夏祭り先陣、準備着々=能登町の豪快「あばれ祭」―地域再生に思い込め

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2024年06月28日 14:01  時事通信社

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時事通信社

あばれ祭で壊すみこしを作る大工の舩本憲一さん=6月22日、石川県能登町宇出津
 石川県能登町宇出津(うしつ)地区では、7月5〜6日にある恒例の「あばれ祭」に向けた準備が大詰めを迎える。ただ、能登半島地震で住宅が損壊し、祭りに参加するため帰省する家族を受け入れられずに不参加を決めた町内会もある。それでも住民は「祭りは人生の中心。地域再生につなげたい」と意気込む。

 能登半島の各地では毎年夏、住民が巨大な灯籠「キリコ」を担いで練り歩くキリコ祭りが行われる。その先陣を切るのが「あばれ祭」で、高さ約7メートルのキリコ40基余りが巨大なたいまつの火の粉を浴びて乱舞する。毎年、地区内の二つの神社の氏子がそれぞれ作るみこし2基を川に投げ入れ、最後は地面にたたき付けて壊す激しさでも有名だ。

 しかし、現在の宇出津地区は地盤沈下で潮位によっては浸水するほか、電線も低い位置に下がったまま。道沿いの民家も多数壊れており、練り歩くには危険な状態の場所も多い。例年はキリコの置き場所になる港はひび割れて立ち入り禁止となっており、順路や会場の変更を迫られた。

 仮設住宅住まいで、地区外から担ぎ手として来る家族や親戚を受け入れられない家庭も多く、住民がもともと少ない4町内会が参加を取りやめた。例年40基余り出るキリコは33基に減る見込みで、会場までのシャトルバスも今年は運行せず、外部への宣伝も控えた。

 「それでも、どうしてもやりたかった」と話すのは、祭りの実行委員長を務める新谷俊英さん(70)。「祭りは宇出津の人々の人生の中心。正月や盆より親戚が集まる」とし、「やめることは簡単だが、地域を活気づけたい」と意気込む。

 宇出津地区の大工舩本憲一さん(78)も、祭りを心待ちにする一人だ。みこし作りを担当する舩本さんは6月中旬、六角形のお堂や湾曲した屋根、彫刻など細部まで入念に製作した。地震で壊れた家の修理を中断しての作業だが、多くの人から「みこし作りを優先して」と言われるという。

 工房は津波で1メートル近く浸水。手になじんだ工具や機械が壊れたが、他の工務店に借りるなどした。「みこしを美しく壊してもらうために前より見栄え良く作る。壊して終わりでなく、そこから再生する。地震も祭りも同じ」。そう話すと、担ぎ棒にする材木にかんなをかけた。 
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