マウスコンピューター初のChromebookの実力は? 「mouse Chromebook U1-DAU01GY-A」を試す

0

2024年06月25日 15:51  ITmedia PC USER

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia PC USER

マウスコンピューター初のChromebook「mouse Chromebook U1-DAU01GY-A」。最小構成の販売価格は6万9850円(税込み)だ

 マウスコンピューターが6月3日、同社初のChromebook「mouse Chromebook U1-DAU01GY-A」(mouse Chromebook U1)を発売した。同社は手頃な価格で高クオリティーなPCに定評があるだけに、3月12日に第一報が出て以来、本機は発売されたらぜひ試したいと思っていた。


【その他の画像】


 今回、本機を借用してレビューの機会を得た。使用感をじっくりとチェックしていこう。


●「Next GIGA」を見越したスペック


 mouse Chromebook U1は、文部科学省の「GIGAスクール構想」で導入された端末の取り換え(リプレース)、いわゆる「Next GIGA」を視野に開発されたという。スペック的には2024年度から適用される条件を満たしており、スタイラスペンによるペン入力にも対応する。ペン入力時の利便性を確保するために、360度回転するコンパーティブル式のボディーも採用している。


CPUはAlder Lake世代の「Intel N100」を搭載


 CPUは「Intel Processor N100(Intel N100)」を搭載している。Intel N100は「Celeron N5105」などJasper Lake世代の低価格PC向けCPUの後継モデルで、第12世代Coreプロセッサ(開発コード名:Alder Lake)で採用された高効率コア(Eコア)のみを4基4スレッド搭載している。内蔵GPUは、Alder Lakeと同じXe-LPアーキテクチャのコアを備える。


 「低価格PC向けCPUだからパフォーマンスは期待できないのでは?」と思う人もいるかもしれない。しかし、CPUコアのパフォーマンスは、2015年にリリースされたサーバ/ワークステーション向けCPU「Xeon E3-1225 v5」よりも高い。また、内蔵GPUのコアも素性が良く、GPUを使った演算(いわゆる「GPGPU」)の処理パフォーマンスも悪くない。


 メインメモリは8GB(LPDDR5-4800)、ストレージは64GB(eMMC)を備えている。ストレージがeMMCなのはパフォーマンス的にちょっと気になる所だが、小学校や中学校の授業で“普通に”Chromebookを使うなら十分ではあるだろう。


ペン入力にも対応(外付けホルダー付き)


 Next GIGAに向けて文部科学省が公開した「標準仕様書」では、「タッチパネル」と「ペン」の搭載が必須となっている。ペンについては、本体側にセンサーを備えるスタイラスペンの他、タッチセンサーに反応する簡易的なものでも構わないことになっている。


 その点、mouse Chromebook U1では、タッチ入力に加えて、Googleが定める「USI2.0」規格のペン入力にも対応しており、同規格に準拠するペンも付属する。ペンを別途用意しなくても済むことは、Next GIGA向け端末の導入を検討している教育機関(自治体)はもちろんだが、「学校と同じような環境を子どもに用意したい」と考える家庭にもありがたいことだろう(※1)。


(※1)小学校/中学校課程の大半の学校では、児童/生徒に学習用端末を“貸与”という形で提供しており、中には学校からの持ち出し(≒家庭への持ち帰り)を禁止または制限しているケースもある。GIGAスクール構想/Next GIGA向けの学習用端末と同じ、あるいは近いスペックのPCがコンシューマー向けに販売されるのは、「子どもの自宅での学習の足しにしたい」というニーズがあるからだという


 スタイラスペンはバッテリー内蔵の充電式で、4096段階の筆圧検知と60度の傾斜検知に対応している。特に傾斜検知は書き味(描き味)を改善する上で非常にありがたい。


 充電は付属のUSBケーブルで行う。本体にペンホルダーは内蔵されていないものの、USB Standard-A端子に差し込むペンホルダーも付属する。


 ペンホルダーについては、ペンと一緒に持ち運ぶ際に便利な上、ペンだけを紛失するリスクを低減できるので、付属するあけでもありがたい。ただし、強いて欠点をいうとペンホルダーをUSB端子に入れたまま何かにぶつけてしまうと、USB端子が破損したり、ペンホルダーが破損したりしてしまう恐れがある。運が悪いと、両方が同時に壊れてしまう可能性も否定できない。


 ゆえに「ペンホルダーを本体に内蔵してほしかった(できればペンの充電対応で)」と思ってしまう。しかし、Next GIGAの学習用端末としての導入を主眼に入れると、コストの制約で難しい面もあるだろう。ここは“痛しかゆし”である。


