サブカルチャーの聖地として根強い支持を得てきた、「遊べる本屋」こと、ヴィレッジヴァンガード。イオンモールなどの大型商業施設への出店やオンラインショップ展開の一方で、11億円超もの赤字と急激な店舗減少という窮状が話題になった。
【写真】店員さんたちのセンスが光るヴィレヴァンの手書きポップ
「ヴィレヴァンはいつでも君の味方だよ」
そんななか、全国に展開するヴィレッジヴァンガード約300店舗をすべて巡るという、ヴィレヴァン全店まわるひと【非公式】(@village_vanvan)さんが、「人生を救ってくれたヴィレヴァン」への想いをX(旧Twitter)に投稿。
そして、高知店の入り口の足元に貼られていたという、手書きで記された「ヴィレヴァンはいつでも君の味方だよ」という店員さんからのメッセージの写真をリポストした。
「どれだけVVがダメになろうとも、子どもの頃に救われた、肯定された記憶がある限り応援し続けますよ。都会の人にとっては大した店じゃないかもっすけどね。地方から出れない内気で卑屈な子どもにとっては大事な場所だったんすよ」(ヴィレヴァン全店まわるひと【非公式】さんのXの投稿より)
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ヴィレヴァンとの出会いで、「本当の人生が始まった」
店員さんたちの知識と個性あふれるユニークな推薦文、マニアックな品揃えや凝ったディスプレイを通して、多くのサブカル少年少女たちに絶大な影響を与えてきた、ヴィレッジヴァンガード(※以下、VV)。
ヴィレヴァン全店まわるひとさん(※以下、ヴィレ全さん)にとっても、「知見を広げられる、新しいモノに出会える場所であると同時に、自分の個性に合った居場所だった」という。
「田舎で鬱屈とした少年として過ごしていましたから、周囲の人間との違和感をずっと感じていましたし、興味を持てる分野が学校では見つけられず、自分が帰結できる居場所がありませんでした。何にも興味を持てず、つまらないと感じている子どもでしたが、それはたまたま学校という場所に興味のあるモノがなかっただけで、VVにはたくさんあったんです。
そして、とある店舗で出会った『パンクロック』のコーナーに初めて強い影響を受け、そこから”サブカル野郎”として、僕は初めてこの世に生まれたんだと思います。そこからはあらゆるサブカルの世界に飛び込み、無趣味の陰気な中学生から、多趣味の変なおっさんに成長しました。VVは僕をそうさせてくれる場所だったんだと思います」(ヴィレヴァン全店まわるひとさん)
ヴィレヴァンに「人生」を肯定された人たち
ネットもSNSもなく、少数派が容易に繋がれなかった時代。ヴィレ全さんのように、メジャーなものに興味がなくてもいいんだ! ここには自分と同じくマニアックなものを好きな人がいるんだ!ということが実感できるVVという存在に、自分の思春期や人生を肯定された人は少なくない。
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「ヴィレヴァンはいつでも君の味方だよ」という店員さんからのメッセージや、「子どもの頃に救われた、肯定された記憶がある限り応援し続ける」という、ヴィレ全さんの投稿に対する多くの反響は、まさにそれを象徴するものと言えるだろう。
「あの投稿が思ったよりも拡散され、同じように考えている方たちがたくさん見てくださり、ものすごく感動しました。本来僕のアカウントは、VVの店員さんの店舗運用に向けたものであるべきなので、あまり自分を出すのはよろしくないのですが、あの時だけは私的な喜びを感じましたね。仲間がいたんだ!って」(ヴィレヴァン全店まわるひとさん)
モール内の店舗にも、それぞれの個性や面白さが
ヴィレ全さんに伺ったところ、「仕事で全国を移動する合間に、再び訪れてみようと思い立ったこと」に加え、路面店が減少し、モールへの出店が増えたことでサブカル度が薄れた…といった批判の声が多くなったことも、VVの全店をまわるきっかけになったという。
「全国の店舗をまわって店員さんたちと話していると、どうも売り上げがあまり良くない、雇用条件も悪くなっている、ネット上ではかつてのVVへの郷愁と現在のVVへの批判などが増えている、といった声を耳にしまして……。でも実際は、店舗それぞれ個性が違って、面白い点がたくさんあります。
何よりも、子どもの頃にいろんなサブカルチャーに触れるきっかけとなった店なので、自分に何か出来る義理の果たし方はないか?と思い立ったことが大きいですね。VVで出会ったいろんなサブカルチャーによって僕のアイデンティティは育まれましたし、同じような人たちはたくさんいたはず。文化的育成の場となってくれた母校への恩返し的な感じ、でしょうか」(ヴィレヴァン全店まわるひとさん)
