自民党総裁選(27日投開票)で最大の焦点となった派閥裏金事件に関し、9候補は「裏金議員」の支持も得る思惑から、軒並み真相究明には後ろ向きだ。過去にふたをしたまま、今後の対策として「政策活動費の廃止」などを唱えるが、実効性は不透明。早期の衆院解散での「けじめ」を強調する声もあり、一刻も早い幕引きを期待する本音が透ける。
「総裁が代わったから全てひっくり返すことは独裁だ」。高市早苗経済安全保障担当相(63)は再調査などについて問われるたび、強く反論している。
各候補と同様、「新事実」が出た場合は再調査を検討すると説明。ただ、堀井学・前衆院議員(自民離党)の公職選挙法違反事件で、党の調査でなかったとされた裏金の違法使用の疑いが浮上したことには、「法律が別だ」と言い切った。
高市氏以外の候補も再調査には消極的。決選投票にもつれることが確実視される中、最大派閥で裏金事件の震源地となった安倍派議員の動向に神経を使っているためだ。特に高市氏は推薦人20人のうち「裏金議員」が13人と全候補で最も多い。
石破茂元幹事長(67)は勇ましい発言を後退させた。当初、「裏金議員」の選挙での公認について「議論は徹底的に行われるべきだ」と非公認の可能性も示唆していたが、最近は「当該議員だけではなく、党の責任者(の総裁)として説明するのが責任」と曖昧な発言に終始。上川陽子外相(71)は「(選挙区)支部長は、次の選挙で公認するルールにのっとっていく」と語る。
多くの候補が主張するのは、先の通常国会で成立した改正政治資金規正法の枠組みの微修正だ。茂木敏充幹事長(68)は政策活動費の廃止を提唱。小泉進次郎元環境相(43)も同調し、小林鷹之前経済安保担当相(49)は「毎年公開できなければ廃止」を唱えた。
河野太郎デジタル相(61)と加藤勝信元官房長官(68)は政治資金収支報告書の不記載額の「国庫返納」を求める。林芳正官房長官(63)は米国の連邦選挙委員会(FEC)をモデルとする第三者機関による政治資金監視機能の強化を掲げた。
小泉氏は早期の衆院解散で「国民の信を問う」ことでけじめをつける考えを示すが、衆院選では裏金問題が改めて争点となりそうだ。
各候補とも先の国会での規正法改正議論の最中には、ほとんど沈黙を決め込んでいた。「結局、総裁選をしのぐためだけの得点稼ぎに終始している。選挙が終わればうやむやになるのではないか」。政府関係者は冷ややかに語った。