2023年3月に環境省が公表した「2022年(令和4年)度『ごみ屋敷』に関する調査報告書」によると、全国1741市区町村のうち、ごみ屋敷事案を認知していると回答したのが661市区町村でした。全市区町村のうち38.0%が認知しているということで、大きな問題になっていることが分かります。ごみ屋敷のなかには高齢のひとり暮らし世帯もあり、相続発生時に問題が発生することもあるようです。
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40代会社員のAさんは学生のころから父親とは反りが合わず、母親が亡くなってからは実家には帰らず絶縁状態でした。そんなある日、Aさんが仕事をしていると知らない番号から電話がかかってきました。電話をかけてきたのは実家近くの役所で、その内容は父親が亡くなったというものだったのです。
AさんにもAさんの父親にも兄弟はおらず、父親の財産は自分だけが相続人でした。そのためAさんは仕方なく実家に足を運びます。Aさんが最後に実家を訪れたのは母親が存命だった10年ほど前で、久しぶりにたどり着いたAさんの実家はなんとごみ屋敷に変わり果てていました。どうやら父親は、母親が亡くなってからというものさまざまなものを拾ってきては家に持ち帰り、きれいだった実家をあっという間にごみ屋敷に変えていたようです。
こんな家はとても相続できないと考えたAさんは、相続放棄を検討しています。ごみ屋敷となった実家は相続放棄できるのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに聞きました。
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ーごみ屋敷となった実家は相続人がどうにか処分しないといけないのでしょうか
相続しなければならないわけではありません。Aさんも検討されているように、相続したくない場合は、相続放棄をおこなえます。
ー相続放棄をする場合に、注意すべき点はありますか
相続放棄をすれば相続しなくてもよくなりますが、物件の保存義務が残る場合があります。ただし保存義務を負うのは相続放棄時に相続財産を占有している場合に限られます。
今回の場合、Aさんは父親と絶縁状態にあったことから、占有している相続財産は存在しないと考えられるため、ごみ屋敷の保存義務はないと考えられるでしょう。しかし実家の鍵をAさんが保有していたりすると、そこに住んでいなかったとしても占有していると見なされる場合があるので注意が必要です。
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ー相続放棄後に高価な財産が見つかった場合はどうなりますか
ごみ屋敷のなかから高価な財産が見つかったとしても、相続放棄をしているためAさんは相続できません。もしごみ屋敷のなかに財産があると考えられるのであれば、相続放棄をせずに業者を活用し、ごみの片付けや家の売却をおこなった方がいいでしょう。Aさんが直接片付けなくても業者に片付けを一任できるので、こちらの方がメリットが大きくなるのではないでしょうか。
◆北村真一(きたむら・しんいち)弁護士 「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないといわれる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。
(まいどなニュース特約・八幡 康二)
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