幼稚園に通う娘さんについて、お隣さんから「言うか悩んだけど…」と伝えられた言葉が、娘の人生を変えることに。突然のアドバイスが、Threadsで193万回以上表示され、多くの人が関心を寄せました。
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投稿主のMakiさん(@mini_maki_0707)に詳しく話を聞きました。
きっかけは引っ越し時に…
長女さんが幼稚園の年中から年長になるタイミングで引っ越しが決まったMakiさん一家。それまで家族でお世話になったお隣さんにお別れのご挨拶に行くと、お隣さんから「言うか悩んだんだけどね。長女ちゃん、まだちょっとうまく発音できない音があるじゃない?」と聞かれたそう。
「そうなんですよ〜舌足らずなのかなって。もう少し大きくなったら治るかな〜って様子を見てるんですけど」と答えると、「もしかするとそれね、成長したからと言って治るものじゃないかもしれないの。1度どこか相談できるところに聞いてみるといいかも」とお隣さん。
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そのアドバイスを素直に受け止めたMakiさんは、旦那さんに相談し話し合った結果、幼稚園の間は様子を見ることに。
小学校に入学しても相変わらず「さ行」と「た行」の発音が苦手なままだった長女さんが、学校から「言葉の教室」の案内をもらってきたのをきっかけに、1年生の夏休みに予約が取れて、相談に行くことになりました。
そこで言われたのは「恐らく構音障害で、自然に治ることはほぼありません。訓練が必要です」というショッキングな一言。長女さんは、例えば「なつ」と言おうとすると「なちゅ」になってしまっており、「これは訓練したからと言って100%治るとは言えない」とも言われたそうです。
そこで、週に1回、電車とバスを乗り継ぎ、言葉の教室が開かれている別の小学校に通う生活がスタートしました。
必ずしも治るものではない、と言われ…
――お隣さんとは何年くらいの間交流を?
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約4年です。年代は当時60代で、現在70代の女性です。私の両親と同世代になります。普段から親しくしていただいており、お会いする度に娘に話しかけてくださる方でしたので、娘が話せるようになった3歳頃からずっと気にかけてくださっていたのではないかと思います。
――子どもたちの言語の発達は本当に個人差が大きいと思いますが、長女さんは?
長女は2歳から単語を発し、3歳で少しコミュニケーションが取れるくらいでした。よそのお子さんと比べると遅かったかもしれませんが、成長のスピードは子供によってまちまちなので、さほど心配はしていませんでした。
――週1回の「言葉の教室」通級中、自宅でも練習や取り組みを?
担当の先生から宿題のような形で家でも練習をするように指導がありましたので、その課題は取り組んでいましたが、その他私から何か教えることはしませんでした。やはりプロの先生にお任せするのが1番だと考えたからです。また、私が何か教えることで、長女のやる気がなくなっても困ると考えました。
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――通級中、長女さんはどんな様子でしたか?
先生がお菓子(ラムネ等)を使って訓練をしてくださっていたので、訓練の時間は嫌ではなかったようです。ただ、学校の授業を抜けて通っていましたので、他のお友達と違う行動をしなければならないことは嫌だったようです。
現在、高校生3年生になった娘から当時の話が出ることはなく、もちろん通ったことは覚えているのですが、日常生活で思い出すことはないようです。
――通級中もとても心配だったでしょうし、共に頑張り、サポートしながら通ってらっしゃったのだろうなと想像いたします。
通級中もほとんど改善が見られず、担当の先生からも「必ずしも治るものではない」と言われていたので、手術も必要だと思っていたのもあって、とても不安でした。
1年と少し経った頃、急に発音がクリアになり出しました。受け持ちの先生も「こんなに早く特訓の成果が表れるなんて」と驚かれ、「もしかしたら卒業できるかもしれない」と思い嬉しかった記憶があります。3年生に上がる頃には言葉の教室を卒業できて、お友達に指摘される経験もほとんどなく済みました。
通わせてもらったのが公立の小学校で、交通費も自治体負担で細やかな指導を無料で受けさせてもらえたこともありがたかったです。
成長すれば治る?→それ違うかも
――その後、お隣さんとの交流は?
