日本のファンの目の前で、富士山が描かれたトロフィーを高く掲げたバレンティーノ・ロッシの笑顔が弾けた。9月15日、静岡県小山町の富士スピードウェイで行われたWEC世界耐久選手権第7戦『富士6時間耐久レース』の決勝後、ロッシの姿は表彰台の上にあった。
二輪レース界のレジェンドで現在はBMWのワークスドライバーのひとりである45歳のイタリア人は、今季2024年からWECの新カテゴリーとして誕生したLMGT3クラスに参戦。ベルギーの“名門”チームWRTの下、ゼッケンナンバー『46』を掲げるBMW M4 GT3をマキシム・マルタン、アハマド・アル・ハーティとシェアしている。
2週間前にアメリカ、テキサス州のオースティンで行われた『ローンスター・ル・マン』で、表彰台を争う位置を走りながらレースの終盤に発生したマシントラブルのため、無念のリタイアを喫したロッシ組46号車。迎えた日本ラウンドでは姉妹車の31号車とともに、これまでの6戦すべてでクリアしてきた予選トップ10入りを逃す厳しい展開に陥る。
しかし、46号車のトリオは前戦の雪辱を果たすべく、決勝で力強いペースを発揮した。最初の2スティントを担当したブロンズドライバーのアル・ハーティが12番手から5番手に順位を上げると、3時間目にバトンを受けたロッシも、ライバルで選手権をリードする2台のポルシェ911 GT3 R(マンタイEMAとマンタイ・ピュアレクシング)や、僚友の31号車BMWなどを次々にパスしてみせた。
その後、レース後半にマルタン、ロッシ、マルタンと繋いだ46号車は、フィニッシュまで残り16分となったところで59号車マクラーレン720S GT3エボ(ユナイテッド・オートスポーツ)をかわして3番手に浮上。そのまま54号車フェラーリ296 GT3(ビスタAFコルセ)、マンタイの92号車ポルシェに次ぐクラス3位でチェッカーを受けている。
「僕たちはとてもハッピーだ!」と語るのは、3位表彰台を獲得した“ドクター”ロッシ。
「2週間前のオースティンでのリタイアで沈んでいた気持ちが一気に晴れていくようだ。このレースはとてもハードだったが、アハマド(・アル・ハーティ)、マキシム(・マルタン)、そして僕、ドライバー全員がそれぞれのスティントで素晴らしい仕事をし、チームもふたたび完璧な戦略とピットストップで支えてくれた」
「(姉妹車に次ぐ2位となった第2戦イモラ以来)今シーズン2度目の表彰台を獲得することができ、とても嬉しく思っている」
チームWRTのボスであるヴァンサン・ボッセは、「我々のLMGT3カーは最速のクルマではなかったが、戦略面でちょっとした魔法をかけることができた」と成功の理由を語った。
「私たちのドライバーとチームは素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。このレースウイークが始まった頃、こうして表彰台に立つことができるとは夢にも思っていなかった」