【連載】有村智恵のCHIE TALK(第3回・後編)
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JLPGAツアー通算14勝をあげ、米国ツアーに挑戦した経験もあるプロゴルファーの有村智恵の連載・第3回。2022年オフに、妊活に専念するためツアーの一時休養を発表し、現在は双子の男児の母として奮闘しながら、30歳以上(45歳未満)の女性プロゴルファーのためのツアー外競技「LADY GO CUP」を主宰するなど精力的な活動も続けている。
後編では、盟友・原江里菜選手とのエピソードや、結婚・出産という女性アスリートにとって重大なキャリア転換について、そして現在の家庭生活についても話を聞いた。
>>前編:有村智恵は「泣く泣くゴルフを始めた」「ある日突然おめかしさせられて、坂田塾の面接に連れて行かれた」を読む
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――原江里菜選手とは中学生の頃から知り合いだったんですか?
江里菜とは全国大会でもよく顔を合わせていて、たしか中学3年の初めに、中学生としては私と江里菜だけがナショナルチームに育成部員という形で参加したこともありました。
中学3年生の夏の全国大会の時には、みんなはもう進学する高校が決まっていたのですが、江里菜だけがまだ(進路を)悩んでいたんです。それで12月ぐらいに、東北高校に一緒に進学する予定だった子が急遽違う高校に進学することになって。私ひとりで県外から行くのはいやだから、そういえば江里菜の進学先はまだ決まってなかったなと思って、江里菜に電話して「一緒に東北高校に行かない?」って誘ったのを覚えています(笑)。
当時は江里菜とすごく仲がよかったわけじゃないんですけど、顔を合わせる機会は多かったですし、まだ高校を悩んでいたみたいだったので。その時は、まさか今の関係性になるとは思っていなかったですね。そういう意味では、あの電話が運命でしたね(笑)。
――プロゴルファーになると決めたのはいつ頃でしょう?
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もともとプロゴルファーになるんだろうな、くらいには考えていたんですけど、高校2年生頃から、親から「プロ以外の道はないわよ。早く稼いで、早く私たちをラクにしてちょうだい」くらいの感じで言われていて。なので、プロ以外の選択肢がなかったですね(笑)。
【SNSには怖いところもいいところもたくさんある】
――ツアー転戦が続くなか、気を付けていたことやルーティンなどがあれば教えてください。
睡眠をすごく大事にしていたので、ポータブルマットレスと枕は必ず持ち歩いていました。朝はスタートの4時間前に起きて、2時間半前には試合会場に入って、ストレッチとアップをして......、とルーティンは決まっていましたね。
気を付けていたことは、根本的なことですけど、体を冷やさないこと、(体を)固めないことです。ゴルフはクラブを前に持つ形での前傾姿勢でいることが多いので、長時間練習していると前傾が強くなりすぎちゃうんです。なので、練習中も数分に一度はちゃんと背筋を伸ばすとか、ちょっと肩をストレッチすることは意識していました。
――ツアーを回っていて大変だったことは?
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楽しかったことのほうが多かったな、と今は思いますね。特に日本のツアーでは大変だなと思ったことはあまりないんです。アメリカは大変でしたけど、日本は試合後に一度家に帰れますし。
――移動中はどう過ごされていました?
若い時はスマートフォンがなかったので、本読んだり、雑誌を読んだり......。それこそ「スポルティーバ」も空港で買って読んでいました。今はスマホがあるので、そういう時にインスタグラムの投稿を作ったり、長文を書いたりだとか、ですかね。最近だと「LADY GO」(ツアー外競技)や他の仕事も増えているので、移動中に作業をすることが多くなりました。
――有村さんと言えば、SNSをうまく活用されているイメージがありますが、SNSに対する向き合い方も変わりましたか?
