子宮頸(けい)がんを引き起こすヒトパピローマウイルス(HPV)を巡り、早稲田大などの研究グループは17日までに、がんの前段階の病変がある患者の尿から、ウイルスのタンパク質を検出したと発表した。尿中にはごく微量しか含まれず、これまで検出が困難だった。同グループは「尿を用いた初期検診の可能性が示された」としている。
HPVに含まれる特定のタンパク質は、子宮頸がんを引き起こす原因物質として働く。早大の伊藤悦朗教授らは、このタンパク質を高感度で検出する測定法を開発。がん化のリスクが高いHPV16型では、市販の検査キットと比べて、約100倍の高感度の検出に成功したという。
研究グループは、2019〜21年に金沢医科大学病院を受診し、がんになる前段階の「子宮頸部異形成」と診断された患者45人の尿を収集。測定法を用いて、HPVに含まれるタンパク質の検出を進めた結果、病変進行が軽度の患者の80%、中等度は71%、高度では38%から、標的としたタンパク質を確認した。ただ、がんに近づくにつれてタンパク質が減少するメカニズムは不明で、研究グループは「今後の研究課題」としている。
厚生労働省によると、国内では年間約1万1000人の女性が子宮頸がんに罹患(りかん)し、約2900人が死亡。検診は予防に有効だが、多くの女性は羞恥心などで受診を望まないとされる。22年の国民生活基礎調査によると、20〜69歳の受診率は約4割だった。
伊藤教授は「将来的には、自身で採尿した尿を医療機関などに送付して、診断を受けられる道が開かれた。検診のハードルが下がれば、子宮頸がん撲滅の糸口になる」と話している。