サイバー攻撃渦中のニコニコがAWSのイベントで講演 動画の配信基盤について解説、観客から拍手の一幕も

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2024年06月25日 09:51  ITmedia NEWS

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 サイバー攻撃を受け、6月8日以降サービスを縮小中のニコニコ。実は、AWSの技術展示イベント「AWS Summit Japan」(幕張メッセ、6月20日〜21日)での講演が障害発生前から決まっていた。


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 同様の講演イベントにおいては、登壇企業に大規模なインシデントや不祥事が発覚した場合、講演を急きょ取りやめるケースが少なからず見られる。しかしドワンゴは予定通りの内容で講演を実施。イベントを主催したAWSジャパンも、その様子を来場者向けにオンデマンド配信している。


 ドワンゴが登壇したのは21日のセッション。「より良い視聴体験を求めて、ニコニコ動画の配信基盤刷新の舞台裏」と題し、ニコニコ動画の配信基盤を刷新した背景について、同社の久保田陽介さん(ニコニコサービス本部 DMS開発部 第一セクション マネージャー)が語った。なお、主題となるニコニコ動画の配信基盤は14日の発表でも明かされている通り、サイバー攻撃の被害を免れている。


 久保田さんは講演の冒頭で「報道などでご存じの方も多いと思いますが、現在ニコニコは大規模なサイバー攻撃の影響により、多くのサービスが利用できない状態が続いています。ユーザー・関係者の皆さまには、ご不便をおかけしており、心からおわび申し上げます」とサイバー攻撃について触れた。


 観客からは拍手があり、久保田さんは「ありがとうございます。少しでも早い復旧に向け、全社を挙げて取り組んでいますので、今しばらくお待ちください」と感謝の意を述べ、講演を続けた。


●動画・生放送の相乗りが足かせに 基盤刷新に至ったワケ


 久保田さんは、基盤の刷新に至った背景や、新しい基盤の構成について講演。ニコニコ動画では2016年から約8年間オンプレミスの配信基盤を利用していたが、24年3月に新たなクラウド基盤に乗り換えた。性能は安定していたものの、設計思想に由来するいくつかの課題があったという。


 そもそも旧基盤は、ニコニコ動画とニコニコ生放送で共用する仕組みだった。どちらも動画ファイルの形式が共通している他、動画はストレージへの負担が、生放送はCPUへの負担が大きい特徴があり、共通基盤内でリソースを使い分ければ効率的な運用が可能になると考えての設計だったという。


 しかし実際は狙い通りにいかず、複雑さに由来するメンテナンスのしにくさが残った。さらに、完全にオンプレミスで運用していたことからスケーラビリティ(サーバ規模の拡縮しやすさ)に欠き、突発的なアクセス増に対応できないなどの問題もあった。


 そこで新基盤では、動画と生放送の配信システムを分離。動画部分を単純化の上AWS化した。例えばストレージには「Amazon S3」を、CDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク、複数の別サーバがサーバ本体に代わってコンテンツを配信する技術)に「CloudFront」を採用した。


基盤刷新の成果 リソース削減やUX改善も


 基盤乗り換えの結果、旧基盤では1万以上使っていた仮想コアの数を約300まで削減するなど、リソース削減を実現できたという。さらにコンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」の導入によりスケーラビリティを確保した他、運用も簡便化。コストの削減にもつながった。


 基盤の刷新により、ユーザー体験の改善も可能に。かつてニコニコ動画には、負荷削減のために混雑時間帯のみ無料会員の画質を制限する「エコノミータイム」が存在したが、基盤刷新によりこれを撤廃できたという。同様に、30分以上の動画は低画質でした投稿できない制限も撤廃した。


コスト試算などに不安も ニコニコの対策


 ただし移行やその準備段階では懸念点もいくつかあった。例えばコスト試算だ。旧基盤のデータを基にAWSの支援を受けながら計測していたが、オンプレミスとクラウドで勝手が異なるため「不安を感じながらの作業だった」(久保田さん)という。ただ、事後に試算と実情を比較したところ、コストがかかる項目を100以上に細分化して計測したことが奏功し、結局は97%程度の精度で予測できていたという。


 懸念点は他にもあった。実は、今回の刷新は担当チームにとって初めての“クラウドネイティブ”(クラウドの利用を前提としたシステム)な開発、初めてのKubernetes運用、初めてのGo言語による本格的な開発と、“初めて尽くし”なプロジェクトで、技術的なキャッチアップと設計・開発が同時進行だったという。そのため社内での勉強会やメンバー間での情報共有会などを積極的に実施し、理解促進に努めたとしている。


 久保田さんによれば、基盤の刷新は移行で終了ではなく、今後もコストの最適化などを機能追加を進める方針。生配信用の基盤を刷新するプロジェクトも進めているという。


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