打ちやすい日本語キーボードも搭載 Webカメラも高画質


 Next GIGA向け学習用端末では、文字を入力するデバイスとしてハードウェア(物理的)なキーボードに対応する必要がある。キーボードの配列は日本語(JIS)の他、米国英語(US/ANSI)も許容している。形態は本体との一体型はもちろん、ポゴピンまたはワイヤレス(Bluetooth)で接続できる分離型でも構わない。


 その点、mouse Chromebook U1は本体一体型の日本語キーボードを搭載している。公称でキーピッチが約18.7mm、キーストロークが約1.4mmとなっており、大人はもちろんだが子どもの手でもタイピングしやすい絶妙な使用感を実現している。キー配列もChromebook標準にのっとっており、本体右側にある一部のキーの横幅が狭くなっていることを除けば違和感を覚えることはないだろう。


 Next GIGAでは引き続き、イン(画面側)カメラとアウト(外側)カメラの搭載を必須としている。1台でイン/アウト両方を撮影できる機構を備えない限り、都合2台のカメラの搭載が求められることになる。


 この条件を満たすべく、ディスプレイの上部に約100万画素のインカメラを、キーボードの上部に約500万画素でオートフォーカス(AF)対応のアウトカメラを備えている。「なんで“アウト”カメラがキーボード上部にあるの?」と思うかもしれないが、これはアウトカメラはタブレットモードで使うことを前提にしているからだ。


 アウトカメラにはAF機能が備わっている。教科書や資料集に掲載された二次元コードの読み取りはもちろん、教室内や屋外での撮影アクセシビリティーの際も便利に使えそうだ。


 強いて難点を挙げると、LEDライトの類は装備されていないので、暗い場所での撮影がしづらいことはある。もしも暗い場所で撮影をするというなら、別途ライトを用意すると良さそうだ。


画面は光沢加工 解像度の低さは意見が分かれそう


 ディスプレイは11.6型液晶を採用している。先述の通りタッチ操作とペン入力に対応しており、表面はグレア(光沢)加工となっている。そのため、状況によっては画面に照明などが写り込んでしまう恐れがある。


 それよりも気になるのはディスプレイの解像度だ。本機の液晶パネルの解像度はHD(1366×768ピクセル)となっている。一般的なコンシューマー向けノートPCでは、WindowsはもちろんChromebookでもフルHD(1920×1080ピクセル)のパネルを備えるモデルが主流となる中で、「今さらHD解像度なの?」と思わなくもないが、他メーカーを含めて、学習用端末では未だにHD解像度のパネルが主流だったりする。


 恐らく、学習用端末では複数の情報(ウィンドウ)を同時に表示する機会が少ないことと、コストとの兼ね合いでHD解像度のパネルを採用するモデルが多いのだろう。とはいえ、下手なスマートフォンよりも低い解像度はどうなのかとも思ってしまう。


 解像度は、もう少しどうにかならなかったのだろうか……? 文部科学省も、標準仕様書にディスプレイパネルのサイズだけでなく、解像度も盛り込んだ方が良かったのかもしれない。


ポート類は標準的なChromebookと同じだが、気になる点も


 外部ポート類は、左側面にUSB 3.2 Gen 1 Standard-A端子とUSB 3.2 Gen 1 Type-C端子を、右側面にmicroSDメモリーカードリーダー、USB 3.2 Gen 1 Type-C端子、ヘッドセット端子(3.5mm)とUSB 3.2 Gen 1 Standard-A端子を備える。USB 3.2 Gen 1 Type-C端子はUSB PD(Power Delivery)による電源入力と、DisplayPort Alternate Modeによる映像出力にも対応する。


 ポートの構成は標準的なChromebookと同じで、特にUSB Type-C端子が両側にあるのは利便性の面で評価できる。一方で、映像出力がUSB Type-C端子しかないことも気になる。


 最近でこそ、学校における大型提示装置(電子黒板/大型ディスプレイ/プロジェクター)にもDisplayPort Alternate Mode対応のUSB Type-C端子が普及し始めたが、HDMI入力端子や(通常の)DisplayPort端子しか備えないものも少なくない。学年によっては「学習用端末の映像を大型提示装置に映し出す」という使い方も想定される。


 「学校側で変換アダプターを用意すればいい」という意見もあるだろうが、せめてHDMI出力端子は用意しておいた方が良かったのではないかと思う。


●ベンチマークテストで実力をチェック!


