“アリエル”になった男性会社員のその後は? 会社にもメイク&可愛いファッションで出社「男性のまま可愛くなるということに、偏見がなくなれば」

6

2024年06月26日 11:40  ORICON NEWS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ORICON NEWS

プリンセスになったにこさん。(画像提供@nicodisney_)
 昨年、ディズニー・ハロウィーンでアリエルの仮装をしている1枚の写真が話題になった。仮装をしていたのは、365日“可愛いメイクとファッション”で生活している、24歳の会社員男性の七海にこさんだ。にこさんは、「一歩踏み出せない人たちを勇気づけたい」という思いで、なりたい姿での自身の写真を日々投稿している。今では、ミニスカートだって履けちゃうにこさん。でも、女性になりたいわけではない。「ただ可愛くなりたいだけの平凡な男子」だからこそ、発信できる“自分らしい生き方”とは。

【ビフォーアフター】メイクと服装だけでここまで…! “平凡な男子”の七海にこさんの現在の姿

七海にこさんが注目を集めたのは、『リトル・マーメイド』の主人公・人魚のアリエルに仮装した写真を投稿したSNS。それは、幼少期からアリエルに憧れていたにこさんにとって、まさに夢が叶った瞬間の一枚だった。『かわい過ぎる』『キレイなアリエルだと思ったら男性の方だったんですね!』など感嘆のコメントも多数投稿された。しかし、今までの道のりは決して楽ではなかった。『男の子だって可愛くなりたい!』その思いを実現させたにこさんに、24年間の“苦闘の歴史“を聞いた。

――アリエルの写真はニュースにも取り上げられ、話題になりました。周りのご友人やご家族の反応はいかがでしたか。

「『キラキラしてるね』『友だち、家族に自慢しちゃった!』と言ってくれる友人もいて本当に嬉しい反応ばかりでした。『アリエル仮装のニュースって何?』と思われる人も多いと思いますが、“良いニュース”として扱ってもらえたのは、とても嬉しかったです」

――とても美しいですが、ふだんは会社員をされているとのこと。出社するときも女装とメイク姿なのですか?

「クローゼットには今、メンズの服が男装用に買った2着しかありませんからね(笑)。僕の勤めている会社は理解があって、個人の志向に配慮し尊重してくださるので、普通にメイクして可愛いファッションで出社しています。トイレも多目的トイレがあるので、そちらを使わせていただいています」

――日本社会もだいぶ変わったように感じますが、にこさんにとって今は生きやすい世の中になっていますか?

「多様性への関心が高くなり、確実にいい方向に向かってきていて、その点はすごく嬉しく思っています。でも、本当に生きやすい世の中にはまだまだ遠いかなというのが正直な気持ちです。SNSには理解不足からくる中傷や偏見が飛び交っていますが、若い人はすんなり受け入れてくれる人も多いです。一方で、昔の日本社会を見て来た年齢層には受け入れられない人も多い。まだまだ社会全体の意識が統一されていないような感じがしています」

――性的マイノリティを表すLGBTQに、近年さらに「+」が付いたように、性は実に多様ですからね。

「一人ひとりの中に男らしさ、女らしさ、どちらにも属さないような気持ちなどいろいろなバランスがあると思うんです。僕自身は、可愛くなりたい平凡な男の子。恋愛対象も女性ですし、男性のまま可愛くなるということに、偏見がない世の中になればいいなと思っています」

――SNSで発信するのは、その思いからなのですね。

「もうひとつの思いもあります。今LGBTQの方々はじめ、個性的な方がテレビなどを通じてたくさん表舞台に出てきています。そういった方々を見て勇気づけられている人も大勢いると思います。ですが、僕は小さい頃、逆に自分の性格や考え方ではそんなふうに生きられないと感じてしまって、あまり勇気に繋がりませんでした。

なのでSNSでは僕と同じように、一歩を踏み出せていなかった人たちを勇気づけられるようなことができたらと思っています。SNSを通じて、普通の人が当たり前に自分らしく生きる姿を届けることで、また違った角度から理解を深める機会を作れたらと思っています」

――あらためて教えてください。幼少期の頃から「アリエルになりたい」と思っていたそうですが、アリエルを好きになったきっかけは?

「もともとファンタジーが好きで、魔法とかにワクワクするような子だったんです。中でもアリエルは外の世界を夢見て自分なりに頑張っている姿にすごく感銘を受けて、『アリエルみたいに美しくも可愛くなりたい!』と4〜5歳くらいから思うようになりました」

――男の子である自分が、プリンセスになりたいと思うことについて、ギャップを感じませんでしたか?

