MotoGP第13戦サンマリノGPを終えた翌日の9月9日月曜日、ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリでMotoGPクラスの公式テストが行われた。苦戦を続けるホンダとヤマハは、どのようなテストをしたのだろうか。そして、どのような改善があったのだろうか。
■ホンダ:旋回性の向上を目的とした空力デバイスをテスト。しかし、リヤグリップは改善せず
ホンダは、サンマリノGPのレースウイークを体調不良によって欠場した、ジョアン・ミル(レプソル・ホンダ・チーム)とルカ・マリーニ(レプソル・ホンダ・チーム)がテストには加わった。二人とも完全に回復したわけではないということだったが、53周を走っている。少しでも多くのデータが欲しいホンダとしては、二人が無事にテストに参加できたことは幸いだっただろう。
ホンダは主に、新しい空力デバイス、そしてシャシーについてもテストしたところがあるということだ。テールカウルの空力デバイスを外して、新しい空力デバイスとの相性を確認する、といったトライなども行っていた。
新しい空力デバイスについては、旋回性の向上をねらったものだ。これについては、ライダーの評価はおおむね前向きなものだった。ライダーのコメントを総合すると、「(新しい空力デバイスによって)旋回が少しよくなった」ということだった。
オーストリアGPでホンダが投入した新しいエンジンもまた、旋回性の向上を目的としたものだった。ホンダは今、改善の重点を旋回性に置いていると考えられる。旋回性の問題は、特に今季、しばしば言及されてきたところである。
だが、もはやホンダにとって長年の「持病」になっている、リヤのグリップ不足と加速時のトラクション不足については改善されていない。
「リヤのグリップについて改善はありましたか?」と、テスト後の囲み取材でザルコに確認すると「まだ改善を続けているところだよ。最悪なのは、加速。それはグリップのせいだけではないんだけど、前に進まないんだ」と答えている。
中上もまた、同じように語っていた。
「今のエアロの狙いは旋回性向上ですが、それ以上にリヤのグリップや、加速時のトラクションが、今、すごく不足しています。特にドゥカティと比べると、もともと持っているグリップのレベルの違いも大きいし、僕たちのホンダのバイクは地面に伝わる力が不足しているので、バイクが振られやすくなったりします。きちっと路面に吸い付くようなフィーリングがなく、ロケットのように一気に加速する感じが全くないんです」
「乗っていても、『これじゃタイムは出ないだろうな』と感じます。でも、ずっと改善はされていないです。根本的に抱えている部分は一緒ですね」
そして今回、ミルが不満をあらわにしたのは、テストの「内容」についてだった。体調不良を押してテストに参加したミルだが、テストするものが少ない、と言及したのだ。
「正直言うと、もっと期待していたんだ。エアロダイナミクスのものをいくつかテストしたし、シャシーのほうでもテストしたものがある。エアロダイナミクスは、よく機能していた。おそらく次のレースではそれを使うだろう」
「ただ、革新的なものは何もなかった。僕としては、もっと多くのものをテストすると思っていた。以前、ホンダはこのミサノテストに新しいバイクを持ち込んだんだ。でも今回は、いくつかのパーツだけ。僕としては、もっとテストするものが多いと思っていたのに。アジアに行ったら、もうテストプランはないと思う。次のテストはバレンシアになる。すごく心配だよ」
コンセッション(優遇措置)のランクDの適用を受けているホンダは、プライベートテストの回数も、ライダーが期待したほど多くはなかった。ミサノの公式テストを踏まえると、2025年シーズンの方向性が不透明であるようにも見える。今回のテストで最も疑問を抱かせたのは、ホンダの動き、と言えるかもしれない。
■ヤマハ:リンスは「1周につき0.5から0.7秒更新」と語るが、クアルタラロは……
ヤマハは主に、新しいエンジンと新しいシャシーのテストを行っていたという。アレックス・リンス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)によれば、そのエンジンは「本当にベースの2025年向けエンジン」ということだ。リンスはすでにそのエンジンをアラゴンGPで使用していたが、エンジンの年間使用可能基数をマネジメントしなければならない関係から、サンマリノGPでは使わなかった。
「トラクションに関して、とても大きな違いを感じた。1周あたり0.5から0.7秒、ペースを更新している。素晴らしいよ。走るたびにバイクに慣れていき、セッティングをテストした。ポジティブだったよ」
ファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)は新エンジンをテストし、午後に新しいフロントフォーク、サンマリノGPのレースウイークで使用した新しいシャシーをテストする予定だ、と話していた。リンスはエンジンについて前向きなコメントを残したが、クアルタラロはそうでもなかったらしい。ただ、クアルタラロの囲み取材は昼過ぎに行われたので、その時点でのコメントということも考慮しなければならないだろう。
「今のところ、あまり(よくなったわけではない)。スロットル・コネクションが違うので、まだ作業しているところだよ。(パワーデリバリーが)ダイレクトになった。そういうエンジンをどう乗るか、考えなければならないんだ」
現在のヤマハのウイーク・ポイントは、かつての強みであった旋回性のよさだが、ヤマハは加速のパフォーマンスを向上させようとしていると見られる。
次戦エミリア・ロマーニャGPもまた、ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで開催される。テストを踏まえ、ホンダとヤマハがどのようなパフォーマンスを見せるのか、注目したい。