「働かないおじさん」の“隠れたやる気”を引き出す方法とは? 年上部下をマネジメントする上での6つのポイント

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2024年06月24日 17:30  ログミー

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「働かないおじさん」のやる気を引き出すには?

伊庭正康氏:今日のテーマはこちら。リーダー必見、年上の部下のやる気を引き出す方法を紹介していきます。あなたの職場に「働かないおじさん」はいないでしょうか? だとすれば、彼らの心理を知る必要があります。今、私は54歳で、彼らの本音も知っていますし、データも見てきました。だからこそ、年上の部下の方のやる気を引き出す方法を紹介できるんです。

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さあ、ではいきましょう。まず、中年だからといってすべてを一緒に考えないでください。「パフォーマンス躍進組」と「パフォーマンス停滞組」に分かれると言われているんですね。実は、パーソル総合研究所さんの調査でもそれは明らかになっています。

パフォーマンス停滞組の特徴があります。まず、役職者ではない50代前半の方は特に多いと言われています。パフォーマンスが停滞してるんですが、「実は50代前半を底に、M字カーブを描く」ということも言われています。

どういうことかというと、アルファベットの「M」ってありますよね。大文字のMでイメージしてください。いったんへこみますが、そのへこむところがちょうど50代前半のパフォーマンスと言われてるんですね。

でも考えてみると、このへこみはまた右肩上がりになるわけですよ。何があれば右肩上がりになるんでしょうね。そこを知っておけば、働かないおじさんのパフォーマンスを引き出す方法がわかって、誰もが右肩上がりになっていくという話なんです。そのタイミングを作っていきましょう。

「愛されたい」から「世話をしたい」へ気持ちが移行

まず1つ目です。ミドルエイジは「世話をしたい」という感覚を持っているんです。これは「世代継承性」、ジェネラティビティと言われます。心理学者(エリク・ホーンブルガー・)エリクソンという方が提唱して、今や誰もが知っている考え方です。

世代継承性とは、「次世代の成長に深い関心を注ぎ、世話をしたいという感覚」のことを言います。そして、50代ぐらいの方はこの感覚を持っているという話なんです。

この理論に基づくと、40歳くらいまでは「愛を求める」と言われています。「もっと私を愛して、もっと私はあなたを愛したい」と、愛したいし愛されたい。確かにそうですよね。恋愛もあれば、結婚もあれば、子育てもあれば、上司からも慕われたいし、同僚からも慕われたい。そういうの、あるでしょうね。

でも、この感覚がだんだんとなくなっていくんです。このあたりでボタンのかけ違いがあるんですよね。40歳あたりを越えてくると、世代継承性がグッと上がってきます。これは愛する・愛されるではなくて、「自分はもっと誰かを世話したい」という感覚のことを言います。

さらに言うと、「次世代の成長に向けて私は世話をしたい」というのが世代継承性なんです。ここに早めに気づいてもらい、その役割を早く持ってもらったらいいんです。だとすれば、過去の話を聞く。そして本人が「こんなことをもっと伝えていきたい」と思うことがあるのであれば、それをちゃんと聞く。その上で、ちゃんと役割を付与する。

経験を活かして、例えば勉強会をしてもらうとか、レポートを作成してもらうとか。つまり、伝承したい何かはあるんですよ。

自分の経験だけじゃなくて、多くのミドルエイジは「こういったことをもっと伝えていってあげられたら、次の世代の人はもっと良い仕事をするだろうな」ということに対して関心を持ってます。まずは「世代継承性」というキーワードを覚えておきましょう。

低意識層の50代の特徴

そして2つ目が「経験で勝負がしたい」。これは、パフォーマンス躍進組もパフォーマンス停滞組も共通はしているんです。でも、実はある1点が違うので、そこを押さえておきましょう。

まず、パフォーマンス停滞にある「低意識層の50代の特徴」を紹介します。これもパーソル総合研究所さんの調査で出ています。もちろん誰もが経験を活かしたいということは言いましたが、低意識層の方々はちょっと違うんです。確認していきましょう。