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白川社長「ヴィレ全さんの投稿、拝見してます」
VVの株主でもあるヴィレ全さん。去る8月に行われた株主総会に出席した際の様子(前編・中編・後編)をXに投稿したところ、大きな反響があったそうだ。
その際、白川篤典社長から、「(ヴィレ全さんのXアカウントを)「拝見させて頂いております」「僕らでも300店舗まわるのは不可能に近い」「面談の場は設けているが、忖度してしまうのでうちの従業員の話を聞かせて頂けるのはありがたい」と、直々に言われたそうだ。
「現況に対する挽回策として、白川社長はPOP UPストアとECサイトによる利益確保をメインにお話されていましたが、ここまで拡大した赤字を本当にそれだけで取り戻せるのか?という疑問はありました。それと、株主総会レポをXに投稿した辺りから、VVの店員さんたちからDMがたくさん届きまして。そこには、株主総会で社長が説明されていることについて違和感がある、現場の状況を把握出来ていない、といった不満がたくさんありました。現場と経営陣によるズレを感じましたね。
白川社長には株主総会でもお伝えしましたが、もうちょっと下の意見も聞きつつ、とにかく賃金を上げたってほしいですね!まぁ立場上、彼も本当にしんどいとは思うのですが、もう少し現場とコミュニケーションを取ったり、説明をしてあげてほしいです。社長というよりも、営業部の社員さんたちへの話かもしれませんが…」(ヴィレヴァン全店まわるひとさん)
店員さんたちへ「VVに救われた人がたくさんいるよ」
株主総会に出席した理由について、「(店員さんたちに)クーデターを起こしてほしいわけじゃなくて。幹部と現場の深い深い溝を少しずつ埋め立てるきっかけにして和解してほしい」「僕は株主として、ヴィレ全として、ヴィレッジヴァンガードというお店がいろんなサブカルチャーの図書館であるように、さらに楽しい店舗が増えることを願っています」と、Xに投稿していたヴィレ全さん。
「今回の投稿を通して、僕と同じようにVVに救われた人がたくさんいることがわかりましたから、その方々には今一度、”帰省”だとでも思って、近くのヴィレヴァンに行ってあげてほしいです。で、出来ればそうやって自分が救われたと思う経験を、店員さんたちに言葉で伝えてあげてほしい。もちろん人によっては何十年も前の経験だったり、当時の店員さんはもうとっくに店にいないかもしれません。でもそういう特殊な体験をVVでしたんだよっていうお話は、今働く彼らのモチベーションになるかもしれませんから。
自分たちも今、イオンのVVに来ている子どもたちの人生を変えるような、すごい売場を作っているのかもしれないんだ……と、彼らにそう思わせてあげてほしいです。今、店員さんたちは本当に激務な上、昔のように自由な売場作りが出来なくなってきていますから。少しでも彼らの励みになるように伝えてあげてほしいです」(ヴィレヴァン全店まわるひとさん)
あの頃僕らを支えてくれた場所は、未来の誰かを支える場所に
「ヴィレヴァンに行って欲しい、それだけです…マジでたのむ!ワガママを言うなら特に路面店に」「内気で陰気で卑屈なVVキッズだったみんな、あの頃、居場所になってくれたヴィレヴァンにもう一度訪れて見ませんか?あの頃は買えなかった高い本も、ちょっとスケベな変な雑貨も、大人になった今なら買えるはず。Back To the VV!」と、Xに投稿していたヴィレ全さん。
その熱い思いに対して、共感と共に、VVでの思い出を綴った声が多く寄せられた。
「ヴィレヴァン本店のある名古屋民です。なんの予定もない土曜の夜、9時過ぎに1人でふらっと行きたくなる、それがヴィレヴァンの原点です」
「店に入る度にホッとした気持ちになる、実家のようなお店でした。親っていつでも背中押してくれますもんね」
「店舗が2店しかなかった頃、名古屋にだってこんなヘンテコな小売店があるんだぜって誇らしい気分を感じてたように思います」
「高校時代、この世の終わりのような失恋を生まれて初めて味わって、フラッと立ち寄った町田の路面店のヴィレヴァンで、最初の1時間はぼんやり店内を眺め、2時間目からは新しい知らないジャンル……表紙が光るペーパーブランクスのノートや見たことない砂時計、そして、恋愛漫画に貼られた、”きっとあなたは大丈夫”の手書きポップに少しずつじわじわと元気が出て、お店を出る時には元気が出て背中を押された。ヴィレヴァンは幸せな思い出しかない」
「最近は行っても買うものがない感じだったのですが…なんか買う!」
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ リュウ)