変わりました。最近、SNSには怖いことが多くて、昔は何でもかんでもポンポン載せられていましたけど、今はこれを載せたらこう言われるんじゃないかとか、(心配になることが)あまりにも多すぎて。最近は投稿するとしても、何回も書いては消して、を繰り返した挙句、結局絵文字だけとか、そもそも投稿しないでおこうとなっちゃうことも多いです。
ただ、SNSにはいいところもたくさんあって。昔はメディアの方に取り上げていただけない限りは、ファンの方々に言葉を伝える方法がありませんでした。しかも、メディアの方に伝えた言葉をそのまま書いていただけるわけじゃないので、自分の言葉じゃなくなったり、ニュアンスが変わってしまったりして、そこで自分自身が悩むことも多かったんです。
今は、誰でも自分の言葉を直接皆さんに伝えられるし、メディアの方々がピックアップしてくださらなくてもファンの方々とつながれる時代なので、いいところだけを楽しんでおこうと思って向き合っています。
【SNS時代の子育てに必要なのは"自己肯定感"】
――私生活のお話をお聞きしたいのですが、旦那さんはどんな方ですか?
とにかく優しい人です。基本的に全部を受け入れてくれるし、応援もしてくれています。妊娠中、(私は)毎日家でダラダラしていたんですけど、さすがに何もしていないから、ご飯ぐらいは作ったほうがいいかなとか、明日も向こうは仕事で早いけど、私は明日も何もないから、洗濯やお皿洗いをしたほうがいいよなと思ってやろうとしたら、「いいよ、いいよ、座ってて」みたいな感じで言ってくれていました。
(パートナーが)妊娠中は、働いている旦那さんが家のことも全部やることが当たり前だと言ってくれる人です。出産後の今でも、料理以外の家事はほとんど旦那さんがやってくれています。
――いい旦那さんですね。ゴルフはプレーされるんですか?
やりますね。家庭内のパワーバランスは近しいですけど、ゴルフだと私がずっと上です(笑)。(スコアが)100を切ったら、「すごかったね!」みたいな感じの人です。
――そして先日、双子のお子さんを出産され、新しい家族が増えましたね。おめでとうございます!
ありがとうございます。今はまだよく寝てくれていますし、ミルク以外でそんなに泣くこともありません。でも、歩き始めて目が離せなくなったら、大変なんでしょうね。
――母親になって、ご自身の変化はありました?
まずは、物事を全部うちの子だったら自分はどうするべきか、という視点で考えるようになりました。それこそ、スポーツを見ていたりすると、うちの子がこうなったらうれしいなって思いますし、応援してあげたいなって思います。けど、逆に事件のニュースなどを見ると、(自分の子が)そういったことに巻き込まれないようにするには、どういう教育が必要なんだろうかとか、すべてにおいて「(自分が)親だったらどういうふうに思うか」を考えるようになりました。
――これから先、お子さんをどう育てていきたいですか?
これからの時代を生きていかなければいけない子たちなので、先ほどのSNSの話じゃないですけど、まずは自己肯定感をしっかり高めてあげたいなと考えています。SNSのおかげで、今までは見えなかった人の意見が見えるようになった世界だから、自己肯定感を高めるためにもしっかりと愛情を伝えていきたいですね。
「有村智恵のCHIE TALK」 次回は8月27日(火)に更新予定
【Profile】有村智恵(ありむら・ちえ)
1987年11月22日生まれ。プロゴルファー。熊本県出身。
10歳からゴルフを始め、九州学院中2年時に日本ジュニア12〜14歳の部優勝。3年時に全国中学校選手権を制した。宮城・東北高で東北女子アマ選手権や東北ジュニア選手権、全国高校選手権団体戦などで優勝。2006年のプロテストでトップ合格。2007年は賞金ランク13位で初シードを獲得した。2008年6月のプロミスレディスでツアー初優勝。2013年からは米女子ツアーに主戦場を移した。16年4月の熊本地震を機に日本ツアーへ復帰。2018年7月のサマンサタバサレディースで6年ぶりの優勝を果たすなど、JLPGAツアー通算14勝(公式戦1勝)をあげる。
2022年に30歳以上の女子プロのためのツアー外競技「LADY GO CUP」も発足させた。
2022年11月に、妊活に専念するためツアー出場の一時休養を表明。2024年4月に双子の男の子を出産した。
◆インタビュー動画はこちらから
https://youtu.be/ia4cne3QnLU