「経験を活かし、なじみのある仕事をしたい」と考えている低意識層の50代は約8割。ここはいいですよね。実は、次が高意識層と違うんです。

「経験を活かし、難易度の高い仕事をしたい」と考えている低意識の50代は、なんと3割しかいないんですよね。高い意識を持ってる人はこれも高いんですが、低意識、つまり低い意識の人はここがぐっと下がっちゃうんですよね。一言で言うと「しんどいことはしたくない」ということです。

ちょっと私の話をさせてください。30代、40代、50代は違うんですよ。これは、明らかに誰もが「違う」という感覚を持つと思います。あなたは50代の感覚がわかりますか? 私は今54歳なので、わかります。

30代は「未来に向けてがんばるぞ!」ですよね。「自分のキャリアを作るためにがんばるぞ」「こんなことを成し遂げるぞ」というものがあると思います。

40代になると、いろいろとものがわかってくるので、「自分のポストはここまでかな」「自分のキャリアはこれで培ったので、活かすとしたらこんな感じかな」というのが、なんとなく見えてくるんです。

50代になってくると、またちょっと違うキャリア観が出てくるんですね。キャリアというよりは、どちらかというと健康でいたい、日常があったらそれでいい、穏やかに過ごしたい。そりゃそうですよ。生命体としても、もう50年を経ているんです。そりゃもうあまり無理はしたくないんですよね。これが一般的な50代の方が持っているものです。

あえて期待度は上げず、難易度を段階的に上げる

さらに低意識層の場合は、それに環境が拍車をかけますよね。「もうあなたにはそれほど大した役割がありません。でも、その中でやる気を出してくださいね」という感じになっていませんか?

「やっぱり私は、もうしんどいことしたくない。今で十分です」と、なおさら思うわけです。「今で十分」になるんですよね。でも、これではマネジメントに困ります。だから経験を活かしてもらいましょう。ただし難易度を甘くする必要はありません。難易度は上げていきましょう。

あえて期待度はそんなに上げないでください。いきなり難しいことはダメです。「段階的に難易度を上げていく」という方法がおすすめです。これは心理学で言うと「シェイピング」という方法で、ステップバイステップで徐々に難しくしていく方法があるんですね。「気がつけばできるようになっていた」というやり方なんです。

ですからシェイピングの技法を使って、「まずはここだけやってみませんか?」というふうに、経験にちょっとずつ足していくような感じでやっていただくと、ちょっとずつ足したものが経験になりますよね。

経験に対してちょっと上積みになって、経験がまた重ねられたので、それに対してちょっと経験を載せていく。こんな感じにしていただきたいんですね。すると経験によって、なお新しい時代で勝負できる状況になるわけです。

ですから、ステップバイステップでゆっくりと「半年とか1年かけてこうなってほしいな」ということはイメージしておかれるといいと思います。

面談はあるのに、振り返りの機会がないミドルシニア

では3つ目。実は50代は「振り返る機会」がないというデータがあります。こちらもパーソル総合研究所さんの調査なんですが、面談はしてもらっているが、振り返りはしてもらってない。

ですから、自分が今どんな状況かわからないままに、周囲から働かないおじさんと見られており、「私のことは働かないおじさんと思ってる人はいないよね?」というギャップが生まれていることがあるんですよ。定期的に面談をするだけじゃダメということです。

「定期的に面談をしてもらっていますか?」ということに対しては、約半数が「してもらってます」と言います。しかし、「上司は課題を明確に指摘してくれますか」と言われると、28パーセントぐらいの人、つまり4人に1人ぐらいしか指摘してもらってないんですよ。4分の3は指摘してもらってないんですよね。

そんな中で「働かないおじさん」と言われたら、そりゃ彼らもかわいそうですよ。私も同世代で彼の気持ちがわかりますから、「そこが課題ですよ」と、ちゃんと指摘してあげてください。意外とうれしいんです。

