「お前は世間とズレすぎている!」と父親に言い渡される、財閥のお嬢様。彼女が社会経験のため転校した先でのカルチャーショックを描いた漫画『女子校育ちお嬢様が初めて共学へ行く話』がXで3.4万のいいねを集めている。
(参考:『女子校育ちお嬢様が初めて共学へ行く話』(夢ヶ原さんは夢見がち!)を読む)
本作は連載作『夢ヶ原さんは夢見がち!』の1エピソード。主人公の風紀委員・朝切と、あらぬ妄想を漫画にする女子生徒・夢ヶ原を中心にしたラブコメ作品だ。作者は砂履シンシャさん(@shisenraran)。ギャップがユニークな本作の制作裏、そして驚きの3本複数連載をこなす秘訣とは。(小池直也)
――多くのいいねが集まりましたが、これについてどう思いますか。
砂履シンシャ(以下、砂履):このエピソードは連載中盤の回なんです。話数を重ねるほど新規の読者さんは入りづらくて数字が伸びない、という印象がありましたが、この回は1話目のような構成にしたこともあり広く読まれたのかなと。
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――お嬢様キャラ・輝光院さんを登場させたのはなぜ?
砂履:単純にお嬢様口調のキャラが好きなんですよ(笑)。いかにも堅そうな、お嬢様口調の子が出てきたら夢ヶ原さんはどう反応するかなと思い登場させました。明確なモデルはいません。自分が触れてきたサブカルのコンテンツの影響が自然と出ているかと思います。
――確かにわちゃわちゃとした掛け合いは見どころでした。
砂履:普通はえっちな漫画を描いているなんてことは秘密にしがちですが、その辺の感覚が夢ヶ原さんはバグっているんです。本来お堅そうなお嬢様に見せてはいけないものも彼女にとっては自己表現の一部。
夢ヶ原さんのバグった感覚を既に知っている風紀委員の主人公・朝切は輝光院さんと夢ヶ原さんが事故ってしまうんじゃないかと肝を冷やしている。そういう掛け合いは描きたかったですね。
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――キャラデザインはどのように?
砂履:常にギャップになる要素を考えています。特に関係性によるギャップを大事にしています。ボケがいたらツッコミがいるといったキャラの関係性を必ず作るようにします。
本作は風紀委員が登場することが先に決まっていて、それに対して逆の要素を持つキャラを、と考えたのが夢ヶ原さんでした。風紀委員の逆の属性でパッと浮かぶのは「ギャル」なのですが、でも「風紀委員vsギャル」的な話はもう飽和しているのかなと思って。だからギャルではなく見た目は普通の女の子だけど、エロ漫画を持ち込む子がいいかなと。
でもそれだと弱いので「エロ漫画を描いている子」、さらにインパクトを求めて「自分自身を題材にしたエロ漫画を描いている子」と変化していきました。いわゆる「夢女(夢女子)」と呼ばれる妄想で恋をする属性の行き過ぎた人が、“夢”ヶ原さんです。
――砂履さんは『夢ヶ原さんは夢見がち!』以外にも『オタ婚のススメ!』、『同じギルメンの声が好き』と3作を並行して連載されています。どうしたらそれが可能になるのでしょう?
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砂履:3本連載してると、よく周りから心配されます。普通に忙しくはあるのですが、会社員時代に制作進行的な仕事を扱っていたこともあり、複数の仕事をどういう順序で対処したらいいかを考えるのは得意です。工程をイメージして見通しを立てて、本当に間に合わない時は早めに連絡したり。
漫画家のなかで「夏休みの宿題をいつやっていたかで、締切を守るか否かが決まる」と言われるのですが、私は開始1週間で終わらせるタイプでした。そういう感じでやらなきゃいけないことをさっさと終わらせるのは得意な方です。
――生活リズム的には大変ではないですか?
砂履:夜から朝までの制作は絶対にしません。会社を辞めて漫画家になった時に「生活のペースは崩さないようにしよう」と決めて以来、今に至るまで普通の会社員と同じような時間に仕事しています。一度オフィスで働いて、自分の向き不向きが理解できたのは大きいですね。
今は向いていると思うことだけやっています。特に接客は絶望的にできないので(笑)。人とたくさん接するとそのたび色々考え過ぎてしまう悪癖があって、負荷がかかって辛いんですよね。ですが、この悪癖は漫画制作の場合は有利に働きます。人の感情をあれこれ考える作業こそ漫画においては一番必要な力になるからです。
考えた感情を人に伝わりやすくなるように整理して、そこに絵を載せたら漫画の完成です。人と接する仕事の時は悪く出た癖と、自分がもともと好きだった絵を描くことが両方フルにつかえる漫画家という職業は自分に向いてるなと思っています。
――今後の展望もあればお願いします。
砂履:まず『夢ヶ原さんは夢見がち!』はキャラクターがわちゃわちゃ楽しくするなかで、最終的に朝切と夢ケ原さんの関係性の発展を描いていきたいですね。
また今は現代を舞台にした男女のラブコメを軸に描いていますが、最近はファンタジーを描きたい気持ちも出てきました。といっても商業デビュー前はファンタジーしか描いていなかったので、初心に戻る感じなのかもしれません。今のスキルで読みやすく落とし込んだものが作れたらなと思っております。
(小池直也)
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