「本名や住所バラされ人生ズタズタに」風俗業界の女性たち苦しめるネット掲示板の「さらし行為」

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2024年06月29日 08:20  弁護士ドットコム

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非日常の空間が提供される性風俗店。そこで働く女性従業員は、ネット掲示板やSNSにプライベートの情報や本名などをさらされるリスクがある。


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ある女性は、客によってネット掲示板に個人情報をさらされただけでなく、自宅や親族の家に写真を送りつけられて引越しを余儀なくされ、仕事も失うなど、精神的・経済的に大きな被害を受けた。



十数年前の出来事は、いまだに彼女の心に暗い影を落としているという。このような「さらし被害」にあったとき、どのような対応ができるのだろうか。



●プレイ中に撮影した写真を家に送りつける卑劣さ

弁護士ドットコムニュースに情報を寄せたのは、会社員の篠崎成美さん(50代・仮名)。



十数年前、風俗店で働いていたころ、ネット掲示板「爆サイ」に源氏名(げんじな)とともに本名や住所が書き込まれているのを見つけた。



情報はまたたく間に他の客にも伝わり、見知らぬ人たちが篠崎さんの自宅を訪れるようになった。被害はそれにとどまらず、接客中にオプションで撮影された写真まで、自宅や離婚した元夫宅に送付されてしまったという。



「ストーカー気質の元夫とは離婚後も何回も引越しをしてやっと離れることができたのに、ストーカーが再発するようになり、家族の身の危険を考えて、再度引越しました。写真を見てしまった子どもの心も傷つけてしまいました」



店がサイトの管理者に要請して、投稿はすぐに削除されたが、それでもこのような実生活への影響が生じてしまった。



元夫から養育費を受け取れなかった篠崎さんは、仕事にも行けなくなり、生活にも苦しむように。



"犯人"の目星はすぐについた。写真は客の男性がオプションで撮影したものだったからだ。この男性は、篠崎さんを店外でつけ回すなどの問題行動があり、店を通じて「NG客」とされて反発していた。書き込みが始まったのはその直後だったという。



警察に被害を相談し続けた篠崎さんだったが、なかなか取り合ってもらえなかった。1カ月後に世間で話題になった「ストーカー殺人事件」が発生して、ようやく警察は男性に警告を与えた。



「封筒や印刷物に男性の指紋が付いていたことから、男性は自分の犯行を認めました」



これまでの取材でも、ネット掲示板に個人情報をさらされたり、誹謗中傷を受けた風俗業界の女性従業員たちが相手を特定するために裁判手続きを進めている。



「私と家族には精神的、金銭的にひどい傷をつけたのに、彼は自分の家庭にも知られないままです。今でも許すことはできません。10年以上たった今でも、自宅には複数の防犯カメラをつけたり、家の鍵を定期的に交換しないと不安になります」



●削除や本人特定の手続き、捜査機関も利用して被害を食い止める

風俗・性風俗業界で働く人たちが個人情報をさらされた場合、どのような対応ができるだろうか。風俗業界のネットトラブルにくわしい中嶋俊明弁護士に聞いた。



——風俗・性風俗業界の女性が個人情報をさらされると、どんな影響が生じますか。どのような対応を取ればよいでしょうか



ほとんどの女性が家族や周囲に風俗・性風俗業界で働いていることを隠しています。ネットやSNSに個人情報をさらされると、周囲との人間関係が崩れ、家族からは働いていたこと自体を責められ、職場もやめざるを得なくなるなど、実生活がほとんど不可能になるほど追い込まれることも珍しくはありません。私の依頼者にも、さらし被害を原因として自殺未遂を起こした方もいらっしゃいます。



X、インスタグラムなどのSNSや、爆サイ、5ちゃんねる、ホスラブなどのネット掲示板であれば、運営の削除フォームから要請できますが、削除には時間がかかります。同じような投稿が繰り返されるとキリがありません。



こうした個人情報のさらし行為は、その内容が個人の名誉を毀損したり、侮辱するようなものであれば、名誉毀損罪や侮辱罪に該当しますし、脅すような内容であれば脅迫罪にも該当します。また、いわゆるネットストーカーとしてストーカー規制法違反にも問われることもある犯罪行為です。



警察の態度は以前よりいくらかマシにはなったとはいえ、被害者本人が被害届を出すだけではなかなか動いてくれないのが実情です。弁護士とともに刑事告訴をして、捜査機関を通じてこれらの行為をやめさせることも有効です。



とはいえ、警察も必ず迅速に動いてくれるわけではなく、さらし行為が続いてしまうこともあります。裁判手続きによる投稿の削除とともに、発信者情報開示の裁判手続きによって匿名の投稿者を特定して、慰謝料の支払いや投稿させないことの約束を求めていきます。



なかには「無敵の人」と呼ばれ、法的責任を追及されることを恐れない人もいます。社会生活に馴染めない引きこもりの人や風俗・性風俗で働く同業者などが投稿することもあります。



ただ、投稿者の多くは、一般企業に勤めているような社会的立場の人であるため、自身の社会生活が脅かされるということに気づかせることで、さらし行為をやめさせることができる場合もあります。



他人の人生を壊す権利など誰にもありません。救済のために、刑事手続き、民事手続きその他あらゆる法的手段があることを知ってほしいと思います。



●約20%の人がさらし被害の経験あり(アンケート結果)

インターネットやSNS上での「さらし行為」の実態について、弁護士ドットコムの一般会員を対象にアンケートを実施(実施期間:5月22日〜5月28日、有効回答数717人)。5.2%(37人)が「さらし行為をした経験がある」と回答。19.1%(137人)が「さらし行為の被害にあったことがある」と回答した。



さらし行為の被害を受けた場所は、「X(旧ツイッター)」が最多の38.2%(回答数52)で、「5ちゃんねる」30.9%(回答数42)、「ブログ」14.7%(回答数20)、「爆サイ」11.8%(回答数16)が続いた。



アンケート結果は【こちらから】 




【取材協力弁護士】
中嶋 俊明(なかしま・としあき)弁護士
2008年弁護士登録。第二東京弁護士会所属。2014年から東京新宿法律事務所。インターネットのさまざまなトラブルのほか、家庭や相続などの個人間の問題、さらに太陽光発電などの再生可能エネルギー分野の法務も得意としている。
事務所名:弁護士法人東京新宿法律事務所
事務所URL:http://www.shinjuku-law.jp/


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  • そういうことをする奴には、御仕置きが必要ですね。ダメだよ、そういうことをしちゃ。
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