限定公開( 35 )
■「なかよし」紙の発行部数は約2万8000部
月刊少女漫画雑誌「なかよし」の2024年9月号(2024年8月2日発売)が書店で入手困難になっており、出版元の講談社は10月2日まで電子版を無料公開すると決めた。今回の「なかよし」はPEACH-PITの新連載「しゅごキャラ! ジュエルジョーカー」が始まるなど、ネット上では発売前から話題になっていた。
(参考:【写真】完売した「なかよし」9月号、表紙&巻頭カラー&ふろく全部『しゅごキャラ!』)
さて、今回の「なかよし」が品不足に陥っている原因を、ネット上では「しゅごキャラ! ジュエルジョーカー」の連載が始まったことや、その付録のステッカーなどがついているためだと分析する人が多い。しかし、ある書店主は「単純に、発行部数が少ないためですよ」「『なかよし』は数冊しか配本されない書店も多いです」と冷静に語る。
実際、発行部数はどうなっているのか。日本雑誌協会が8月7日に公表した2024年4月〜2024年6月の3ヶ月ごとの平均印刷部数によれば、「なかよし」の発行部数はわずか2万8667部まで落ち込んでいることがわかる。『美少女戦士セーラームーン』の連載時には200万部を発行していたことを考えると、約71分の1の部数となっている。
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ちなみに、少女漫画雑誌の分野では、「りぼん」が11万8333部で、「ちゃお」10万6667部となっている。月刊少女漫画雑誌の「なかよし」「りぼん」「ちゃお」は“3大少女漫画雑誌”といわれているが、いずれもヒット作が少なく、厳しい状態になっている。書店主はこう話す。
「少女漫画雑誌はアニメ化される新作がほとんどと言っていいほど、ない。メディアミックスの面で少女漫画はかなり遅れています。『なかよし』は1990年代や2000年代の漫画の続編を連載し、それをアニメ化するなどしていますよね。それはネットでは話題になるし大人の心は掴んでいるけれど、肝心の女の子たちの心を掴むには至っていないのだと思います」
■増刷ができない少女漫画雑誌特有の事情
なお、電子版の無料公開に踏み切った理由を、編集部は「紙の本誌の代わりに電子版を購入しようにも電子書店で決済することが難しい若い読者の皆様にも読んでいただけるようにしたい」ためと発表した。電子版は一部の記事が非公開となるが、ほぼ紙の雑誌と同様に読むことができるという。
近年、ネット上で記事やグラビアが話題になり、雑誌の重版が行われる例がたびたびある。「なかよし」も無料公開するくらいなら重版すればいいのでは……と考えてしまうが、少女漫画雑誌特有の事情もあるようだ。書店主がこう話す。
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「青年漫画雑誌なら重版できたと思いますが、少女漫画雑誌は付録があるため、簡単に重版はできないのでしょうね。付録を予算内で作るため、出版社は綿密に数ヶ月も前から準備をするそうですから」
なお、電子版ではもちろんだが付録はついてこない。少女漫画雑誌といえば夢のある付録が名物だった。書店主は「かつては発売日になると、女の子たちが競うように漫画雑誌を買いに来たんだけれど、そんな風景は見られなくなっちゃったね。今の女の子たちは何に興味があるんだろう」と寂しそうに語っていた。
(文=元城健)
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