【スマートホーム入門ガイド・5】スマートホームを検討する際、多くの人が「初期費用の高さ」や「コストパフォーマンスの不明確さ」を不安に感じている。実際にスマートホームの導入を考える際に、費用に関する課題が大きな障壁となっているのは事実だ。しかし、最近ではリーズナブルな商品や節電によるコスト削減効果も注目されつつある。今回は、スマートホーム導入にかかる費用や、将来的な節約効果について詳しく解説し、普及の可能性について考えていく。
その他の画像はこちら●スマートホーム導入にかかる費用はいくらくらい?
「スマートホームは大きな工事が必要で、最初から十数万の費用がかかる」と思っている人もいるのではないだろうか。スマートホームサービスを提供するアクセルラボでは、2024年4月に「スマートホームに関する実態調査」を行い、一般消費者618人から回答を得た。調査の中で、スマートホーム導入層に対し、「スマートホーム導入時の初期費用」について質問した。すると、「5千円〜1万円」のユーザーが最も多い結果となった。
実際にECサイトを見てみると、例えば、Amazonが提供する人気のスマートスピーカーは「Alexa」は、6000円ほどの価格。テレビやエアコンなどの家電製品を操作できる赤外線リモコンも数千円ほどで購入できるので、家電の音声操作を目的にセットで買っても約1万円程度だ。
また、スマートホームにはECサイトで購入できる買い切りのものから、ソニーが提供する「MANOMA」のように機器をレンタルし、月額費用を払うサービスもある。導入後の効果に不安がある人は、サブスクリプション契約にして、期待に沿わなかった場合は手放すという選択肢も検討できるだろう。
自宅のスマートホーム構築のために、最初から高価なものを買う必要は全くない。出せる金額の範囲で導入することをおすすめしたい。
●スマートホームは節約になるのか 光熱費への影響
スマートホームの導入は、生活の利便性を向上させるだけでなく、節電で家計の節約にもつながる。例えば、温度センサーを利用することで、室温に応じてエアコンが自動的に調整され、電力消費を抑えることができる。もし家電を消し忘れても、外出中にスマホを使った遠隔操作で電源を切ることができ、無駄なエネルギー消費を抑えられる点も大きなメリットだ。
パナソニックの調査によれば、外気温が35度以上の場合は冷房をつけっぱなしにした方が効率的だが、30度程度の時には「こまめに消す」ほうが光熱費の節約につながるという。
スマートホームは、手軽に節電・節約ができる優れた手段だ。小さな積み重ねが、長期的なコスト削減に寄与するだろう。
●今後爆発的に普及? 世界標準の通信規格「Matter」とは
スマートホームに興味を持ってくれた人に、スマートホームの未来についても知ってもらいたい。少し専門的な話になるが、今、スマートホーム業界では世界標準規格「Matter(マター)」の開発が急速に進んでいる。Matterとは、異なるメーカー間のスマートデバイスがシームレスに連携できるようにするための共通規格である。
これまでのスマートホームの課題は、メーカーごとに異なる仕様やプロトコルが存在し、各デバイスが連携できなかった点にある。例えば、家電製品ごとに異なるアプリを使用しなければならなかったり、複数のシステムで個別に設定しなければならなかったりした。それを解決するのがMatterである。
この開発には、Google、Amazon、Appleといった巨大IT企業や、サムスンなどの世界的な家電企業が積極的に参加している。日本企業も例外ではなく、老舗鍵メーカーの美和ロックは、アクセルラボと協力し、Matterに対応したスマートロックの開発に取り組んでいる。
今、消費者がデジタルデバイスを選ぶ際、Wi-FiやBluetoothのマークを確認して購入しているが、今後スマートホームデバイスを選ぶ際はMatterのマークを確認することが基準となるだろう。「Matter対応の製品だったら他のメーカーのデバイスとも連携できるから買ってみよう」と、Matterはスマートホーム製品選びの重要な要素になると考えられる。
Matterの普及が進むことで、スマートホームはさらに便利で使いやすいものとなり、普及が大きく前進するだろう。(アクセルラボ・青木継孝)