引っ越し後も時々子どもたちの写真をLINEで送ったり、お隣さんからはお電話や子どもたちの誕生日にはプレゼントを送ってくださったりと今現在も交流は続いています。
――今回の投稿に気づきをもらった方も多くいたのではないかと。
少しでも不安があったら第三者機関や学校等に早く相談してみることをおすすめしたい思いがあり、今回の投稿をしました。私のように「成長すれば治るもの」とお考えの方がいらしたら、「それは違うかもしれません」ということをお伝えしたかったです。
――子どもの発達に関してはデリケートな部分も多く、肉親でも伝えづらい一面も。
親御さんからのコメントが多かったのですが、中にはお孫さんを持つ祖父母であろう方からのコメントもありました。ただ、「構音障害かな?」と思ったとしても、やはり伝えるのはなかなか難しいようです。
私は両親や義両親との関係は良好ですが、もし両親や義両親から言われたとしたら、ショックを受けたかもしれません。
ーーやはり相手が誰かというのも大事でしたか?
私のように「信頼関係が築けていたお隣さん」という、血縁関係のない方に言っていただけたことは幸運だったとしか言いようがありません。
こういうことを指摘するのって、すごく勇気がいったと思うんです。でもおかげで娘は、お友達にからかわれたりせず 小学校生活を送ることができました。
私の投稿を見せて、「こういう例もあるみたいだよ」と伝えることも、方法の一つにしていただけたらと思います。早ければ早いほど治る可能性があるそうです。どなたかの背中を押すことができたとしたら、嬉しく思います。
ちゃんと発音できない「構音障害」とは?
Makiさんの長女さんが診断された「構音障害」。ことばのオンライン相談室を運営している「ことばのサポートネット」によると、「発音の獲得がゆっくりで、“赤ちゃんことば”が長引く場合や発音に独特の癖が見られる場合などは『構音障害』の可能性があります。機能性構音障害は、発達などに問題がなくても、どなたにでも起こり得ます。稀に、病気が隠れている場合もあります。構音障害の多くは言語療法で改善することができます」とのこと。
ことばサポートネットさんに詳しくお話を聞きました。
不安に思ったらまずは言語聴覚士に相談を
――子どもの発音について、少しでも心配事があれば早めに相談したほうが良いのでしょうか?
「保護者の方が心配に思っている時には何歳であっても、まずはご相談ください」とご案内しています。発達の様子はお一人お一人違うので「〇歳なら〇〇ができなくては」とは言えない部分が多いです。
早すぎるということは決してありません。また、中には病気が隠れている場合もありますので、不安に思ったらまずは言語聴覚士のもとを訪ねていただければと思います。状態にもよりますが、年長になる前までにはご相談いただくことをお勧めしています。
――どういったきっかけが多いですか?
自治体の発達相談や健診でのご案内、医療機関などの言語聴覚士からのご紹介が多いです。子育て支援センターの先生から当法人への問い合わせ、園や学校の先生からの助言を受けてご連絡をくださる方もいらっしゃいます。
小学校中学年以上になると、ご本人からの訴えを受けて保護者の方が相談先を探してくださりご連絡をいただく場合が多いです。
――「発音練習」とは具体的にどういった練習を?
まずは検査を行って、上手に発音できている音と、不明瞭になっている音を明らかにします。そして、不明瞭になっている音がどのように誤っているのかを確認します。
例えば、“「す」が「しゅ」になる“というものがあります。原因として「す」をいうときの上顎と舌の位置関係(構音点と呼ばれます)がずれてしまっている場合があります(※人によって状態が違うのですべての方に当てはまるわけではありません)。
そのような場合には、正しい位置でまずは子音部分、すなわちローマ字で書くと“su”の“s”にあたる部分の音を作り、そこに母音を付けることで「す」の音を作ります。
――1つずつ音を作ることからスタートするのですね。
ただ、「す」と発音できたからと言ってすぐに「スイカを食べよう」と言葉を話す中で使えるわけではありません。そのため、一つの音をいう練習、意味のない音の並びの中で使う練習、単語の中で使う練習…と、段階を踏みながら日常生活で使うための練習を行っていきます。
これは一例ですが、同じ“「す」が言えない”状況であっても、音の誤りの背景はそれぞれ異なります。ある子の練習方法が別の子に当てはまるとは限らず、お一人お一人に合わせてプログラムを作成して取り組んでいきます。
――医療機関への受診を勧めることも?
