夏のローカル開催で唯一のGIIとして定着している札幌記念だが、96年まではGIIIのハンデ戦だった。そんな今とは異なる趣があった91年、ある珍記録が達成された。主役は後にGIを2勝するメジロパーマー。86年以降で2頭目、そして現在でもわずか4頭しか達成していない、前走500万下(現・1勝クラス)からの参戦での古馬重賞制覇を果たしたのだ。
2歳時にコスモス賞を制していたメジロパーマーだが、その後は勝利どころか、連対すらなし。4歳を迎えた91年には天皇賞(春)に参戦したが13着に敗退。そして夏に500万下に降級して、十勝岳特別でようやく3勝目をゲット。勢いに乗って連闘、そして格上挑戦で挑んだのが札幌記念だった。
単勝8.5倍の4番人気で迎えた一戦、序盤は2番手を進んだメジロパーマーだが、2角で早くも先頭に立った。後に「大逃げ」が代名詞となったが、この日は後続を引き付けて運ぶ。勝負の直線、松永幹夫騎手のムチに応えて、二枚腰を繰り出す。ゴール前でモガミチャンピオンが猛追してきたが、半馬身抑えてフィニッシュ。「メジロ軍団」の同期であるマックイーン、ライアンの影に隠れていたパーマーが、初めてスポットライトを浴びた瞬間だった。
その後は一旦、障害に転向したものの、翌年には宝塚記念と有馬記念を制覇。90年代を代表する「逃亡者」として歴史に名を残した。
ちなみに前走で1勝クラスを走り、古馬重賞を制した馬は86年以降、87年の鳴尾記念のタマモクロス、91年の札幌記念のメジロパーマー、99年の函館記念のジョービッグバン、01年のカブトヤマ記念のタフネススターのわずか4頭しかいない。GI・2勝の功績はもちろんだが、珍記録の持ち主としても、メジロパーマーの名前を覚えておきたい。