ドコモ前田新社長が語る「通信品質」の現状 自ら現場でモニタリング、d払いが使いにくい店舗にも出向く

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2024年07月09日 17:21  ITmedia Mobile

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インタビューに応じるNTTドコモの前田義晃社長

 ITmedia Mobileでは、2024年6月にNTTドコモの社長に就任した前田義晃氏にインタビューを実施。通信品質、金融サービス、料金プラン、端末ビジネスなど、幅広くお話をうかがった。今回はその中から、通信品質対策の現状についてのお話をお届けする。


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 ドコモは2023年頃から「つながりにくい」「通信速度が遅い」といった状況を改善すべく、300億円を先行投資して、全国2000箇所以上を「点」、鉄道動線を「線」としたエリア対策を強化してきた。2023年12月までに9割以上の対策を終了したが、まだ品質改善は継続している。前田氏は、6月18日の社長就任会見にて、ネットワーク調査機関のOpensignalの調査でドコモが1位になることを目標に掲げた。


 では、現状のドコモの通信品質について、前田氏はどのように感じ、どのような対策を講じているのか。


●通信品質改善の現場には頻繁に訪れている


―― 社長就任発表からこれまでの日々をどう過ごしてきましたか? 意気込みも含めて教えてください。


前田氏 就任以降、私なりの考え方をメディアの皆さんや社員にしっかり発信して、理解してもらえるように注力しています。会見で、「テクノロジーと人間力で明日の当たり前となる価値を生み出していく」とお話しさせていただきましたが、それはお客さま起点で考えることができてこその話だと思っています。


 社員一人一人が、お客さまの声をフラットに聞いた上で、当事者意識を強く持つ。さまざまなパートナーの方々と一緒に新しい価値を作っていくわけですから、自分たちのことだけを考えるのではなく、ちゃんとリスペクトを持って進めていく。こうした考え方を全体に共有できるよう、コミュニケーションをさせてもらっています。


 お客さんと向き合う上では「現場」が重要です。現場のみんなが、同じように思ってもらえるよう、これからももっと現場にも行きたいですし、コミュニケーションを取りたいと思っています。


―― 現場というのは、社内のことなのか、あるいはショップの窓口にも出向いているのでしょうか。


前田氏 現場といってもいろいろなところがありますよね。そういう意味ではここ(会議室)も現場だと思っていますし、象徴的によく行っているのは、通信品質をしっかり作っていくところの現場です。おっしゃった通りショップもそうですし、お客さんとの接点があるところはみんなそうですよね。コールセンターや、一緒にやっているパートナーのところも現場だと思っています。


 あらゆるところに現場があるので、その現場で相対してお客さんやパートナーと話をする中で、いかに自分でフラットに情報を聞いて判断して、自分たちで進めていくか。その動きが取れるか取れないかで大きく変わってくるだろうと思っています。


●山手線を1周して通信状況をモニタリング 「改善は進んでいる」


―― 通信品質を自ら見られているということですが、具体的にどのように見て回っているのでしょうか。また、改善の度合いについては、どのように感じていますか。


前田氏 昨年(2023年)度から、いろいろご不満の声はいただいて、そのための対策を取ってきたのは理解しています。その実態がどうなのかも含めて、先日、山手線を夕方5時30分から6時30分ぐらいまで1周したり、改善の進んでいるところや今も少し厳しいなというところも含めて見に行ったりしています。会見でも申し上げた通り、改善自体はしっかり進んでいると理解できました。


 先週(6月最終週)、4キャリアの通信状況を見られるモニターアプリを積んだ端末をずっと見たところ、爆速なところもありますが、ちょっとまだ厳しいなというところもあります。ただ、それは他のキャリアも同じような状況なので、総じて、当社だけがむちゃくちゃ悪いわけではないということは理解しました。


 ただ、もっと強化しないといけないですね。つながりにくいところがあることも事実だと思っていますので。5GのSub6帯をより密に打っていくことで、快適にお使いいただける環境を作りたいと思っています。渋谷なんかはだいぶいい感じになって、他キャリアさんと比べても、相当いい状態だと確認できました。


―― 2月の会見で、当初予告していた改善のうち、9割の対策が完了したとの説明がありましたが、そこの認識は変わらず、今は残り1割の対策を続けているということでしょうか。


前田氏 そのときに設定した課題に対して9割ということで、そこから「強化」と申し上げています。それこそ、Opensignalで年度末に1位を取ると申し上げていますので、残り10%をやるということではないですね。さらにもっとよくするための投資やオペレーションもやるということです。


