パリ五輪の卓球で打倒・中国を目指す、日本女子の「最後の一手」を考える

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2024年06月26日 06:10  週プレNEWS

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パリ五輪の代表選考争いを独走した早田。団体戦メンバーで唯一のサウスポー、ダブルス巧者でもあるエースの起用法に注目だ

パリ五輪開幕まで約1ヵ月。今大会で卓球は大きな注目を集める競技のひとつだが、中でも女子チームは、今年2月に韓国・釜山で行なわれた「世界卓球2024」の団体戦で銀メダルを獲得。王者・中国をあと一歩のところまで追い詰めたことで、今夏のさらなる飛躍が期待されている。

【写真】急激に力を伸ばしてきた張本

早田ひな、平野美宇という2000年生まれのふたりと、6月に16歳になった張本美和で構成される日本女子は、「打倒・中国」を果たし、パリの地で頂点に立つことができるのか。

ダブルス1試合とシングルス4試合による団体戦で日本が金メダルを狙うために、まず把握しておきたいのがライバルの状況だ。

中国は女子卓球界の狎簑仆王畭恒莎と、東京五輪シングルスの金メダリストで、経験豊富な30歳のベテラン陳夢がメンバー入り。さらに団体戦の3人目として、陳夢と最後までシングルスの枠を争った王曼┐選ばれた。考えられる最強の布陣でパリ五輪に臨む。

その中で、東京五輪以降にエースとして君臨し、パリ五輪ではシングルスでも金メダル最有力候補に挙がる孫穎莎は、日本チームにとって最大の壁となる。小柄ながら強力なパワーを持ち、フォアハンドとバックハンドのドライブ、小技も隙がない。

また、劣勢をはね返す強靱なメンタルも持ち味で、相手にリードを許しても踏みとどまり、重要なポイントをモノにする。

日本勢では平野が、23年夏に行なわれた「WTTコンテンダーザグレブ」(クロアチア)で孫穎莎をフルゲームの末に破って優勝したが、それ以降に勝利した選手はいない。

今年6月の「WTTチャンピオンズ重慶」(中国)では、エースの早田が準々決勝に進出して孫穎莎と対戦。その時点で0勝14敗と未勝利だったものの、5月に中国が五輪メンバーを正式に発表してからの初対戦だったこともあり、待望の初勝利も期待された。

しかし、孫穎莎の前後左右への揺さぶりや、隙のないフォアドライブで序盤からゲームを支配される。2ゲームを奪われて迎えた第3ゲームは、サービスの変化で打開を図るなどして9−9に持ち込んだが......最後は押し切られて15連敗となった。

早田の持ち味である試合中の調整力で持ち直した印象はあったものの、戦績が物語るように、局面で上回る時間はあっても総合的には一歩及ばない印象はぬぐえない。むしろ、昨年のザグレブで勝利した平野がまたハイパフォーマンスを見せられれば......という可能性のほうが高いかもしれない。

孫穎莎に勝つすべがなかなか見いだせない中で、金メダル奪取を狙う上でカギを握るのは陳夢との対戦だろう。常に世界ランキング上位の強敵なのは変わらないが、団体戦メンバーの王曼┐眛本選手に対して無類の強さを誇ることを考えると、この東京五輪金メダリストから崩していきたいところだ。

陳夢と日本勢の対戦では、2月の世界卓球の決勝で、2番手で相対した早田が勝利。張本も、優勝がかかった5番手で互角のラリーを演じるなど序盤を支配した。

張本はさらに、6月のWTTチャンピオンズ重慶の準々決勝でも陳夢と対戦。そこでも敗れはしたものの、第2、第3ゲームではデュースの攻防を演じ、第3ゲームのデュースは取り切った。

試合後に張本は、「4回目の対戦で今日が一番良かった」とコメントし、「準備していたものや戦術も出し切った」と納得の表情を見せた。

ここ1年余りで中国トップ選手との戦いを重ね、世界ランキングもトップ10入りした彼女が、ラリー勝負や間合いなど、戦いに順応しつつあるのはパリ五輪へ向けて明るい兆しといえるだろう。

一方で、中国と日本のダブルスの完成度には大きな開きがある印象だ。中国は東京五輪でも起用された陳夢・王曼┐離撻△国際大会に出場することが多く、6月11日付の世界ランキングではシン・ユビン、チョン・ジヒ(韓国)のペアを上回って1位。女子ダブルスでは中国、韓国ペアがトップ争いを繰り広げており、日本チームは対抗できていない。

日本は今年に入ってから、平野・張本ペア(世界ランキング55位)が国際大会を戦っており、2月にパリ五輪メンバーが正式に発表されてからは「シンガポールスマッシュ」や「サウジスマッシュ」といった大会に参戦した。

だが、シンガポールではインドペアの不規則な回転に苦戦を強いられて初戦敗退。さらにサウジアラビアでは、オーストラリアと香港の選手による国際ペアにまたも1回戦で敗れた。

本大会までにどれだけ連携を深められるかが注目されるが、戦略面では別の選択肢も考えられるかもしれない。

女子メンバーの中で唯一サウスポーの早田は、伊藤美誠と組んで全日本選手権5連覇の実績を持つなど、ダブルスが得意な選手。どちらも右利きの中国ペアに対して、左・右のペアが組めるのは日本のアドバンテージでもある。

ただ、個人として世界トップ5入りした早田は、団体戦のシングルス4試合のうち、2試合を担うことが濃厚。さらに、男子の張本智和と組んで混合ダブルスにも出場するため、団体戦でのダブルス起用は準備面で負担がかかる懸念がある。

しかし平野と張本が、シングルスで孫穎莎も含めた中国勢といい戦いができるようになってきていること、早田がふたりとペアを組んだ経験もあることを考えると、最後の一手として「ダブルス早田」という選択をする可能性もありうるかもしれない。

早田、平野、張本と平均年齢が若く、かつ総合力の高いチームで悲願の五輪金メダルが期待される中、シングルス、ダブルス共に乗り越えなくてはいけない中国との差をどのように埋めていくのか。決戦のときが迫り来る。

取材・文/井本佳孝 写真/アフロ

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