「それはもちろんありました。僕の周りは、男の子は男の子と、女の子は女の子と遊ぶみたいな区別がはっきりしていたし、男の子は男らしくしていなければならないという偏見もありましたから。小さい頃って周りの情報がすべてですから。『可愛いものが大好きで、可愛くなりたいと思うのは恥ずかしいことなんだ』とインプットされてしまって、その気持ちを隠して、必死に男らしくしなきゃ、バレないように振舞わなきゃって考えていました」

――自分の考えとは真逆な行動をとっていたんですね。

「そうですね。可愛いものが好きなので、たぶん女の子といたほうが楽だったと思うんです。だけど、あえてそうしないようにしていました。男社会特有のノリも嫌でしたが、必死に合わせようと頑張っていました。人目を気にしがちで、どう見られているかということにすごく敏感だったので、周りに気づかれないように考えすぎて、常に気を張っているみたいなところがありました」

――「可愛くなりたいだけの平凡な男子」と公表しているように、にこさんは、体の性別と心の性別が一致しない性同一性障害ではなく、男性である自分は受け入れていらっしゃるんですよね。

「はい。自分は女の子になりたいのかな?と考えた時期がありましたけど、結果、僕は自分の性別が男性であることは受け入れられているし、そのままの状態で自分らしく可愛くなりたいんだということに気づいたんです。もちろん、子どもの頃はそんな分析はできませんでした。今のようにメイクをして、女性の服を着て過ごせる日がくるなんて、夢にも思っていませんでしたから。諦めというか、ずっと『来世は女の子に生まれて可愛くなりたい』と思っていました。今振り返ると、“色のない世界”を生きているみたいでしたね」

――そんな自分を解放できたのは、20歳のときだったそうですね。

「いろいろな経験の蓄積だったと思います。そのひとつには留学がありました。大学時代にフィリピンとアメリカに長期滞在したのですが、その時に様々な人たちの文化や考え方に触れて、『周りに合わせるのではなく、自分らしくしていいんだ』と思うようになったんです。ただ頭ではわかっても、20年近く人目を気にして自分を隠してきた僕の心はそう簡単には変わりませんでした」

――自分を少しずつ許せるようになる後押しをしてくれたのが、ディズニーだったとか。

「ディズニーパークって自分を思い切り出せる場所。人目を気にして生きてきた僕にとって、可愛いファッションにチャレンジできる場所でした。そんな僕に、キャストさんたちはとても温かい声をかけてくれました。また、もともとSNSにディズニーにまつわるネタを投稿していたんですけど、たまにディズニーコーデを載せていたら、応援してくれる人がすごく増えて。その声が本当に嬉しくて、勇気と指針につながって、少しずつ自己表現できるようになった気がします」

――可愛くなりたいならメイクだけでもいいのかなと思うのですが、洋服まで女性ものを着るのはなぜですか?

「女の子たちが可愛くなりたいと思うときに、両方を気にするのと同じです。僕の中ではメイクとファッションは同列です。自分を解放できるようになったとき、どちらが先ということはなく、両方が同じくらいのハードルでした。例えば最初からスカート履くのは勇気がいるので、ちょっとスカートっぽく見えるパンツから入って、同時にメイクも薄めのナチュラルメイクから始めてという感じでした」

――変わり始めたにこさんを見て、周りの反応はいかがでしたか?

「とにかく20歳まではまったく気づかれないようにしていたので、みんなビックリですよね。一方で、無反応も多かったです。理解を示してくれたのは、限られた人のみでした。その全員が女の子で、もともと理解がありそうな仲の良かった子たちでした」

――人目は気にならなかったですか?

「最初の頃は、めっちゃ気にしていました。とにかく目立たないように、女の子に溶け込みたくて、マスクは外せないし、声を高めにしていたときもありました。あと身長が高くて、ちょっと浮いてしまうので、縮こまってたりもしていました」

――そんな時代を経て、今があるんですね。現在は、ファッションモデルにも挑戦されているようですが、今後の夢や目標を教えてください。

「今年のディズニー・ハロウィンでは、プリンスとプリンセスの両方をやってみようかなと考えています。両方のいいところ取りをしちゃうのも、僕にしか届けられないメッセージかなと思うし、そこを着眼点に興味を持ってくださる方もいらっしゃるかなと思うので。あと、僕の思いを若い子たちに届けるために、TikTokも頑張ろうかなと考えています。動画は苦手ですけど、若いうちの価値観の形成ってすごく大事だと自分自身の経験から強く思っています。人は違っていて当たり前で、そのうえでどう自分らしく生きるか、どう思いやりを持って生きていくべきか、そういう意識を若い子たちに広めていきたいです。そして僕自身は、自分の思う『可愛い』をいっぱい追求して試して楽しみたいと思っています」

(文:河上いつ子)

このニュースに関するつぶやき

  • アナ雪のエルサになりたい男子も少なからずいるよね。変なヤツラに絡まれないことを祈ります。一定数、ヤバいヤツラいるから。��
    • イイネ!2
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(2件)

前日のランキングへ

ニュース設定