京都大の学生寮「吉田寮」(京都市左京区)の魅力を新旧の寮生らが伝える「究極の学び場 京大吉田寮」が出版された。学生たちが寮運営を担う「学生自治」の意義や「対話」が伝統の寮生活の実態がつづられている。編者となった出版社「実生社(みしょうしゃ)」(北区)代表の越道京子さん(46)は元寮生で、「私自身が吉田寮に救われた。寮への理解を広げるきっかけにしたい」と語る。
越道さんは京大経済学部の学生時代、友人の死によって精神的に不安定な状態になったのがきっかけで吉田寮に足を運んだ。「お祭り騒ぎのような空間で寮生と交流することで心を保てた。誰も排除されず、個性的な人たちの居場所だった」と振り返る。その後、入寮して寮生にもなった。
本は1950年代〜2000年代に入寮した人や現役寮生ら約20人による寄稿文やコラムで構成。入寮資格から性別や国籍の要件をなくすなど、柔軟に規則を変えてきた寮の歴史に触れつつ、「対等の立場で話し合って決める」という伝統が一貫して息づいているとしている。
ノーベル物理学賞を受賞した元京大教授の故益川敏英さんへのインタビューも掲載。益川さんは学生部長だった1996年に寮との団体交渉を担当した当時を振り返り、学生に向けて「友達と夜を徹して議論したほうが良い。競い合うことに意味がある」とメッセージを送っている。
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越道さんは、京大当局が全寮生に退去を求めるなど吉田寮を巡る問題が深刻化し始めたことをきっかけに出版を企画してきた。「吉田寮は上下関係なく、とことん議論し、さまざまな人と関わって生き方を見つめられる場所。その価値を伝え、ファンを増やしたい」と話している。
四六判176ページ、1980円(税込み)。
(まいどなニュース/京都新聞)
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