ダイソンの新製品はまさかの「ヘッドフォン」 空気清浄機能を省いた「Dyson OnTrac」を試してみた

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2024年09月20日 13:51  ITmedia PC USER

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ダイソン創業者ジェームズ・ダイソン氏の長男で、チーフエンジニアでもあるジェイク・ダイソン氏

 ダイソンは9月19日、ノイズキャンセリング機能を備えたワイヤレスヘッドフォン「Dyson OnTracヘッドホン」を日本で発売した。直販サイトでの価格は7万4990円(税込み、以下同)となっている。


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 まず同日から、ESTNATION(エストネーション)の全店舗、ビームス 原宿(東京都渋谷区)、ビームス メン 渋谷(同)、GR8(同)、SELECT by BAYCREW'S(東京都港区)において期間限定の先行販売が始まっており、10月18日からは家電量販店でも順次販売を開始する予定だ。


 本製品は7月にグローバル発表され、今回日本上陸を果たした格好だ。業界最高クラスをうたう最大40dBのノイズキャンセリング機能を搭載し、1日以上音楽を聞ける「最長55時間の音楽再生」も売りの1つとする他、オプションの付け替えでボディーカラーのカスタマイズもできる。


 「コードレス掃除機ならダイソン」というイメージが定着した今、ダイソンがオーディオ製品を手掛ける理由は何か? 9月19日、英Dyson(ダイソンの親会社)を創業したジェームズ・ダイソン氏の長男で、同社のチーフエンジニアでもあるジェイク・ダイソン氏が来日し、製品化に至った経緯や製品の特徴を語った。


●過去のダイソン製品の知見と努力が生かされたOnTrac


 ジェイク氏は、父であるジェームズ氏をこう語った。


 父はさまざまな発明をしてきた。家では皮むき機を(作り)、製品化に至ったものでは掃除機(がある)。私はその“発明力”を学び、既存商品よりもよい物を世に出したい、という父の考えを受け継いでいきたいと考える。


 そんな思いから誕生した数ある製品の1つが、LED照明「Dyson CSYS タスクライト」だ。LED照明の寿命を「飛躍的に延ばした」とするこの製品は、LEDランプから発せられる熱を放散させる「ヒートパイプテクノロジー」を搭載することで、明るさを37年以上も維持できるという。


 ジェイク氏は、これまでに「日本でのもの作りにも挑戦してきた」と振り返る。「ファッションデザイナーの三宅一生氏と六本木ヒルズで出会ったときには、彼にテクノロジーをアピールした」とジェイク氏。2002年には「サイクロン」「風」をテーマとしたファッションショーのステージデザインを依頼され、三宅氏も同じテーマで作品を制作した歴史もある。


 このようなテクノロジープロダクトのポートフォリオは、「その後も徐々に拡大した」とジェイク氏は語る。製品が機能するために空気が流れる仕組みは、掃除機だけでなく「空気清浄機」「ヘアケアカテゴリーの製品」にも受け継がれているそうだ。


 Dysonの開発チームは「なるべく静かな環境で、我々の製品を使っていただくことが重要だ」(ジェイク氏)という観点から、静音性にもこだわっている。「製品が使用されているときに、あまり音を立ててはいけない」ということだ。


 この要素を製品に落とし込むべく、「我々は過去30年間、どのようにして音を扱い、そして、騒音を低減させるのか、ということにも向き合ってきた」(ジェイク氏)。その結果、2023年に生まれたのが、同社初の“ウェアラブル”製品「Dyson Zone 空気清浄ヘッドホン」だ。


 本製品はアクティブノイズキャンセリング(ANC)機能付きヘッドフォンと空気清浄機を“一体化”したデバイスであり、大気汚染と騒音の2つの課題を解決するべく、ダイソンが6年の開発期間を経て製品化したという。


 イヤーカップ内のコンプレッサーが二重構造のフィルター(静電フィルター/カーボンフィルター)を通して外気を取り込み、浄化した気流を口元と鼻を覆うシールドへ届ける構造となっており、「身につけた人が、大気汚染を避けながら、音楽を聞ける」ようになった。


●Dyson OnTracの「聞き心地」「着け心地」は?


