宇宙航空研究開発機構(JAXA)は20日、昨年秋に打ち上げたX線天文衛星「XRISM(クリズム)」で、超新星爆発の残骸から100億度という超高温状態にある鉄イオンの観測に成功したと発表した。
クリズムは昨年9月に打ち上げられ、今月初めまで約7カ月間、初期の観測を実施。今月からは、各国の研究者から公募した観測を始めている。
JAXAなどは、地球から約16万光年離れた大マゼラン雲にある超新星残骸N132Dをクリズムで観測。X線の波長を詳しく調べられる分光観測装置で、超新星爆発で合成された鉄のイオンが出す特定波長のX線を詳しく測定し、その温度を調べた。その結果、衝撃波で鉄イオンが加熱され、摂氏100億度ほどの高温になっていることが分かった。
JAXA宇宙科学研究所の山口弘悦准教授は「高温の鉄は予想されていたが、従来の観測装置では100億度と1000万度の区別が付かなかった」と説明。「超新星爆発で放出される物質やエネルギーは次の星になり、われわれの生命にも関わってくる。観測により元素やエネルギーの循環過程が明らかになる」と話した。