映画『52ヘルツのクジラたち』では、実母からネグレクトを受け、21歳で義父の介護をひとりで担う主人公。どの役も、期待を大きく上回る熱演で心を揺さぶられました。

これまでの作品から、彼女が“泣き演技”の天才であることは明確です。本作でも美しい涙で感動を呼んでいます。ですが筆者は『アンメット』で、杉咲の凄さを“日常の描写”にこそ感じました。第1話にゲスト出演した風間俊介がX(旧ツイッター)で「なんで、あんなに美味しそうに食べれるのだろうか。」と絶賛したことも話題になりましたが、まさしく! 食事シーンの秀逸さはもちろんですが、ミヤビが自宅で過ごすシーンにおいても杉咲の細やかな日常表現が光ります。朝目覚ましが鳴って起きる場面ひとつとっても、覚醒した瞬間、目をつぶったまま音を探す仕草、目覚ましに貼られた付箋に戸惑う様子などを、自然な流れで、物凄くリアルに表現しているのです。

ミヤビが積み重ねてきた日常と彼女の人物像が、杉咲の細やかな表情、仕草から浮き彫りになっていく。圧倒的でありながら、観るものを自然と物語の世界へ誘っていく彼女は間違いなく今クールNo.1! 6月21日には主演を務める映画『朽ちないサクラ』が公開。親友の変死事件を独自に調査するなかで、警察内部の闇に迫る県警の職員を演じます。これからも杉崎は、私たちの期待を裏切り邁進し続けてくれることでしょう。

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主演を務める女優さんは、作品の出来を決定づけることがあります。今回ご紹介した3人は間違いなくドラマの質を押し上げる名演で、私たちを魅了してくれました。ますますの活躍が楽しみでなりません。

<文/鈴木まこと(tricle.ltd)>

【鈴木まこと】
tricle.ltd所属。雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201

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