 Dyson ZoneのDNAを受け継いで誕生したのが、ダイソン初のオーディオ特化型製品であるOnTracだ。Dyson Zoneから空気清浄機能を省き、価格は7万4990円となる。Dyson Zoneの12万1000円から4万6010円の“値下げ”だ。


 8基のマイクで周囲の音を1秒間に38万4000回モニタリングしてノイズを除去するという仕組みは、Dyson Zoneと同じだ。「もしも(DysonZoneから)モーターを取り外したら、どれほど強力なノイズキャンセリングを提供できるのだろうか?」と開発チームが考えたことが、OnTracが誕生したきっかけだという。


 ダイソン製品を一括管理できるスマートフォン向け「My Dyson」アプリを利用すると、騒音のレベルを確認できる。耳元と周囲の音量をリアルタイムでモニタリングし、耳に有害な音量となっている場合には警告する機能もある。


 40mm/16Ωというスペックのネオジウムスピーカーと、高度なオーディオ信号処理を組み合わせることで、全ての音や言葉をより正確に再現できるという。可聴域を超えた6Hzから21kHzまでの周波数を再生でき、深いサブベースから高音まで忠実に再現できる。スピーカーが耳の方向へ13度傾いているため、音がよりダイレクトに耳へ届くとのことだ。


 短時間ではあるが、発表会では試聴する機会を得たので、所感をお伝えしたい。


 アプリで低音域をブーストすると、低音域から中音域にかけてやや聞こえやすくなる。エンハンスド(おまかせチューニング)に切り替えると、全体的にフラットにかつクリアなサウンドへと変化。さらに全体をフラットにするニュートラルというモードもあるが、楽曲によってはエンハンスドとの差がそれほど感じられない。


 ノイズキャンセリングをオンに切り替えて音楽を再生すると、周囲の音は聞こえづらくなる代わりに、一つひとつの音がより厚みを増したように聞こえ、没入感がさらに高まる。ノイズキャンセリングをオフにすると、イヤーカップにより外部の騒音が軽減されるが、ノイズキャンセリングオンの方が当然、没入感は高まり迫力も増す。


 イヤークッションにはマイクロファイバー生地を採用し、「どのような頭の形、どのような耳の形であれ、適合するようになっており、まるで耳が息をできるかのような快適性を保てる」(ジェイク氏)。数分ながら装着すると、約451gの重量を「軽い」と感じてしまうほど、付け心地がよく締め付けられている感はほとんどない。


 ボディーカラーは「CNCアルミニウム」「CNCコッパー」「セラミックシナバー」「CNCブラックニッケル」の4つで、いずれもジェイク氏とCMF(色・素材・仕上げ)チームがデザインしたという。別売オプションのアウターキャップとイヤークッション(それぞれ7色展開)を付け替えることで、外観をカスタマイズ可能だ。


●ジェイク氏がお勧めのコーデをアピール


 最後に、ジェイク氏に個別インタビューを行った。


 このOnTracについて、サウンド面と使い勝手や心地よさのどちらを追求したのかを聞いたところ、「50%/50%だ」との答えだった。単に音の良さを追求しただけではダメだし、見た目のデザインや使い勝手の良さも同じくらいに力を入れたということのようだ。


 また、アウターキャップやイヤークッションは交換できるのに、ヘッドバンドやヘッドパッドは決め打ちとなる点を確認したところ、「この部分にはケーブルや回路があるので交換が難しいんだ。でもカラーは選べるようにしたよ」と述べた。


 さらに「Dysonのエンジニアは点と点を線でつなげるのが得意だ。今回も、Dyson Zoneで搭載した耳の隣にある大型モーターのノイズを消し去ることができたんだから、その技術でノイキャンヘッドフォンを作ったらどうなるのだろう、というところからスタートしている」と自信を見せた。



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