『七夕の国』インタビュー 主演・細田佳央太、今後のビジョンは「飽きられずに30歳まで続けたい」 勝負の20代語る

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2024年07月13日 18:43  ねとらぼ

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南丸を演じる細田さん

 岩明均さんの“怪作”をディズニープラスで実写ドラマ化した『七夕の国』が、7月4日から配信が開始されました。


【動画】球体があらゆる物に穴を空ける超能力シーン


 原作は、「寄生獣」や「ヒストリエ」などでも知られる岩明さんが、1996年から1999年にかけて小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」で不定期連載した漫画「七夕の国」(小学館刊)。“あらゆる物に小さな穴を空ける”というくだらない超能力を持った平凡な大学生の南丸洋二(ナン丸)が、ある田舎町で代々受け継がれてきた不穏な風習と絡まり、次第にその謎が明かされていく物語です。


 4日から独占配信がスタートし、すでにネットでは作品の評価が寄せられる中、主演の細田佳央太さんはインタビューで「絶対大丈夫」と自信に満ちあふれた様子。多くの作品に出演する躍進を見せる中で、ディズニープラス独占配信での『七夕の国』に挑む思いや、自身の“将来”についても話を聞きました。


●超能力者、でも就職に追われる普通の大学生ナン丸はどうやって生まれたか


――原作は細田さんが生まれる前に刊行されていますが、作品はご存じでしたか?


細田佳央太(以下、細田) 出演が決まってから読みました。めちゃくちゃ面白かったですし、漫画が刊行されたのは30年近く前ですが、見づらさが一切なくて、これを現代風にアレンジしてもきっと刺さるんだろうなということを同時に感じました。そういう意味ではドラマ化されるのがすごく楽しみだなと思いました。


――そうした原作の魅力を実写ドラマでどう表現しようとしましたか?


細田 原作を何度も見返して、得られるヒントは全て吸収しようと思っていました。いただいた脚本は、瀧悠輔監督と山本晃久プロデューサーが、もともと原作の大ファンだったということもあり、原作をリスペクトしたものでした。原作への愛情と敬意、ファンが多いことなども分かった上でのことだと思うので、僕もこぼすところなく、ナン丸というキャラクターを作っていきました。


――ナン丸ののほほんとした、ある意味で“普通”なキャラクターは、どのようにつかんだのでしょうか?


細田 監督に「もっとお芝居を軽くしてほしい」と本読みで言われたんです。


――お芝居を軽くする?


細田 最初、“軽くする”ってどういうことだろう? と意味を理解できなかったんですが、監督と話してみたら、分かりやすいようなお芝居ではなく、もっとナチュラルなものがいい、それがナン丸につながると説明していただきました。


 もともと、のほほんとした役を演じることもあったので、イメージを把握するまでにそんなに時間はかからなかったのですが、たぶんおごりがあったんでしょうね。そこは監督に正していただきつつ、原作のナン丸を映像で作り上げていきました。


――なるほど。ナン丸が超能力を使う際に発する「ちょわぁぁぁぁ!」もそうしたベースの上作られたんですね。


細田 そうですね。当初は、もっと漫画っぽく、周りがびっくりするような高い変な声を出そうとイメージしていたんですが、監督からは、わざと面白くする必要はなくて、自分本来のフラットな声で、肺活量が持たなくなったら穴が空く一点集中のパワーを注ぐようなイメージでということは本読みでやってみて決まりました。撮影のインが第1話の初っぱなのシーンからだったのですが、10回以上やったので、声ガッスガスになっていました(笑)。


――作品でも象徴的な、球体を作るCGのシーンはどういったイメージで挑みましたか?


細田 ナン丸が正しい能力の使い方に目覚めてから、なじむまでは時間があったと思うので、その過程を自分なりに考えていました。撮影前には球体のビジュアルを映像で確認させてもらって、現場では発泡スチロールを球体に見立てて、テストではそれを演出部の方が動かして、本番では実際に「このくらいのスピードだったかな」とイメージしながら、撮影しました。


●ディズニープラスで映像化できたことの重要さ


――完成したものはご覧になりましたか?


細田 はい。めちゃくちゃ面白かったですし、普段作品が世に出るタイミングは緊張するんですが、『七夕の国』は絶対大丈夫だろうと勝手に感じています。というのも、これだけすてきなスタッフさんやキャストの方々とディズニープラスというプラットフォームで作れたということがすごく大きいです。


 原作ファンが多い作品ですので、ちゃんと時間をかけられる配信のコンテンツで作れたことは自信になりましたし、配信コンテンツという映像制作にこの年齢で携われたのはすごく大きな経験になったので、不安は一切ないです。


――やはり配信コンテンツに出演することは、地上波とは違った心持ちになるのでしょうか?


