新旧問わず世界中のアニメや映画が視聴できる「Amazonプライム」。9月の視聴ランキングは、日によって変動があるものの『杖と剣のウィストリア』や『HUNTER×HUNTER』などのバトルファンタジー作品の人気が高まっている状況です。
今回は「Amazonプライム9月の視聴ランキング(日本)」の上位3作品のアニメを紹介しつつ、ランキング結果の分析を行います。気になる作品があれば、ぜひチェックしてみてください。
本記事は、Amazon.co.jpのプライムビデオ視聴ランキング(2024年9月10日20:00現在)に基づいてランキングを集計しています
●Amazonプライム9月の視聴ランキング:3位『杖と剣のウィストリア』
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『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』(通称、「ダンまち」)で知られる大森藤ノ氏が原作を手掛ける学園バトルファンタジー『杖と剣のウィストリア』。『推しの子 第2期』や『しかのこのこのここしたんたん』など注目作の多い夏アニメで、放送開始当初はやや埋もれていた印象があるものの、8月の第7位から着実に順位を上げ、9月は3位にランクインしています。
魔法こそがものを言う魔法至上主義の世界で、魔法の才能がまったくない主人公・ウィルの活躍を描く物語です。幼馴染との約束を果たすために、魔導士を目指して魔法学院へ入学するウィルですが、魔法を一切使えないため、同級生や先生からも馬鹿にされいじめられる辛い学園生活を送ることに……。
魔導士として絶望的な状況に置かれるウィルですが、実は誰よりも身体能力や洞察力に優れた人物で、剣を使った白兵戦において類まれな実力を発揮します。普通は魔法(杖)を使って倒すダンジョンのモンスターも、ウィルは自らの肉体と剣術で倒していきます。
魔法が絶対の世界で、ウィルの努力と身体能力がどこまで通用するのかが見どころとなる作品です。周りからいじめられている描写から始まり、見ている側のストレスが高まった状態で、終盤に周りをアッと言わせるような主人公の活躍を描く、いわゆる“スカッと感”が本作の大きな魅力と言えます。
さらに『チェンソーマン』のアクションディレクターを担当した吉原達矢氏が監督を務めており、迫力と臨場感、敵を倒した後のカタルシスを感じさせる良質なアニメーションが展開されているのも魅力です。その他序盤からラブコメ的な要素が盛り込まれるなど、スカッと感×アニメーションのカタルシス×恋愛の良いとこ取りの作品で、見始めたら止まらなくなる中毒性たっぷりのアニメです。
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●Amazonプライム9月の視聴ランキング:2位『HUNTER×HUNTER』
日本を代表する漫画家の1人・冨樫義博氏によって、週刊少年ジャンプより連載が始まったファンタジー冒険活劇『HUNTER×HUNTER』。1998年の連載開始から20年以上経った今でも多くのファンに愛され、累計発行部数は8400万部越えのカルト的な人気を誇る大ヒット作品です。そのアニメ版が第2位にランクインしました。
X(旧Twitter)のフォロワー数318万人越えの冨樫氏の高い知名度と原作の圧倒的な面白さ、さらにAmazonプライムで6月から『HUNTER×HUNTER』シリーズが順次見放題配信され始めた影響もあって、ランキング上位へ食い込んでいるものと推察されます。
6月19日より1〜75話の配信がスタートし、7月17日には『劇場版 HUNTER××HUNTER 〜緋色の幻影〜』と『劇場版 HUNTER××HUNTER The LAST MISSION』の2本の劇場版、8月14日には76〜148話までが見放題配信されています。
もう1点見逃せないのは、原作の最新38巻が9月4日に発売された点です。1年10カ月ぶりとなる新刊の発売にファンの熱が再び盛り上がり、アニメの視聴者増加につながったのではないかと考えられます。
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本作はハンターである父に憧れてプロハンターを目指し旅へ出るゴンを中心に、同じくハンター志願者のレオリオやクラピカなど、ひと癖もふた癖もあるキャラが登場。少年少女たちによる、好奇心を刺激し感動を呼ぶ物語が展開されます。冨樫氏が仕掛ける知能指数の高い設定やストーリー展開を解釈し理解を深めるためにも、もう一度アニメをご覧になってみてはいかがでしょうか?
