ソフトバンク時代、孫正義氏から怒られて“気づいたこと” 北澤孝太郎氏が明かす、営業トップの最も重要な役割とは

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2024年06月24日 17:10  ログミー

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ソフトバンク時代、孫正義氏から“怒られたこと”

北澤孝太郎氏(以下、北澤):せっかくですから自分の話をしますと、僕はソフトバンクで役員になったわけですが、携帯電話を売る時にソフトバンクテレコムは売る側に回ったんですよね。僕は音声事業本部長になったので、いわゆるそこの電話の責任者です。(予算は)1,800億円ぐらいあったと思います。

その時の元部下は1,000人以上いましたが、「昔のJ-PHONE、ソフトバンクはつながりにくい。これでは戦えない、なんとかしてください」と、散々僕にクレームが来ました。

それには明らかに理由があって。その前の会社のイギリス人の役員が2年間投資せずに、そのまま本国で某ボー……ですが(笑)、副社長まで昇進した悪いやつがいましてね。彼のせいでまったく投資してなかったというのがあって、さらにつながりにくい。

僕は大部長をやってましたから、いろんな電力会社の偉い人をたくさん知ってましたので、アンテナをどうやって立てるかということをまとめて、孫(正義)さんのところに持っていったんですよね。そしたら、孫さんにえらい怒られて。「いいか。今、誰がつながらないと言ってるのかをよく考えろ。営業部長や営業の役員じゃないか」とね。

携帯電話の世界というのは、当時はまだそんなに普及してませんから。例えば学生さんとか主婦とか、1人1台みんなが持つような世界を作るんだよと言われて。

当時の基本料金が3,980円だったんですが、ソフトバンクは980円で、ソフトバンク同士は(通話が)無料。このプランを考えたので、これをやるんだと。

「そのプランを法人に売れるように考えるのがお前の仕事だ。使ってもいないような人たちとか、ゴルフ場とかで『使えない』と言ってるような人たちに売れることを考えるのがお前の仕事じゃない」と言われましてね。穴があったら入りたいとは、こういうことですね。

営業部長と役員の役割の違い

北澤:役員とは何をすべきなのかというと、事業プランをしっかり考える。僕がやっていたことは(携帯電話が)いかに売れるかということですから、営業部長の仕事ですよね。もう恥ずかしくて、でも「なるほど、役員はこういうことを考えるんだ」と、営業部長とぜんぜん違うということはよくわかりましたね。

そういうエピソードがあったので、営業部長と役員とは明確にやるべきことが違うっていうのはわかりました。

井上和幸氏(以下、井上):今ので言うと、その時の部長職は何をやる人になるんですかね? 北澤さんから「役員はこれをやるんだ、部長とは違うんだ」というお話があったんですが、役員と部長の違いという意味ではどうなんですか?

北澤:事業構想や世界観とか、「携帯電話とは」「こういうのを作り出して、そのために何をすべきか」というのを考えるのがやはり役員の仕事。

部長もそれをやってもいいんだけど、当時の部長というと、「携帯電話が使えない」という課題に対して自分の人脈を使ったり、持てる課題解決の能力を使ったり。その問いに対して真正面から答えていくというのが、当時だったら重要な役割だったんじゃないかなと思いますね。

僕の下の人たちが僕と同じようなことをして、例えば電力会社の社長に「知ってますから、こういうふうに計画を立てて、これを役員とやってください」というふうにやっていれば、すごい会社になったと思うんですが。僕がそれをやっていたわけで、「これはちょっと違うな」という感じですかね。

井上:なるほど。北澤さん、ごめんなさいね。このへんをクリアにしておかないと、視聴者の方も迷うような気がしたので。これまでの役員と部長がビジネスメイクをしていくんだというところは、たぶんみなさんすごくクリアに受け取ってくださったと思います。

これからの営業部長・役員に求められる視点

井上:もう1つ、上の話(幹部人材=会社の問いに答える人)を実体験でしてくださったんですが、もしかしたらここが、聞いていただいてるみなさんがわかりにくくなってるかなという感じがするんですが。

北澤:例えば部長の役割としては、携帯電話をどんなネットワークで、どんなふうにしてつなげて、どんなふうにして売っていくかというのが、構想としてちゃんと考えられるのが部長の仕事だと思うんですよね。

ところが、そうじゃないんだと。今やるべきことは、「全員が1台(携帯電話を)持つ」という構想の中で、携帯電話をどのような位置づけに持っていって、料金をどうして、全体の事業としてこんなふうに……と構想を考える。当時ドコモもKDDIも3,980円でやっていて、ソフトバンクだけ980円でやるわけですから、儲かるとか儲からないという事業構想がない。

要するに、自分たちはその世界は目指していなくて、「全員が1台持った中でパケットで稼ぐんだ」という話だったと思うんですよね。「データのトランスで儲けるんだ」と。通話では儲けるわけじゃない。だから、1台を全員に配ることのほうが重要だと考えられる構想力が役員の仕事。

井上:明確にパキッとゼロイチみたいな区分けがあるわけではないけれども、現ビジネスをいかにビジネスメイクしていくかというところを、部長の方はちゃんと考えないといけない。

北澤:当時だったらですね。

井上:役員はそこにとどまらず、近未来構想であったり、もしかしたらもっと先のことも含めて、どういう世界を実現するのかっていう構想を考える。部長が見ているビジネス構想より……。