細田 お芝居へのスタンスは、どの媒体でも変わることはありません。ただ、配信はお金と時間のかけ方が違うので、この規模できるのは配信ならではだと思います。もちろん、どの媒体でも1つの作品を作るには、大勢の人やお金が関わってくるのですが、作品に必要なものをコストや余計なことなどを考えずに没頭できるという意味では、やはり強みですよね。


――視聴者目線だと、原作を実写化したときに、配信なら大丈夫だろうという謎の安心感もあります。


細田 配信ドラマも含め、日本のエンタメ界がさらに盛り上がっていくといいなと思っています。


――では、これから視聴者の方に届くのが楽しみですね。


細田 楽しみです、と言いつつ、すでに先行試写が始まっているので、この作品がどういう風に届くのか気になっています。ただ、不安や緊張というよりも楽しみという気持ちがすごく強いです。


●細田さんの将来は


――ナン丸は超能力者という選ばれた人間であるにもかかわらず、就職という現実的な問題を抱える普通の青年ですが、細田さんはご自身の将来について思い悩んでいた時期はありますか?


細田 現在も悩んでいます。やはり、このお仕事は確立されたものや、安定したものはないんです。


 作品一つ一つが次の自分の仕事につながるとは思いつつも、いつも「今の自分の実力で大丈夫か」とは常に感じています。


――たくさんの作品に出演が決まっている中でもやはり不安はぬぐえないと。


細田 そうですね、自分の評価は自分では分からないので、やはり不安はあります。具体的に今の自分の立ち位置が自分じゃ分からないですし、見る人によって変わってくるところだと思うので、常に不安感は抱えています。


――成長したなと感じた部分はありますか?


細田 根本のスタンスは変えないでいようとは『町田くんの世界』のときから思っていますし、吸収できるものはどんどん吸収するようにしています。


 成長できたな、というよりは「成長してなきゃ駄目」という考え方ですかね。『町田くんの世界』からこれだけたくさんの作品や人に関わらせていただいているのに、成長していないは論外なので、していないとダメという考え方の方が近いです。


――すごくストイックな考え方ですね。


細田 たぶん、育てていただいた土壌のおかげかなと思います。『町田くんの世界』を一緒に作った監督やスタッフさん、演者さんの皆さんが熱い方たちしかいなかったので、そこで培ったものは今も変わらず自分の中にあるんだろうなと思います。


●「30歳まではこの仕事ができたらいいな」


――今後のビジョンはありますか?


細田 漠然と、30歳まではこの仕事ができたらいいなと思ってます。飽きられずに。


――!? 30歳ってすぐですよ?


細田 そうですよね。30歳というのは、個人的に引いている1つのラインなのですが、人の出入りがすごく激しい世界だからこそ、20代は勝負だと思っています。


 よく言われるのは、25歳までに(役者として)振るいにかけられるということ。18歳から20代前半は特に出入りが激しい年齢層だと感じているので、そこに負けず、30歳までとりあえず続けられたらいいなと考えています。


 きっとこれからさらに生存競争みたいなものが激化していきますし、逆に30歳になってもお仕事を続けられるように、この20代はより多くの作品に携わって、どれくらい鍛えられるか考えていかなきゃいけないなと思います。


――では、作品のお話があれば何でも挑戦していくというスタイルなのでしょうか?


細田 来た仕事を全部受けるというより、自分がちゃんと求められて、自分にしかできないもので、かつ、その作品が世に出ることの意味を考えています。


 1つの作品を作ることは、すごく尊いことですし、大変な時間をかけるからこそ闇雲にやりたくないというか。だからこそ仕事選びは丁寧にしています。


――『七夕の国』はどういった理由で決めたのでしょうか?


細田 まず、ディズニープラスというプラットフォームで配信されるというところ。海外の肩にも見て頂けますし、時間をかけて作品作りが出来ると思ったので観た人に納得してもらえる作品ができるなと感じたからです。


 あとは、配信時期がすごくいいなと感じていて。七夕の時期に配信されることもそうですし、作品の重要な役割を担っている丸神の里の人たちの考え方って本当に日本人だなと思うんです。昔からあるものを大事にしてきた、ある意味、変化を恐れるような。それを日本人が作るからこその皮肉が世界的に見ても面白いんじゃないでしょうか。


 それはきっと日本の方にも届くと思うと、すごく面白いことになりそうだなと期待しています。


――現代だからこそ、映像化した意味があると。


細田 今、ハラスメント的なことや常識が大きく変わり始めているじゃないですか。その流れに順応できる人もいれば、取り残されてしまう人もいます。もともと日本人はこういう精神だったよね、という考え方が徐々に変わっていく瞬間も、少し引いてみると面白かったりするので、それが余計生々しく映るんじゃないかなと思っています。


――ありがとうございます。最後に、これから配信ご覧になる読者の方に向けてメッセージをお願いします。


細田 原作を読んでいただいてからでも、配信から見ていただいてもどちらでも楽しめると思います。ミステリー作品ではあるので、一度で理解できないという方も出てくると思うのですが、理解してもらうための努力は制作陣全員がしていますし、逆に原作で「?」を感じたことも映像だからこそ分かることって絶対あるので、点と点が線につながっていく様を、ナン丸と同じ立場で楽しんでいただけたらうれしいです。


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