高齢になった家族に、どうやって自動車免許を返納してもらうか…というのは多くの人が頭を悩ませるトピックです。悩んだ末に、免許返納を決意した祖母へのサプライズが話題に。孫であるハチ子さん(@manga.8ko)に取材しました。
ハチ子さんの実家は、生活に車が欠かせない「かなり田舎の方」。ハチ子さんの祖母をふくめ、運転する高齢者も多く、事故も多いとのこと。家族での話し合いが行われ、祖母が自らの意志で免許返納を70代後半のときに決断したのでした。
そんな祖母とともに、ハチ子さんの母は免許返納の前日にドライブに行き、自宅に着く直前で祖母に運転を交代。最後の運転を楽しむ祖母を待っていたのは、「GOAL」と書いたゴールテープを持って集まる家族! 「気持ちよく免許返納できるように」と考えたサプライズでした。
そして、これまで子どもや孫を乗せてお出かけしてくれたことへのお礼の気持ちを綴った感謝状を手渡したのでした。返納から数年経った今は、子、孫、ひ孫との車でのお出かけを楽しんでくれているそうです。
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このときのエピソードを、「免許返納についてはもちろんそれぞれ事情があるけれど 悲しい事故がなくなることをみんなが願っている」という思いとともに漫画で描いた作者・ハチ子さんに話を聞きました。
祖母が返納を決めた理由とは…
「祖母にとって一番のきっかけとなったのは高齢者が引き起こした悲惨な事故をニュースで見たことだと思います。『こんなことはあってはいけない』と何度も言っていました」とハチ子さん。
祖母の運転について話し合うため、「私、両親、私の弟妹、叔父など実家の近くに住んでいて祖母のサポートができるメンバー」が集結して、「なるべく祖母が不便を感じないように家族で助け合おうと約束しました」。
そして、祖母が返納を決めたときは、「車の運転ができないと出かけられない地域とあって、決断できたことはすごいと思いました。素晴らしい選択をした祖母にとって免許返納が悲しい思い出にならないように、そして今までの感謝を伝えたいと思いみんなでサプライズを企画しました」とハチ子さん。感謝状を贈るのは母、ゴールテープを用意するのはハチ子さんときょうだいが担当しました。
感謝状を受け取った祖母は、「驚いて照れくさそうにしていましたが、とても嬉しそうでした」と、愛車と写真を撮った時、すごくいい笑顔だったそう。運転とのお別れは返納の寂しさはあったかもしれないですが、家族のあたたかさやみんなで支えようという意気込みを感じられたひと時だったのではないでしょうか。
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今回の投稿には、「私の母も運転が大好きで海外でも臆することなく、走る人でしたが、75歳の時に自分からきっぱりと返納を決めてくれました」「我が家の父は、私と大喧嘩の末の返納でした」「うちの父は80を過ぎているのですが、運転が安定し過ぎていてまだまだこちらからは免許返納を言い出せないです…」など、自身の事情をコメントする人も。
さらに、「自分で運転して出掛けるって凄く自由。その自由と同じくらいの代替移動方があれば良いのにと思う。いちいち人に頭下げて乗せてもらうって、どんなに快く乗せてもらっていてもストレス」「お年寄りがもっと気軽にタクシーを使えるようになったらいいなぁ」など、気軽に移動できる手段があればという意見もありました。
65歳以上のドライバーは増加するものの…
近年、問題視されている高齢ドライバーによる事故。令和6年版交通安全白書によると、高齢の運転免許保有者が増加。70歳以上は、昭和58年は約54万人、令和5年は約1362万人と約25.4倍にも。運転免許保有者数の約16.6%が70歳以上となっています。
警察庁によると75歳以上による運転免許の申請取消(自主返納)は、平成31年の東池袋自動車暴走死傷事故が連日報道された後となる令和1年は、ここ10年で一番多く約35万人。それ以降は75歳以上の人口は増えているものの、申請取消は減少し、令和5年は約26万人となっています。
また平成25年と令和5年を比較すると、交通死亡事故件数は全ての年齢層で減少しており、65歳以上も同様ですが、交通死亡事故件数全体を占める割合を比較すると、65歳以上のドライバーが起こした交通死亡事故件数の割合は増加しています。
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心身の状態にもよりますが、免許返納のほかに、自治体から費用の一部を負担してもらい、衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い急発進等抑制装置を搭載したサポートカー(サポカー)に乗り換える、後付けのペダル踏み間違い急発進等抑制装置を設置するという方法でも事故を防止することができます。家族の住んでいる自治体でサポカーの補助が受けられないか、この機会に調べてみてはいかがでしょうか。
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免許の返納は、それまでのように自分で動けなくなることから「さびしい」いう意見も多いからこそ、ハチ子さん家族の思いがこもったサプライズはうれしいものだったのではないでしょうか。
ハチ子さんは夫とともに8カ月の娘の子育てに奮闘する日常がメインのエッセイ漫画を、ブログ「となりのハチ子家」とInstagramにて公開しています。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・谷町 邦子)