スラリとしたプロポーションと、半立ち耳が特徴の希少犬種、ウィペット。一般にグレーハウンドとイタリアングレーハウンドの中間ほどのサイズで、穏やかで落ち着いた性格のワンコが多いとされる犬種です。
2024年初め、とある繁殖場に、1頭のウィペットが弱った状態で過ごしていることが発覚しました。推定13歳ほどのオスですが、繁殖場の主は弱ったウィペットをそのまま放置。このワンコの存在を知った心ある人が「救い出してやることはできないか」とボランティア団体に呼びかけました。
ネグレクトの跡に加え重篤な疾患の疑いが…
後にこのウィペットを保護することになったのが静岡県の団体・スリール〜犬達の幸せ探し〜。このウィペットに「ハリー」という名前をつけてあげました。ハリーはガリガリに痩せてグッタリしており、すぐに動物病院に連れて行きました。
わかったことは耳と歯の状態が悪いこと。比較的健康な下の犬歯2本以外の歯をすべて抜くことになりました。先天的な持病ではなく、普通にお世話をしていれば回避できるはずです。あらためて繁殖場のネグレクトがうかがえました。
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また、獣医師からは「白血病かリンパ腫の疑いがある」とも。劣悪な環境で、守ってくれる人も気にかけてくれる人もおらず、13年間も「人間の道具」としてしか扱われなかったハリー。人間からの愛を受けず病気になっても治療されず苦しませるとは、これほど残酷なことはありません。団体メンバーは病気の疑いが間違いであることを祈り、ハリーの世話を続けました。
リンパ腫を抱えていたことが判明
しかし、獣医師の見立ては的中。ハリーはリンパ腫を抱えていたことがわかりました。2〜3カ月ほどで亡くなってしまうこともある怖い病気ですが、幸いハリーのリンパ腫は「高分化型」と呼ばれる比較的進行がゆっくりなもの。積極的な治療の必要はないとのことで、団体メンバーはハリーの体力・筋力を付けるためにケアを続けました。
現実的な問題と「幸せへと繋げたい」という思いの狭間で団体メンバーは苦悩しましたが、思わぬことが次々と起こります。それはハリーの存在とリンパ腫のことを知った多くの人々からの支援でした。
「1日でも長く生きてくれますように」と続々届いた支援
「ハリーのために」と多くのフードが贈られ、「1日でも長く生きてくれますように」と支援金が続々と届きました。たくさんの善意にこみ上げる涙を抑えながら団体メンバーはハリーに話しかけました。
「大丈夫だよ、ハリー。これだけたくさんの人たちが応援してくれているから、きっと幸せな余生をつかむことができるよ」
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その思いは保護から約5カ月後に現実になりました。
13歳にして初めての「家族」のもとで幸せな余生へ
ハリーの元に「病気も年齢も含めてすべてを受け入れたい」という里親希望者さんが現れたのです。他県で暮らす優しい家族で、まだ小さいお子さんも含め家族全員でハリーを温かく迎え入れてくれました。
13歳というハイシニアでリンパ腫を抱えながらも、初めて人間の温もりを感じることになったハリー。「構って」「散歩に行きたい」「お腹がすいた」といったワンコであれば、ごく普通の意思表現もこの家で初めてするようになり、幸せな日々過ごしているとのことです。
多くの支援があってこそ実現したハリーの幸せ。優しい里親さん家族のもとで「人間の愛」に包まれながら、1日も長く余生を過ごしてくれると良いなと思います。
(まいどなニュース特約・松田 義人)
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