日本企業のDXを加速 米通信ベライゾン・ビジネスCEOに聞く5G世界戦略

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2024年06月27日 07:51  ITmedia ビジネスオンライン

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ベライゾン・ビジネスグループのカイル・マレイディーCEO(撮影:河嶌太郎)

 米国3大キャリアの通信企業、ベライゾンが日本市場でのビジネスに注力している。3月には都内でグローバル戦略説明会を開き、「プライベート5G」の日本でのサービス展開を表明した。


【画像を見る】ベライゾンジャパンの事業戦略


 プライベート5Gとは、企業などの敷地内で5G通信回線を独自に引き込んで、利用者が5Gを専用ネットワークとして使えるサービスのことだ。これによって、5Gが持つ光回線以上の通信速度を使ったビジネスが可能になる。国内企業では2020年12月にKDDIが同種のサービスを始めたほか、ソフトバンクも22年度にサービスを開始した。


 ここに参入してきたのが、ベライゾンだ。ベライゾンはこのプライベート5Gのような仕組みを、例えばアメリカンフットボールのコーチ間の通信回線として試験的にサービス提供している。ベライゾンはKDDIとの業務提携も発表していて、プライベート5G分野だけでなく、ソニー・ホンダモビリティが研究開発する電気自動車「AFEELA(アフィーラ)」に搭載される通信機器のプロバイダとしても協業を進める。


 なぜ、ベライゾンは日本市場に注目しているのか。法人向け部門ベライゾン・ビジネスグループのカイル・マレイディーCEOに聞いた。


●日本企業のDXを加速 ターゲットはセキュリティ


――今後ベライゾン・ビジネスは日本で、どうビジネスを展開していきますか。


 主な戦略としては、技術開発に大きな投資をしていきます。この主な舞台は米国になりますが、米国で巨額の技術投資をして、そこから世界の他地域に展開し、その技術を広げていく形になります。


 弊社の顧客は、米国に限られるわけではありません。例えば本社が米国にあったとしても、オペレーション自体はさまざまな国で実施している場合もあります。逆に本社が日本にあって、米国でオペレーションしているケースもありますので、さまざまなユーザーがいます。


 そういったユーザーに対して、まずは有線による専用線のサービスを提供しています。こうした顧客を中心に、近年アプリケーションやサイバーセキュリティ関係のサービスが増えてきています。


――日本市場にはどんなビジネスチャンスがあると考えていますか。


 まずセキュリティ領域ですね。アジア太平洋地域では、弊社のセキュリティ関連ビジネスの成長が20%増になっています。セキュリティビジネスそのものは“いたちごっこ”の関係もあり、どんどん高度で複雑なものになっています。こうした背景からセキュリティ関係の機能は、今後も引き続き拡張・拡大を続けていきます。


 こういった弊社のセキュリティ機能の拡大は、日本のみならず、アジア全体の利用者が非常に気に入っていて、高く評価されている部分だと思います。今後も引き続きワイヤーライン、有線通信の部分は良い価格で提供していきます。


 加えて、このアジア太平洋地域の顧客の成功に向けた、他の支援方法や支援できる領域も模索していきます。今回私が日本を訪れた目的は、そのヒアリングのためでもあります。


――5Gの可能性をどう見ていますか。どのようにビジネスにしていきますか。


 米国で5Gが最初に登場した時、大きな期待感があったと思います。私たちはその分野で非常に上手に展開してきたと考えています。米国では、光ファイバーなど有線による通信ネットワークの代わりに、企業や家庭に無線通信機器を提供する固定無線通信に注目が集まっています。この固定無線通信サービスのシェアで、われわれは米国でほとんど全てを獲得しています。


 この固定無線通信では5Gの技術も使われているわけですが、今後はこの分野で5Gを中心に競争がより一層、激しくなると思います。そうなるとユーザーは、より良い価格帯でサービスを利用できるようになるでしょう。そういった状況がいま生み出されてきているということ、それにわれわれが寄与できていることを、とても誇りに思っています。


 もう一つ見なければならないのが、旧来のLTE4Gの分野です。最初4Gが登場した際には、単に3Gが早くなったものという見方が大きい技術だったかと思います。多くの人たちはスマートフォンの登場によってLTEが広がったと考えていますが、実際にはそうではありません。LTEが完全に普及するまでには、他のさまざまな技術が中間にあったわけです。


――それはどういった技術なのでしょうか。


 例えばスマートグラスといった小型の産業用デバイスですね。他には、より速い処理能力を持ったプロセッサやCPU、バッテリーやソフトなどが挙げられます。そういったものがあって、初めてLTEが大きく普及することになったわけです。同じような展開が5Gでも見られると思います。


 ただ4Gの時との違いは、そこにAIが使われるということです。そしてAIの演算装置であるGPUチップも変わっていきます。他には現在、サーバだけでなく末端のスマホなどのモバイルデバイス、将来的に自動車などが一緒になって情報を処理するモバイルエッジコンピューティング(MEC)にも注目が集まっています。このMECを実現するためには、5Gが必要不可欠です。5Gのネットワーク自体の拡張も、今後ベライゾングループで進めていきます。


●ソニー・ホンダ「AFEELA」での協業


――ソニー・ホンダモビリティの「AFEELA」での協業では、どんな期待をしていますか?


 次世代の自動車では優れた接続性が必要ということで、弊社を選んでくださったと思っています。私も、ソニー・ホンダさんがどういった自動車を出してくるのか、非常に楽しみです。


 自動車業界の結び付きで言うと、もともと弊社も、ゼネラル・モーターズ社の車載通信サービス「OnStar(オンスター)」で協業していた歴史があります。今回は、それとは別次元の未来的な車載機能が、現実のものとして提供されると聞いています。実際に現在、彼らがどんな研究開発に取り組んでいるのかは分かりませんが、どんな製品を出してくるのか楽しみにしています。


――多くの社員をマネジメントする経営者として、大事にしている考え方はありますか。


 私はCEOになる前は、技術担当のCTOをやっていました。私はとにかく好奇心あふれる人たちが好きです。学びたいという心を持った人たちも大好きです。自分がやっている仕事に情熱を持ち、顧客を第一に考えることを私たちは非常に大切だと思っています。


 ベライゾンは人々に使ってもらう技術を開発している会社です。自分たちが開発した技術を顧客に提供し、社会全体を豊かにしていく。そのための好奇心や情熱を持った人材を、私はとても重要だと思っています。


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