温帯で生育する常緑植物の葉が冬になっても枯れない仕組みを、京都大生態学研究センターの研究グループが解明した。日の短い秋や冬は葉に栄養をため、春になって花や実に移した後に枯れるという。論文は英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。
温帯には常緑植物と落葉植物が生育している。落葉植物は光合成機能の低下する冬に葉が枯れ、幹や根に栄養を貯蔵することは知られているが、常緑植物の葉が枯れずに残る仕組みは分かっていなかった。
研究グループは2017年10月から4年半、兵庫県多可町に自生するアブラナ科の常緑植物「ハクサンハタザオ」の葉3334枚に生じる変化を調査。太陽が出ている時間が長い3〜9月は光合成機能の低下した葉が老化して平均2カ月で枯れる一方、10月〜翌年2月は老化が停止して最長8カ月後に枯れたことが判明した。越冬した葉が枯れる時期は、花や実をつける春に集中した。
茎を切って花や実がつかないようにした場合とそれ以外とを比較したところ、葉が枯れるまでの期間は茎を切った方が1〜2カ月長かった。これにより、葉を枯らすことで葉の中に貯蔵した窒素やリンといった栄養分を花や種子に送り込んでいることが分かった。
ハクサンハタザオの遺伝子解析でも、冬に老化が停止することや、栄養分を花や実に送ることが確認された。同センターの工藤洋教授(分子生態学)は「温帯の植物が気候に適応する仕組みが分かり、気候変動による植物への影響分析に役立つ」と話している。