昨今の“BLドラマブーム”のなかでも、質の高い原作と驚きの再現度で注目を集めた「高良くんと天城くん」。その原作者・はなげのまいが「LINEマンガ インディーズ」でトライアル連載していた学園BLマンガ『王子と僕』が8月23日、本連載化して早くも話題になっている。多くのファンを抱える人気作家が「インディーズ」というカテゴリから挑戦し、「早く本連載化を!」との声も多かった本作。ストーリーは丁寧かつ軽快に進み、BLビギナーにも、コアなファンにも刺さる懐の広さを持っている注目作だ。
(参考:漫画『王子と僕』を読む)
■魅力的すぎるふたりの「王子」と、応援したくなる「僕」
高校に入学して6週間。ひとりの友達もできないどころか、スクールカースト最底辺で、絶賛“パシリフィーバー”中の主人公・渡辺恭平。学園には、そんな彼とは対照的なふたりの“王子”がいる。ムードメーカーでヤンチャな太陽(たいよう)と、頭がよくてクールな保(たもつ)。昔から「キラキラした王子様」に憧れていた恭平だが、今では常に周囲に人だかりを作る彼らに目をつけられないよう、息を潜めて過ごす日々。そんななか、いつもようにクラスメイトに押し付けられた「美化委員」の会議で、ふたりの王子様と同席することになりーー。
物語の冒頭は、多くの胸キュンシーンがありつつ、恭平がふたりの王子への“恋愛感情”に無自覚なこともあって、良質な学園ドラマとしても楽しむことができる。「悪質ないじめ」と呼べるほどではなくとも、クラスメイトにいいように扱われていた彼が、学園で圧倒的な影響力があるふたりの王子に“見そめられて”いく過程で、クラスでの立場も改善。そのなかでも控えめで思いやりを失わず、調子に乗るところがない恭平の学園生活が少しずつ華やいでいく様子が微笑ましい。恋愛でも報われてほしい……と応援したくなるキャラクターだ。
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そして、そんな恭平と出会ったふたりの王子ーー太陽はノリがよくプレイボーイ感もあるが、常に前向きで優しい男。恭平に興味を持ち、彼のありのままを受け入れながら優しく包み込んでくれる存在だ。一方の保は常に毅然としていて、一見怖い印象があるが、根は優しく誠実な男。理不尽には断固として立ち向かい、恭平をさりげなく助けてくれるヒーローだ。「王子」の異名のとおり二人ともルックスは抜群で、性別問わず周りに人が寄ってくるのも頷ける。そして恭平にとって、一歩ずつ前に進むモチベーションを与えてくれる太陽と、時にストレスをかけながら成長を促してくれる保は、「キラキラした王子様」であると同時に、大切なことを教えて導いてくれるメンターでもある。
ここで疑問に思うのは、スペシャルすぎるふたりがなぜ、“最底辺”の恭平に興味を持ったのか。ネタバレになるので詳細は控えるが、「創作ならではのご都合主義」に陥っていないのが、読者を没入させてしまう理由のひとつだ。道を歩けば誰もが振り返り、少しでも近づこうとする人たちに常に囲まれている王子たちにとって、“敵意なく自分を避ける”恭平はかなり珍しく、それだけで気になってしまう存在であるだろう。そして、恭平には彼らによく思われようとか、その人気にあやかろうという打算がなく、彼らに対して「ごめん」と「ありがとう」という言葉を同じくらいの高頻度で投げかける姿が可愛らしく見えるのも当然のこと。人の「関係性」を緻密に描くBL作品においては、こうした説得力が大切なのだと思わされる。
ふたりの王子の魅力にクラクラしつつ、徐々にモヤモヤとした感情を覚えていく恭平の成長をキュンキュンしながら見守る楽しさもある『王子と僕』。物語はまだ始まったばかりだが、気の早いファンは「実写ドラマのキャスト」を予想し始めてもいいかもしれない。
(リアルサウンドブック編集部)
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