●Amazonプライム9月の視聴ランキング:1位『転生したらスライムだった件 第3期』
『杖と剣のウィストリア』と『HUNTER×HUNTER』を押さえて1位に輝いたのは、ごく普通のサラリーマン・三上悟が異世界にスライムとして転生し活躍する『転生したらスライムだった件 第3期』。「転スラ」は先月から2カ月連続で1位に輝き、4月から5カ月連続でトップ10入りを果たすなど、安定した人気を獲得しています。
『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』のリバイバル上映や、8月8日発売の新作ゲーム『転生したらスライムだった件 テンペストストーリーズ』など、テレビシリーズの放送と並行して、さまざまなプロジェクトが進行していることもあってか、ファンの熱は冷めやらず「転スラ」の人気は高止まりしている状況となっています。
本作は主人公が通り魔に襲われ転生したらスライムだったというところから始まる奇想天外な物語ですが、基本的には主人公(異世界では“リムル”)のチート系能力で、異世界を無双していく爽快感が味わえる作品となっています。
第3期はリムルが「人魔共栄圏」を目指し、新たな理想を掲げて進んでいくことになるのですが……。敵味方関係なく仲間に取り込んでいくリムルの人望がどこまで通用するのか、第3期も目が離せません。
●Amazonプライム9月の視聴ランキング:トップ10
10位:『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』
9位:『ラーメン赤猫』
8位:『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』
7位:『損するのは嫌だから』
6位:『しかのこのこのここしたんたん』
5位:『僕のヒーローアカデミア』
4位:『ラブ トランジット』
3位:『杖と剣のウィストリア』
2位:『HUNTER×HUNTER』
1位:『転生したらスライムだった件』
●Amazonプライム9月の視聴ランキング:「転スラ」が2カ月連続首位を獲得! 9月はバトルファンタジーの勢いが目立つ結果に
9月の視聴ランキングは1位の『転生したらスライムだった件』を筆頭に、2位の『HUNTER×HUNTER』、3位の『杖と剣のウィストリア』などトップ3はいずれも“バトルファンタジー作品”で、4位の『僕のヒーローアカデミア』も“バトルもの”という点では共通しており、少年漫画的な展開の作品が高い人気を獲得する結果となりました。
特に「転スラ」は8月から引き続き首位をキープしており、4月のトップ10入りから5カ月連続でランクインするなど根強い人気を得ている状況です。
「転スラ」や『杖と剣のウィストリア』、時折りランクインすることもある『俺は全てを【パリイ】する 〜逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい〜』など、人気のバトルファンタジーものに「最底辺の主人公が実は最強」という共通のフォーマットが存在する点にも注目したいところです。
「転スラ」ではスライムという弱小の魔物に転生し、『杖と剣のウィストリア』では魔法が絶対の世界で魔法が一切使えない劣等生が主人公に設定されており、「俺パリ」では「全てにおいて、一切の才能がない」と評された主人公が登場するなど、いずれも最底辺の属性を持っています。
そんな最底辺の主人公が努力をしたり何らかの能力を覚醒あるいは披露したりして、他とは一線を画す超特殊で最強な存在へ、周囲からの印象がガラッと変わるという「馬鹿にされた存在からの下剋上」の展開が用意されています。
“スカッと展開”と言っても良さそうですが、この点は大ヒット作品の『マッシュル-MASHLE-』にも言えるポイントで、魔法が使えず周りから馬鹿にされている主人公マッシュ・バーンデッドが、魔法が絶対の世界を圧倒的な身体能力で下剋上していく姿が描かれています。これらの要素は『杖と剣のウィストリア』と重なる部分も多く、こうした下剋上系のコンテンツが相次いでヒットしているのは興味深いポイントです。
「転スラ」や「俺パリ」をはじめ、春アニメで人気だった『怪獣8号』や『無職転生』など、中年に差し掛かった人物が何らかのきっかけで人生を変えていく物語が増えているのも最近の特徴と言えます。これはアニメ視聴者のボリュームゾーンが中年期を迎えていることが大きな要因だと推測され、こうした中年層が自己投影できるコンテンツも今後は安定的に人気を獲得していくことが予想されます。
また9月も「ジャンプ原作」の勢いは止まらず、2位の『HUNTER×HUNTER』、4位の『僕のヒーローアカデミア』、5位の『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』、6位の『ラーメン赤猫』の4作品がトップ10入りを果たしています。
その他『しかのこのこのここしたんたん』が先月の3位から順位を落とし6位になるも、引き続きランクインしており色物として登場したはずが、一発屋とは思えない根強い人気を得ているのも面白いポイントです。