高校野球の元監督が「お父さんコーチ」になって思った、少年野球のあんなことやこんなこと。日々、子ども達と向き合い、奮闘されている指導者の皆さんに向けた、神奈川県立川和高校野球部の元監督、伊豆原真人さんのコラムです。
先日、『少年野球お悩み相談』コーナーに「『マルチスポーツ』で野球は上手くならない?」という相談が来ていたようですので、私も意見させていただければと思います。
学童のマルチスポーツについては様々なところで話が出ており、その有効性自体は私も同意見です。
今回の焦点は「週末の学童野球チームの練習に他スポーツを取り入れるかどうか」。
私は野球の練習に来ているのだから、野球をやるのが良いと思います。他スポーツを取り入れることがダメなわけではなく、野球をたくさん練習したいと来ているはずだと思うからです。
選手が土日の野球の練習しか運動していないのであれば、負荷が偏っているので肩、肘、腰などの怪我に繋がりやすくなります。それはマルチスポーツとは別の意味で、ある意味、運動不足です。平日などに他スポーツでなくても、公園での遊びでも良いので、しっかりと運動をする必要があると思います。
個人的には鬼ごっこなどもうまくやればランニングやスプリントの練習になるはずだと思っています。
【土日の野球練習のみで、平日全く動いていないのであればマルチスポーツ以前の話。まずは平日に様々な遊びなどを通じて運動を経験することが必要】
これが、平日も含めてずっと野球しかやっていないとなると話が変わってきます。野球のみだと特定の運動となり負荷が大きいのではないか、偏った運動にならないかという話になります。その場合は平日の何日かを水泳や陸上などに置き換えて、主は野球として、他種目を通じてバランスの良い能力向上を目指すのが良いのではないかと思います。
小学生の場合、運動能力の向上まで全てを週末の土日のみで完結することは難しく、学童野球の指導者は必要に応じて、平日の少ない時間で良いので遊びながら運動するメニューなどを提案していくことも、能力向上に繋がると思います。それによって結果として野球のスキルアップになるように思います。
地元の学童チームとなると、意欲も技術も運動レベルも様々な選手が集まると思います。ひたすら野球の好きな子、平日は他スポーツで汗を流している子、土日のチーム練習しか運動しない子など。とても舵取りが難しいと思いますが、飽きのこないような練習メニューや、負荷のバランスをとった指導、平日の過ごし方のレクチャーなど様々なことが求められるので、それが指導者の腕の見せどころですね。
【プロフィール】
伊豆原真人。愛知県立瑞陵高校野球部、信州大学野球部で投手としてプレー。大学院卒業後にシステムエンジニアの道へ進むも、28歳で神奈川県教員へ転職。相模大野高校(相模原中等教育学校)監督を経て、2013年から川和高校の野球部監督に就任。2023年からは他校への異動に伴い高校野球の現場を離れた。担当教科は数学。
X(https://twitter.com/izuharabaseball)
Instagram(https://www.instagram.com/masatoizuhara/)