 最後に、簡単ではあるがmouse Chromebook U1の実力をベンチマークテストを通してチェックしていこう。なお、いずれのテストも3回実施した結果(スコア)の平均値を掲載している(端数は小数第一位で四捨五入)。


Octane 2.0(JavaScriptパフォーマンステスト)


 まず、Googleがかつて開発していたJavaScriptのテスト「Octane 2.0」を実施した。総合スコアの平均は5万883ポイントだった。


 Chromebookが搭載するChromeOSは、作業の大半をWebブラウザ(Google Chrome)上で行う。そのことを考えると、十分なパフォーマンスは備えているといえる。


Geekbench 6.0


 ここからは、「Google Play」からダウンロードできるAndroid端末向けのベンチマークテストアプリを使ってテストを実施する。


 まず、クロスプラットフォームのベンチマークテストアプリ「Geekbench 6.0」を使ってCPUとGPUの性能をチェックした。スコアの平均値は以下の通りだ。


・CPUテスト(シングルコア):1046ポイント


・CPUテスト(マルチコア):2243ポイント


・GPUテスト:3041ポイント


 スコアだけを見ると、最新のハイエンドスマホにはかなわない。しかし、数年前のエントリーCPUを備えるChromebookと比べると、改善はしている。


Geekbench ML


 モノはついで、ということでGeekbench本体から独立して配信されている、TensorFlow LiteベースのAI(人工知能)処理テスト「Geekbench ML」も実施してみた。総合スコアの平均は以下の通りだ。


・CPU演算:187ポイント


・GPU演算:1万639ポイント


 Xe-LPアーキテクチャの内蔵GPUを備えていることもあり、GPUを使った処理パフォーマンスは比較的良い。オンデバイスでの画像処理を行う場合は、思った以上に快適な動作を期待できそうだ。


3DMark


 3Dグラフィックスのテストアプリ「3DMark」のうち、本機の内蔵GPUでも動作する「Wild Life」と「Sling Shot」も試してみよう。総合スコアの平均は以下の通りだ。


・Wild Life:2303ポイント


・Sling Shot:4818ポイント


 こちらも最近のハイエンドスマホと比べるとスコアこそ低いが、数年前のエントリーCPUを備えるChromebookよりは改善されている。3Dグラフィックスをバリバリ使うゲーム向けのChromebookではないので、これだけの性能が出れば十分だ。


●児童/生徒が「授業で快適に使える」を追求したモデル


 学習用ツールやデジタル教材の閲覧、ペンを使った書き込み、カメラを使った撮影など、最近の小学校や中学校で行われる授業では、学習用端末を“駆使”する機会も多い。それだけに、動作が軽快なChromeOSとはいえ、数年前のエントリーCPUを備えるChromebookでは動作的に厳しい面が出てきたことは事実である(だからこそ、Next GIGAでは一部のスペック要件が厳しくなっている)。


 その点、今回登場したmouse Chromebook U1は上記の作業を、キッチリと快適にこなせるスペックは備えている。ごく当たり前のことのように思えるが、「快適に学習できる」という事は、子どもたちの学びにとっては非常に重要なポイントだ。


 ICT方面に明るい家庭であれば、幼少期から子どもにPCを触らせることもあるかと思うが、大多数の子どもにとっては、GIGAスクール用の学習用端末が初めて触るPCとなる。その際、動作が重たくユーザー体験の低いPCを与えられたら、下手をするとPCに対する苦手意識を強く持ってしまう。本来であればPCを活用するスキルを潜在的に有していた子どもが、PCに触れずに成長してしまうと、若い芽を摘んでしまう事になってしまいかねない。


 少し大げさかもしれないが、初めて触るモノのユーザー体験(UX)は、思った以上に重要なポイントなのだ。


 とはいえ、予算には限りがあるため、「ICTに明るい大人」が考えるようなPCを学習用端末に導入するのは非常に困難だ。限られた予算で最高のパフォーンマンスを発揮できる“コスパ”を考えると、細かい気になる点はあるものの、今回のmouse Chromebook U1は良く練り込まれたている。


 個人ユーザーが本機を購入する場合、税込み7万円弱という価格は少し高く感じるかもしれない。しかし本機には3年間のセンドバック保証が標準で付帯している。追加コストなく長期間保証される点は、性能以上に大きなメリットが得られる。


 また、無償の電話サポートを24時間/365日受けられることも強みだ。トラブル発生時や利用方法が分からない際に、気軽に問い合わせできることは強みといえる。


 マウスコンピューターは、Chromebookでは“後発”の立場だ。しかし、付加価値で他メーカーとの差別化を実現している。日本のメーカーならではのユーザーに寄り添った仕様や、「Made in Japanの製品品質」によって実現される3年間の標準無償保証、利用者に寄り添った24時間365日対応の電話サポート窓口を追加費用なく利用できる。


 mouse Chromebook U1は、小学校や中学校に導入する学習用端末としてはもちろん、自宅での自学/自習用のノートPCとして有力な候補となりそうだ。


    ランキングIT・インターネット

    前日のランキングへ

    ニュース設定