「練習のみで改善が可能な構音障害」と「医療機関での治療が必要な構音障害」があります。当法人の場合は、初回の相談時に医療機関での治療が必要と思われる場合には受診をお勧めしています。また、かかりつけの医療機関と連携を取りながら、当法人で発音の練習をされている方もいらっしゃいます。
「訓練で改善できる構音障害」と「手術で改善できる構音障害」は違いますので、まずはそれを判断するためにも言語聴覚士にご相談いただければと思います。言語聴覚士は、病院ですとリハビリテーション科や口腔外科、耳鼻科などに所属していることが多く、地域の子育て相談を担っている保健所や療育センターにも所属しています。そこで手術が必要となった場合には手術可能な医療機関へと繋いでくださると思います。
放置すれば、「からかい」につながることも
――こちらでは初回20分無料のオンライン相談を行ってらっしゃるのですね。
ちょっとした心配事でもお気軽に尋ねていただけるよう、ことばに関するあらゆるご相談を随時受付中です。
初回相談では言語聴覚士がビデオ通話による問診・診療を行い、必要に応じて支援先やご家庭でできることを案内しています。必要性がある場合は、当法人での発音練習(有料)や継続相談の利用が可能です。
――まずは相談してみることが大切なのですね。
発音が未熟でも、明瞭でなくとも、話の内容には価値があり、音の誤りや歪みは咎められるべきものではありません。一方で、発音の問題はただ言いたいことがスムーズに伝わらないというだけではなく、「からかいやいじめに発展する」「本人が伝えることを諦めてしまう」「自分に自信がなくなる」などの問題につながる可能性があります。
ことばサポートネットの目標は、発音の心配事に言語聴覚士がいつでも寄り添える体制を作ることです。どこにいても、言語聴覚士による専門的な援助が受けられる体制づくりを目指し、オンラインで言語療法を提供しているほか、社会への啓蒙活動にも力を入れています。
必要な方が、適切に言語聴覚士等の専門家につながることのできる体制が整うことで、発音のことで辛い思いをしたり、病気を見逃されたり、大人になるまで悩んでいたりする方々を減らすことができるのではないかと考えています。
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この投稿に、
「うちの息子も同じでした。発音がケンタッキーと言ってるつもりが、えっ、洗濯機?みたいな。保育園の最後の年に園にきた専門の先生でやっとわかりました」
「小学生になった息子が指摘されています…気にした方がいいんだと思いました」
といった子育て中だと思われる方々からのコメントのほか、
「小さいうちの方が本人が生きやすくなります。色んな機関、専門家を頼るのはいい結果を生む事が多いですよ!」
「未就学児の言葉の訓練を行っていました。他者から指摘されると、怒ったり、認められずに、相談機関に繋がらないことがあります。お隣さんからのお話を受け入れて、相談されたこと素晴らしいと思います」
などアドバイスを受け止め行動したMakiさん親子への称賛の声も届いています。
我が子のこと、とりわけ発達のこととなるとセンシティブな部分であり、特に近しい人からの言葉はなかなか聞き入れづらい部分があるかもしれません。大切なことを引越しの日に伝えてくれたお隣さん、その言葉をきっかけにその後も気にかけ、専門機関に相談したMakiさんお二人の関係性と行動が、現在長女さんが困ることなく生活できていることに繋がっているのだなと感じました。
また、ことばの困り事に悩むすべての方々に寄り添うため活動されている「ことばサポートネット」といった団体があるということを知っておくだけでも心強いものです。子どもの発語や発音に不安のある方、大人の方でもご自身やご家族の発音に悩みのある方など、ぜひ一度相談してみてはいかがでしょうか。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・太田 真弓)