2019年秋、静岡県内の山林で、獣用に仕掛けられたくくり罠にかかっているメスのミックス犬がいました。後に保健所に収容されることになりましたが、つけられた名前は「楓」。状況から飼い犬で、この山林に飼い主が意図的に遺棄。彷徨っていたところで、罠にかかって動けなくなっているようでした。
空腹で石やビニールまで口にし生き抜いていた
保護当初の楓の便からは石やビニールなどが出てきました。
罠にかかった痛みに耐え、そして、周囲にある物を口にしていた楓の様子を思うと心がえぐられる思いですが、罠にかかった後暴れたりすることがなかったため、脚の切断などの重篤なけがには至っていない様子です。
保護した地元の保護団体、スリール〜犬達の幸せ探し〜では、楓に適切な医療ケアを実施。たくさんのご飯を与え、心身ともに傷を負った楓が、いつの日か笑顔を見せてくれることを願い世話を続けることにしました。
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寂しがるワンコに寄り添ってあげる優しい性格
当初の楓はずっと心を閉ざし、初めて見る人、初めての環境では端のほうでじっと固まってばかり。散歩に連れ出そうにも動こうとしません。山林で遺棄された悲しい記憶と罠にかかった苦痛がトラウマとなっているように映りました。
一方で、人間がそばにいない状況で他のワンコが寂しがって鳴いている際などには「大丈夫だよ。私がそばにいてあげるね」と言わんばかりに、そのワンコに寄り添ってあげる優しい性格でした。
5年が経過しようとする頃に「家族に迎えたい」という人が現れた
保護から3年が経過した後、楓はやっと散歩に出られるようになりました。完全にビビリを克服したわけではなく、楓には「うちにおいで」という里親希望者さんからの声がかからぬままでした。
それでも常に楓に寄り添い続けた団体メンバーには少しずつ心を開くようになり、譲渡会などで初めて会う人を前にしても、怖がる様子を見せなくなりました。
保護から5年が経過しようとする2024年、「家族として迎え入れたい」という里親希望者さんからの申し出がありました。
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ここまでの経緯を知り、ずっとお世話をし続けた団体メンバーは、涙が止まらなくなりました。「がんばって生き抜いてくれたことを神様が見ていてくれたんだね」と楓に話しかけました。
時間はかかったが、この上ない幸せな環境を掴むことができた
楓がトライアルに行くことになったのは、別団体の預かりボランティアをしているという方。家には常に保護犬が複数おり、他のワンコが大好きな楓にとって、これ以上ない環境でした。
トライアルで迎え入れられた楓は、当初はビビる様子を見せました。何匹もの保護犬を世話してきた里親希望者さんはこれまでの経験を活かし、楓のペースを最優先に穏やかに接すると程なくして心を開き、里親希望者さんの言葉に心を寄せるようになりました。
散歩にも積極的に出かけられるようになり、歩いている時間は終始ご機嫌な様子でした。
散歩から帰ってきたところで、この家の優しいパパさんが「パパとも遊ばない〜?」と近くに来ると「ん?私に何をするんですか?」と驚いたような顔をしましたが、なでられるとそのままウトウトと寝てしまうこともありました。
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果たして、楓はこの家に正式に譲渡されることとなりました。
5年という長い保護犬生活は、この優しい里親さんに出会うための準備の時間だったのかもしれません。これから先、楓の幸せな第二の犬生が、1日も長く続きますように。
(まいどなニュース特約・松田 義人)