コミュニケーションで大切なのは言葉や仕草だけでなく、距離感である。
人によって心地いい距離感は違う。お互いに上手に距離をとることができれば、人間関係摩擦やすれ違いはおきにくいのだが、とはいえ適切な距離感を測ることはかなりの高等技術でもある。では、どうすれば適切な距離感、間合いをとることができるようになるのか。
■相手との距離感をはかる時に使える絶妙な質問
『上手に距離を取る技術』(齋藤孝著、KADOKAWA刊)では、明治大学文学部教授の齋藤孝氏が、何かと人付き合いで疲弊する人の多い時代、疲れないために上手に距離を取る方法を紹介する。
どこまで距離感を詰めてよいかは人によって異なる。まだ親しくなっていない他人が入ってくることに、全く抵抗のない人もいれば、それが著しく苦手な人もいる。相手がどのようなタイプかを見極める方法の一つは言葉数だ。反応があまりに少なく、自分を開示してこない相手には、いきなり踏み込んではいけない。今の話題について相手から質問してくるのであれば、その話題を進めても問題ないが、うまく流れていないと感じたら、違う話題をふったほうが無難だ。
相手が閉じているかどうかは、表情や声のトーンからもわかる。外側は柔らかく見えても、内側は硬い人もいる。そのようなときは、急がずに徐々に質問を重ね、こちらも相手に共感を表明しながら、相手がどれくらい共感してくれるかを図るといい。
距離感がわからない相手に対しては、個人情報に触れないように会話を進めなければならないので、浅いレベルでできる話題を選ぶのがベターだろう。そういうときに良い質問は「サブスクとかやりますか?」なのだそう。
サブスクは無難かつ、漠然とした質問。観ている番組や好きなジャンルがあれば、ふつうは具体的な返答があるもの。また、人は誰にでも、守りたい、触れられたくないことがあるもの。主に学歴、お金、仕事上の立場、政治、宗教、家族などが考えられる。その人の中で触れても大丈夫な分野を見つけ、それ以外のところは触らないようにして様子を見るのがいい。
人間関係がうまくいかないことの理由の多くは、距離感が近すぎるか、遠すぎること。自分が望む距離感を開いても同じように望むわけでもない。他人や社会との距離感を上手に取るには、大前提として、侵食されにくく、しなやかなで強い自我を確立している必要がある。そのためには、荒ぶった心をなだめ、自分を客観視し、身体感覚を養う努力をすることも重要だ。
距離の取り方は技として学ぶことができると齋藤氏は述べる。本書から人との距離感をつかむコツを学び、実践してみてはどうだろう。
(T・N/新刊JP編集部)