「家猫」は脅威の“侵略動物”か さまざまな生物を絶滅に追い込んだ? 「2000種以上を食べてきた」

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2024年06月26日 08:40  ITmedia NEWS

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家猫は脅威の“侵略動物”?

 米オーバーン大学などに所属する国際的な研究チームが発表した論文「A global synthesis and assessment of free-ranging domestic cat diet」は、家猫(Felis catus)が生態系に及ぼす影響について大規模に調査した研究報告である。


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 家猫は9000年以上前に家畜化され、現在では南極大陸を除く全ての大陸と数百の島々に広く分布している。この広範な分布により、家猫は多くの生態系に悪影響を与えており、新しい病気の伝ぱ、在来種との競合、遺伝的汚染、捕食による絶滅などの問題を引き起こしている。これらの理由から、自由に行動する猫は世界で最も問題のある侵略的外来種の一つとされている。


 この研究では、533の研究文献を参考に、猫の食性データベースを構築し、猫が消費する動物の分類群、餌のサイズに基づく選択性の有無、島と大陸での食性の違いなどを明らかにすることを目的としている。


 調査結果によると、家猫は2084種の生物を捕食していることを確認した。このリストには、鳥類が981種(47.07%)を占め、爬虫類が463種(22.22%)、哺乳類が431種(20.68%)、昆虫が119種(5.71%)、両生類が57種(2.74%)が続いた。その他には、条鰭綱、クモ綱、腹足綱、軟甲綱などが含まれ、種全体の1.58%となった。


 さらに注目すべきは、捕食される生物のうち347種(16.65%)がIUCNレッドリストで準絶滅危惧、絶滅危惧、絶滅種に分類されていることだ。このことは、家猫が生物多様性の保全に対して無視できない脅威となっていることを示唆している。


 地域別に見ると、大陸よりも島で絶滅危惧種の割合が高く、島では25.22%、大陸では8.62%となっている。この差は、島の生態系が外来種の侵入に対してより脆弱であることを反映していると考えられる。オーストラリアと北米で多くの研究が行われた一方で、アフリカ、アジア、南米などの地域では研究が比較的少ないことを指摘している。


 家猫の捕食の幅広さも驚くべきものがある。0.47gの小型トカゲから760kgもの牛まで、実に多様な大きさの動物を捕食対象としている。ただし、大型動物の場合は主に幼体を捕食したり、死骸を食べたりしている可能性が高いと研究者たちは推測している。


 Source and Image Credits: Lepczyk, C.A., Fantle-Lepczyk, J.E., Dunham, K.D. et al. A global synthesis and assessment of free-ranging domestic cat diet. Nat Commun 14, 7809(2023). https://doi.org/10.1038/s41467-023-42766-6


 ※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2


このニュースに関するつぶやき

  • 猫は可愛いからいいのよ。そんな難癖つけないでよ。
    • イイネ!12
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