そして、振り返りの機会を与えてください。「あなたの課題はこれです。でも、あなたなら絶対にできます。何があればできるんでしょうね?」ということをぜひ考えさせてください。まだまだ期待してあげてください。期待度をぐっと高める必要はないですが、適正に期待をかけるのでけっこうでございます。

未来の話をするとパフォーマンスが伸びる

あと、こちらも言われてますね。「中長期のキャリアを考えて支援してくれてません」と言ってるんですよ。これも4人に1人はしてもらってるけれども、4人に3人はしてもらってない。

また、50代の伊庭だからこそ言えることをお伝えします。私の同級生も50代半ばでございます。会社員同士が集まったらどんな会話になるか。40代の時はみんなキラキラしてました。管理職になったり、もしくは「この事業を任された」とか、キラキラしたやつが多かったです。

……が、50代になってきた時の会話は「役職定年だわ」「これからサポートに回るの」「ああもう、定年後どうしようかな」と、本当にけっこうしんみりした会話になります(笑)。あとは「健康、大丈夫か?」という会話になってきます。

ですから、未来の話はあんまりしてないケースが多いんですよね。でも、未来の話をしてあげてください。さっき「パフォーマンスはM字を描く」と言いましたが、またどこかでグッと伸びるんですよね。実は、これは何がきっかけになっているかがわかってるんですよ。

今後のキャリアの棚卸しをして、「自分はこのように生きていきたい」ということが見定まったら、グッと上がるんですね。60代はめちゃくちゃ上がります。早めにそれを差し上げたらグッと上がる。Mの右肩上がりのタイミングが早くなるという話なんです。

私は50代半ばと言いましたが、60代になった時のイメージ、70代になった時のイメージ、80代はこうしたいな……という夢があります。ですから勝手なことを申しますと、年齢は30歳ぐらいのマインドでやりたいなと思ってます(笑)。「まだまだ枯れてたまるか」と思ってますが、これは未来が見えてるからですよね。

思うのは自由です。そして、誰もがそのように思えるなら思いたいんです。ですから、ぜひ中長期のキャリアを考える機会をあげてください。

もしあなたがその会話をできるなら、それでもけっこうです。ただ「ちょっとこれは重たいな」と思われるケースもあると思うので、それは会社としてやることが必要です。

働かないおじさんへのマネジメントのポイント6つ

私のお客さまで60代中心の管理職の会社がありますが、めちゃくちゃ生き生きとされてます。働かないおじさんではありません。もう、働きまくり。キラキラしてる60代ばかりの管理職の会社がありまして、私も勉強になってます。

ですから、中長期のキャリアが見えたら人はグッとがんばれるんですよね。そこを会社としても支援していくか、もしくはあなたが会話してあげるか。可能であればしてあげてください。課題の指摘と振り返り、その内省の機会を持つことです。ここはちょっと難易度が高いんですが、会社として取り組んでもいいんじゃないかなとは思います。

では、まとめていきましょう。今日はこの6つの話をしていました。

働かないおじさん対策の1つ目。M字カーブを描くので、ぜひそこを押さえておいてください。今、(ミドルシニアは)谷にいらっしゃるんです。早く谷から引っ張り上げてください。そのためには、キャリアを見つめることで復活するとわかってるので、早めにその会話をしてあげてください。

2つ目、役割を付与してください。経験を活かして勉強会や情報共有の役割なんかをすると、世代継承性が刺激されてグッと上がるんですね。そして3つ目、いきなり期待度を上げちゃダメです。ステップバイステップだと言いましたが、難易度を段階的に上げてください。

そして4つ目、課題を明確に指摘してあげてください。そして5つ目が同時に、振り返りの機会もあげてください。そして6つ目。これは、あなたがやるのか会社がやるのかをちゃんと整理をした上で、中長期のキャリアを考える機会をしっかりと持っておかれることをおすすめいたします。

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