鳥羽シェフの「全店舗、赤ちゃん子連れOK」宣言に疑問。子連れOKな一流レストランには“条件”がある

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2024年09月16日 09:00  女子SPA!

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子連れで高級レストランに食事に行くことは、歓迎されることなのでしょうか?(写真はイメージ)
※編集部注…本記事の企画発案、編集、タイトル作成は編集部によるものであり、筆者によるものではありません

「子連れOK」と言うけれど……。

 こんにちは、食文化研究家のスギアカツキです。『食は人生を幸せにする』をモットーに、「一生モノの能力を養う食育」についてさまざまな実践法を提案しています。

 広末涼子さんの不倫相手として世間を大きく騒がせた料理人と言えば、鳥羽周作シェフ。2024年7月、自身のX上において、「なんか今更だけどうちのグループ全店舗は赤ちゃん子供オッケーにすることにします」と、手掛けるレストラン全店舗で乳幼児を歓迎する呼びかけを発信し賛否両論を生みました。

 きっかけは、お客に「レストランに赤ちゃんダメですよねって聞かれて」とのこと。これを機に鳥羽氏自身の考えを改めて表明したかったようです。

 この話題をきっかけに、いろいろ気になりはじめたという人は少なくないでしょう。そもそも高級レストランに乳幼児を連れて食事に行くことは、マナーの良いことなのか? 食事を楽しめるのか? モヤモヤしてしまいますよね。

 そこで今回は、国内外の食文化やレストラン事情をリサーチしている食の専門家として、子連れ会食の経験を重ねている母親の立場として、少しでも安心につながる話ができればと考えました。

 そして子連れでレストラン予約を検討している方々にとって少しでも参考になればうれしく思います。

◆「子連れOK」発言は“ヒーロー発言”にはならない

 はじめに鳥羽シェフの発言「赤ちゃん子どもオッケー」について、冷静に考えてみましょう。結論から言いますと、言うのは簡単であるということ。

 発言そのものが店の評価を押し上げたり、子育てママやパパを救うような実効性があるかはまったく別の問題です。ですから、今回の鳥羽氏のX上での発言だけで賛否を判断するには困難。そしてもちろんヒーロー扱いするのは過剰であり、本人もそれをねらって言ったわけではないと信じたいのです。

 ちなみに子連れレストランでの食事について、よく言われる定説イメージがあります。それは、「日本は子連れに厳しいけれど、海外は寛容である」というもの。

 実はこう言い切れるような時代ではありません。日本でも子連れ客に手厚い高級レストランはたくさん存在しますし、海外であっても子連れNGの店は多くあります。それでは、子連れ客が安心して食事を楽しめるレストランはどのような店のことを言うのでしょうか?

◆子連れOKな一流レストランの条件とは?

 例えば、子連れOKのレストランについて、サービス、メニュー、設備などの細かいところをチェックしてみましょう。

 乳児のおむつ交換、子どもが快適に食事ができるテーブルやイス、子どもが食事を楽しめるメニューや配慮など、どこまで具体的に用意されているでしょうか? これらが全くない、ほとんどそろっていないのに、子連れOKですと言われても、お客は快適な時間を過ごすことはできないでしょう。

 つまり今回の鳥羽氏の発言は、レストラン経営・運営の視点を持つプロ発言というよりは、一般人へのリップサービス的な要素が強かったのかなと推測しています。そしてこの発言をどう感じるかは、受け取る人の状況や考え方によって違って当然です。

 高級レストランではありませんが、私はある日、東京の老舗和菓子店に子ども3人を連れて行きました。ここは目の前で好きな生菓子を作って食べさせてくれるサービスがあり、事前に店側と認識合わせをすることにしました。

 職人さんの話を聞けること、大声で騒ぐ性格ではないことを伝えつつ、和菓子や抹茶が初体験の子どもがいることなどを伝えました。お店は、和菓子のわかりやすい説明、苦味を甘くするような工夫などをしてくださり、子ども達にとって心に残る素敵な体験になりました。

 このようにあらかじめ店と事前確認をすることは、店内で気持ちよく過ごすために重要なステップになるでしょう。つまり子連れに優しいレストランの条件とは、中身がしっかり伴っていることだと、経験を通して断言できます。

◆高級レストランで食事ができる子どもが優秀なわけではない

 ここで誤解がないように確認をしたいことがあります。それは、高級レストランでおとなしく食事をできる子どもや乳児が優秀であるというわけでは決してないということです。

 子どもの個性は多様であり、マナー習得などの成長のスピードも子どもによって異なります。ですから、他の子どもが高級レストランで食事を楽しんでいたとしても、自分の子どもも同様に幸せであるとは限りません。

 親の考えや価値観も同じではありませんから、まずは親の希望、子どもの特性や願望などを整理して、自分たちが高級レストランで安心して楽しめるかどうかを店に相談してみるのが賢明です。

 先日訪れたイギリスの有名ホテルのティールームには、子ども専用のメニューがあるだけではなく、食事中に楽しめるクイズやゲームブックが用意されていました。

 乳児がくつろげるソファ、心地よい音楽、隣席との適度な距離、残った食べ物をテイクアウトに切り替えられるような柔軟対応など、子連れへの対応は一流そのものでした。お客が不安を抱えたまま遠慮をして食事をすることは、真の一流店は望んでいないはずです。

 ちなみにロンドンの超人気ステーキ専門店では、子ども専用のサイズやリーズナブルな料金設定が用意されていました。周りを見渡すと、おいしそうな肉料理に親子で熱狂するテーブルがちらほら。そんな光景さえも楽しい雰囲気に変えてしまう店側の対応力には驚きました。

◆周りの客の立場だったら、どうすべき?

 もう一つ考えてみたいのは、自分が親ではなく、周りの客である時です。隣で知らない子連れ親子が騒いでいる状況に遭遇したことをイメージしてみましょう。

 そのシーンが不快に感じる場合、過度な我慢をする必要はないと、私は考えます。その状況をすべて改善できるかは店次第にはなりますが、席移動などの相談をすることは決しておかしなことではありません。どの客も平等に食事を楽しむことを望むのは当然です。

 ここでも客の多種多様な状況やニーズに対応できるかは、店の対応能力やノウハウで決まります。つまり今回の鳥羽氏の宣言は、子連れではない人々にも大きく関係するテーマですから、あえて公に宣言をするのであれば、店側の具体的な対策は並行して準備し、説明することが、お客の安心や信頼につながるのではないでしょうか。

 最後に、どんなレストランであっても、子どもが笑顔で食事を楽しめることは健やかな成長・食育につながります。多くの人々に考えるきっかけを与えてくれたという点で、鳥羽シェフの発信は有意義だったのかもしれません。

<文・撮影/食文化研究家 スギアカツキ>

【スギアカツキ】
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12

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