―― 昨年、300億円の投資をするとおっしゃっていましたけど、さらに投資金額を上乗せして、より強化していくということでしょうか。


前田氏 そうですね。ご存じの通り、毎年、多くの額をネットワーク投資で使っているので、その中のお金の使い方自体を、今回の対策にシフトしていくということです。


●「ドコモは使いにくいので使わないでください」の張り紙


―― 2月の会見で、通信品質の実態を把握するために、d払いアプリから場所ごとの品質を把握するという説明がありましたが、こちらの進展はいかがでしょうか。


前田氏 d払いアプリのバーコードが表示されるまでの時間を見ています。それぞれの場所でどういう分布になっているのか、一定以上の割合が多いものは問題ありと見なし、そこの場所に行って、改善することを矢継ぎ早に行う。そういう使い方をしています。実際、やばそうだと思って(店舗に)行ってみたら、「ドコモは使いにくいので使わないでください」という張り紙がレジにされていました。


―― なんと。


前田氏 みたいなところもあるわけですよ。ただ、店内の話なので、電波状況はどこでもいいというわけにはいかない。われわれは、d払いはPayPayとも競争していますし、いかに彼らに対してわれわれが使いやすくできるかという努力をすごくしています。それこそ、1秒以内で起動してバーコードを出すことを、アプリ開発の連中は取り組んでいるわけです。


 ですが通信状況によってその品質が出せないということだと、もったいないじゃないですか。というか、セットで考えないといけないわけです。通信品質を見ている連中も、だいたいこれぐらい(起動時間が)掛かればいいということではなく、お客さんに対して価値提供が行われているのか、競争が行われているのか、そのための品質にアプリ自体はなっているのか。


 そういうことを理解してもらわないといけないので、両方がそれぞれのことをセットで考えた上でサービスを提供できるのが、一番いい状態だと考えると、お店の状態が悪いと出たら、矢継ぎ早に直していかないといけない。


 先日、やばかったというところは、チェーン店なんですけど、全体的に改善させていただく形にして、ご理解いただいて、使えるようにしました。


―― それは、地下などの電波状況が厳しいところで起きていたのでしょうか。


前田氏 それは起こり得ますので、起こっていることを認識しないといけません。そこをつぶさに見る。今でもアプリのデータもそうですし、リモートで基地局のデータを取っているのもそうですし、SNSでのお声も見ています。見たところに対してちゃんと確認に行くとか、そこへの対策を打ちに行くことを、きめ細かに、スピーディーにやることを徹底することが大事だと思います。


―― その対処は簡単なことではないと思います。例えば屋内では、プラチナバンドにトラフィックが集中して、それがパケ詰まりの原因の1つになっているとします。そうした原因をしっかり特定して、スピーディーに対応できるものなのでしょうか。


前田氏 対症療法的な対応、根本的な対処の両方をやらなければいけないということだと思います。ただ、根本的な対応はどうしても時間がかかるので、ちゃんとやることを見越しながら、現時点でできる細かな対応もするのが基本だと思っています。


―― d払いのデータの傾向として、都内や繁華街が多い、意外にも地方でも多いなど、何か気付きのようなものはありましたか?


前田氏 都内だからどうこうという話ではないですね。エリアとしてちょっと弱そうだなというところが、どこかという感じでもなくて。


―― d払いのデータを使った効果はあったということですよね。


前田氏 もちろんありました。これはやり続けるべきだと思っています。


―― d払い以外のアプリで通信品質の改善に役立てているものはありますか?


前田氏 「Lemino」にも入れて見ています。例えば電車に乗っているときにちゃんと動画を見られるのかなどのデータを取っています。先ほどもお伝えした通り、通信品質をモニタリングするアプリがあり、それでガーッと見たりもしているので、(Leminoは)補完的に使っている感じですね。


●現場と経営サイドで課題を共有することで改善につながる


―― 社長が自ら山手線に乗って、通信品質をモニタリングするというのは聞いたことがないのですが、前田さんの強い思いがあったのでしょうか?


前田氏 僕、こういうのが好きなんですよ(笑)。ダウンロードやアップロードするときのプログレスメーターをずっと見ていたいタイプなので。この前行ったときも、(同行した社員から)「社長がそんなのを見ていても、すごく退屈だし、面白くないでしょうから、動画がちゃんと見られるかどうか、見ていてください」と言われたので、「なめんなよ」と。「見たいんだよ」と(笑)。


 こうやって現場に行って自分も何が起きているのかを理解しないと、経営判断をする上で正しく理解できないですよね。ですから、現場と経営サイドで課題感を共有して考える。そのレベルで考えることを実現できれば、どんどん現場力も高まるし、お客さんにはご満足いただけると思っています。


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