北澤:目線を高くね。

構想力を高めるために必要な「情報収集力」

井上:「より上のところを見て行動するのが役員だぜ」ということが、孫さんのおっしゃったことっていう感じですかね。

北澤:そうですね。その世界観の勝負だって言ったわけですね。世界観を持っている役員なのかそうでないかで、事業が大きく変わる。その世界観を磨くために働きなさい、勉強しなさいと。

井上:本当にすごいことですよね。

北澤:「汗をかきなさい」って言われたと僕は解釈してるんですが。

井上:なるほど。全員がそれに対してどう思うかはあるかもしれないけど、経営の一翼を担うとか、事業を率いようと考えれば、なんとやりがいのある立場だってことですよね。

北澤:そうですね。それに答えられるかどうかが、役員としての本質を問われてるというか。

井上:おっしゃるとおりですね。でも、この「構想力」って、本当に今おっしゃったようなことだと思います。特に経営陣の方とか、あるいはそれに準ずるところで見ていらっしゃる上位のマネジメントの方がそれをやっていくと、世の中は大きく変わるわけですよね。

北澤:そうだし、下の方も楽しいというか、自分のやろうとしていることや思いを超えて上司が動いてるというのは、すごくワクワクするというか。「この人となら一緒にやりたい」って思うと思うんですよね。

井上:そこが先ほどの組織作りのところでもお話しくださったことだし、北澤メソッドが出発点にされてるところです。

北澤:井上さんで言うと、「描く力」ね。

井上:本当に描く力ですね。お話の流れからすれば、それも本当は今日入れておけばよかったなと思うんですが(笑)。どういう因子を見てるかというのがあるんですが、実は描く力のところで重要因子に上がってきたのは、まさしく情報収集力なんですね。

これも部長の役割で、役員の役割もそうだと思うんですが、「本当にしっかり市場探索してるのか?」みたいなところとか。実際問題、描く力が発揮できる方はそういう行動が当たり前なんだと思うんですが、やはりインプットなくしてアウトプットはないので。

事前には思い描いたりするようなことだけ考えてたんですが、ただ解析してみたら……もちろん構想することや練ることもあるんですけど、それよりも「ちゃんとインプットしてるのか」がすごく強い因子で出てきたのは、これを作った時に僕も気づきだったんです。

営業トップの最も重要な役割は「ビジネスの先頭に立つこと」

北澤:部長時代に外部統合してない人は、役員になって描く力を急にはつけられないです。

井上:うん、できないですね。

北澤:だから、失敗もあるしムダもあるし。だけど、部長時代に相当な外部統合をされてる方が役員になったら、描く構想力は身についてる。役員になると実際に発揮しないといけないので。

井上:ちょっと失礼な言い方だとは思うんですが、本当の意味で経営力を発揮される方や役員・経営陣の方と、どちらかというと内部昇進・昇格、政治ルールでやってきた人との差が現れるところのような気がしますね。

本当は後者みたいな人はいらないはずなんですが、一直線に上がってきた時には、組織上にそういう人がすごく出てきてたのは事実です。ただ、今はそういう人が生き残れる時代ではもはやなくなってるんですが、大手さんとかだとまだいらっしゃるような感じがします(笑)。

北澤:なんとなくね。「こっちを立てればこっちが立たないから、お前、ちょっと調整役で偉くしとくわ」みたいな感じはあるかもしれませんね。

井上:組織要因での論功行賞みたいになっている方もいるので。ありがとうございます。お話に熱中していたら、ほぼ終了時間になってきました(笑)。北澤さん、まとめ的なところであらためてお話があれば、ぜひ残りの時間で。

北澤:はい。プログラム6の「営業トップの役割」というのは、やはりビジネスの先頭に立つことが一番重要です。間違ってもいけないのは、後ろに立って標準化を求めること。

我々の時代……もう40年ぐらい前の話ですから、その時代に重要だったマネジメントの役割をやめて、前に立って、自分からビジネスを作りにいく。この力の差が企業の力の差だし、個人の力の差にもなるということですよね。僕たちもそういう人を応援しなあかんと思いますね。

井上:率先垂範でもあると思いますし、市場にちゃんと触れてる方かどうかということですね。ありがとうございます。

“奥座敷に座っている人”ではダメな時代

井上:「奥座敷」という言い方をふと思い出しました。「奥座敷に座っている人」みたいに、たぶん半分揶揄する言葉として使われてたと思うんですが、それじゃダメだということがあらためて実感できました。北澤さん。すごくいろんな意味で、僕も今日はあらためて発見がありましたし、チューニングすべきポイントもいただけました。本当にありがとうございました。

北澤:こちらこそ。

井上:読まれた方は多いかもしれませんが、あらためて。今日の話も盛り込まれている『営業部長の戦い方』、今日の話も思い返しながら読んでいただくと、みなさんの行動の具体的なヒントが満載だと思いますので、ぜひお手に取ってみてください。

北澤:よろしくお願いします。

井上:当社は公式LINEもやってますので、この経営者テラスの記事とか、今後の開催予定もみなさんにお伝えしてます。もしご登録がまだな方は、ぜひご登録ください。

トークライブは次回以降も準備が進んでいまして、また近日中にみなさんにご案内させていただきますが、ちょっとおもしろい企画を用意いたしますのでぜひご参加ください。北澤さん、本当に今日はありがとうございました。

北澤:どうもありがとうございました。

井上:みなさんもご参加ありがとうございました。

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