13日より公開中の三谷幸喜脚本・監督の映画『スオミの話をしよう』。劇中で主演の長澤まさみ演じるスオミがまとう、対峙する相手によって全くテイストの異なったファッションが、見どころのひとつとなっている。
【画像】二つ結びヘアやチャイナドレス姿…スオミの場面写真 シックなチャイナドレスやボディコンシャスなパンツスタイル、ガーリーなワンピースからコンサバティブなできる女風、そしてサバゲ―スタイルに三つ編み&セーラ服まで、それらすべてを完璧に着こなす長澤の七変化ぶりは一見の価値ありだ。
三谷監督にとって9作目の脚本・監督映画となる本作は、主人公であるスオミが突然行方不明になったことに端を発した、ミステリー・コメディ。スオミの現夫の豪奢な邸宅に、元夫たちが集結する。
スオミは5回結婚しており、1番目の夫を遠藤憲一、2番目の夫を松坂桃李、3番目の夫を小林隆、4番目の夫を西島秀俊、5番目の夫を坂東彌十郎が演じている。夫たちは、「自分が最もスオミのことを愛していて、誰よりも理解している」と主張し合うのだが、彼らの思い出の中のスオミは、見た目も、性格も、別人のように違っていた。
対峙する相手によって変わるのは、衣装だけでない。性格もまるで別人のよう。しかし、どれもスオミであるという高度な演じ分けを、長澤は見事にやってのけた。
三谷監督との仕事は、いつも挑戦状をもらうみたいな感じがする、という長澤。公開直前の9日、福岡市のソラリアプラザで開催されたイベント「福岡でスオミの話をしよう!!」に三谷監督と登壇した際、長澤は「今回もなかなかの挑戦状だったんじゃないかなと思います。スオミはいろんな顔を持っている女性で、人によってスオミの印象は違うけれど、どれもスオミという一人の女性であるというのがポイントなので、それが一体どういうことなのか、映画館で確かめてほしいと思います」と語っていた。
特に、後半、スオミと5人の夫たちがそろって対峙するシーンでは、4分半以上長回しで撮影を敢行。この時の長澤の熱演とすさまじい集中力を共演者たちは舞台あいさつ等で口々に絶賛している。
長澤も「役を演じるというより、その人がそこで生きているように存在したい。それを追求していきたいから、現場では集中力を切らさないように努めていた」と、福岡のイベント直後に取材で明かしていた。
ものすごい集中力を発揮できる長澤は、うまく自分を追い込める俳優だと三谷監督は語る。「俳優は、悩んで、悩んで、役と向き合って、台本を読み込んで、役づくりしていくのも必要だし、本番になったらそれを一気に放出するような、全部取っ払って思いっきり弾けるような瞬発力も必要。その両方あって成立する仕事だと思う。長澤さんは、その両方をすごくうまく使い分けてらっしゃると思う」。
福岡でのイベント時、長澤は北九州市でNODA・MAP『正三角関係』(作・演出:野田秀樹)の公演中(9月11日まで)で、休演日に休み返上で駆け付けていた。
三谷監督は「野田秀樹さん含めて演劇の人はみんな長澤さんと仕事をしたいと思っているはずなんですよ。映像の監督たちも多分同じこと思っているから、これからますます長澤さんの奪い合いになると思います」と断言。
長澤も「演劇も、映像作品も、見てくださる方々がいて完成する。この仕事を長く続けていけばいくほど、それを感じます。作品づくりの一員でいられることがすごくうれしいです。どちらも楽しみながら、チャレンジしながら、これからもお芝居をしていきたいです」と意欲を示していた。