世界的にドローンショーの需要が高まっている。米国の市場調査会社「QYResearch」が発表した「Drone Light Show-Global Market Share and Ranking, Overall Sales and Demand Forecast 2024-2030」によれば、世界のドローンライトショー市場規模は2023年に2億7333万ドル(約380億円)に達し、2030年には8億8816万ドル(約1250億円)になると予想されている。
国内でも、花火大会やスポーツなどの興行イベント、企業が主催する広告イベントとして、ドローンショーの開催が増えている。
開催の狙いは、集客の呼び水になることやマーケティングとして有効であることだという。実際、富士急ハイランドが2024年8月に実施した「開業60周年記念ドローンショー」では、観客数が前年同期比で140%を超えたそうだ。
ドローンショーでは何ができて、どんな効果が狙えるのか。国内ドローンショーにおいてナンバーワンの実績を持つドローンショー・ジャパン(金沢市)の山本雄貴社長に取材した。
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●予算は1000万円から、500機が主流
近年、多数のドローンが空に浮遊しながら絵や文字を描く様子がSNSで多く見られるようになった。そもそもドローンショーはどのようにつくられているのか。
「まず、ラフに沿って3DCGソフトでアニメーション(シーンごとの絵)を制作します。そのアニメーションをドローンが読み取れるデータに変換し、ショーが行われる現場で変換データを機体に送ります。機体がデータに沿って光りながら飛ぶことで、大きなひとつの絵や文字ができあがります」
空撮用のドローンはリモコンで操作するのが一般的だが、ドローンショー用の機体にはリモコンがない。本体に内蔵されたコンピュータに専用のデータを送信し、狙い通りの動きを実現している。
ドローンショー・ジャパンが請け負っている国内のドローンショーの主流は500機を使っていて、予算は500〜1000機で1000万〜3000万円が目安になるという。一般的に150メートル未満の高さでの実施となり、バッテリーの都合上、離陸や着陸も含めて15分以内となる。
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「500機を使えば、横幅100メートルほどの迫力のある絵をつくることが可能です。現状、15分で10〜20カットほどのシーンを再現できます」
●「集客」や「広告」に効果的
山本氏によれば、ドローンショーの使われ方は「興行」か「広告」のいずれかだという。同社では2年ほど前までは興行の依頼がほぼ100%を占めていたが、近年は興行と広告が半々の割合になってきている。4〜5年前と比べて予算が3分の1ほどに下がり、現実的な選択肢になってきている背景があるようだ。
「まだ実際にドローンショーを見たことがない人が多いので、ドローンショーを開催することで確実に集客効果が得られ、売り上げ増につながりやすい強みがあります。マーケティング施策として実施した場合は、広告がポジティブに働く点がメリットといえます」
例えば、富士急ハイランドでは、2024年8月に開業60周年を記念した「ドローン&花火ショー」を500機を使って実施した。開催したのは6日間で、4人まで利用できる2000円の有料観覧席を用意して満員御礼に。期間中の観客数は前年同期比で140%を超えた。好調を受けて、9月にも合計5日間のドローンショーの実施を決定した。
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八景島シーパラダイスでは、2023年のクリスマスと年末時期にナイトイベントとして、1000機を使ってドローンショーを実施した。観覧チケットは4300円〜(水族館の入場料金は別、Xmas特別公のみ6500円〜)で人気アニメの「ウルトラマン」「エヴァンゲリオン」「鬼滅の刃」とコラボ。満員御礼とまではいかずとも、興行として成り立つ兆しが見えたという。
また、2024年8月に江の島海水浴会場協同組合が開催した「江の島マイアミビーチショー夏花火」では、500機のドローンでクラゲやイルカの輪くぐりなどを表現。スポンサー企業であるアサヒビールの新商品「未来のレモンサワー」も再現し、来場した約5万6000人が鑑賞した。
以前は音声での企業紹介にとどまっていたが、ドローンショーを実施することで視覚的な広告が可能になった。このようにスポンサーメリットが明確になる点も、ドローンショーが選ばれる一因となるようだ。
「ドローンショーで表現する商品やロゴは、視聴者にとって通常の広告よりもユニークに映る点が魅力です。ショーの様子を写真や動画に撮影してSNSに投稿する方が多いのですが、それを見た方にも広告がポジティブに働く作用が見られます」
●中国が市場を牽引、世界記録は8100機
ドローンショー市場は世界的に拡大しており、グローバルで市場を牽引しているのは中国だという。調べてみると、中国のドローンショー市場はここ数年で急速に伸長しており、世界の約48%を占める規模になっている(QYResearch調べ)。9月4日には、中国の高巨創新(HIGH GREAT)社と日本のレッドクリフ社(港区)を含む世界5カ国のドローンショー企業が協業して、ドローンショーのギネス世界記録(以下、世界記録)を達成している。
世界記録に認定されたのはドローンショーで描く「ディスプレイの大きさ」と「ドローンの同時飛行数」だ。前者は7998の機体を使って約155(幅)×約85(高さ)メートルのディスプレイを描いた。後者は8100機のドローンを使って約15分間のショーを実施した。
「ドローンショーにおける新たな技術開発でいえば、欧米企業が強いのですが、中国企業は最先端の技術を素早くキャッチアップして、同じものをつくり出す能力が高いですね。ドローンショー市場を牽引しているのは中国で、単純に人口が多いので連日ショーを開催しても話題になるのだと思います」
先行する中国市場と日本を比較すると、日本のドローンショーは規模が小さく、中国を追っているような状況だ。ただ、日本がそのレベルに追いつくことは不可能ではないと山本氏は話す。
「規模の違いにおける一番の要因として、中国と日本では電波法という法律の違いがあり、現状の日本では一度のドローンショーで飛ばせる機体数に限度があります。中国では8000機を飛ばせるのに対し、日本では当社でも検証しきれていないのですが、マックス3000機ほどになると見込んでいます」
日本がすぐに中国の規模に追いつくのは難しいが、例えば1年後に数倍の機体数を飛ばせる可能性もあるという。また、細部へのこだわりという点で日本企業はすぐれており、ショーのクオリティーで勝てる見込みは十分にあるとのこと。今回の世界記録で再現された初音ミクのように、日本が誇るアニメなどIPとのコラボによりインパクトを出すことも考えられる。
●需要に対して、供給が足りていない
国内におけるドローンショーの実施回数は、ドローンショー・ジャパン(2024年8月時点、ドローンショー・ジャパン調べ)が最も多いが、機体所有数はレッドクリフ社(東京都港区、2024年9月時点、レッドクリフ社調べ)で、3000機以上を一括管理しており、1000機以上の大型ショーの実績が豊富だ。
山本氏は、ドローンショー・ジャパンの差別化ポイントとして「自社での機体開発」をあげた。
「当社は、国内企業で唯一ドローンショーの専用機体を開発し、他社へ販売もしています。最大のメリットはコスパがいいこと。中国企業で開発した機体を購入するよりも安価となり、修理も国内で完了できます」
ドローンショー・ジャパンは先日、シリーズAラウンドで5億円の資金調達を実施した。今後、よりシンプルで安全に使用できる改良版の機体を開発し、2024年末に発売予定だ。現状よりも大幅に価格が下がる見込みだという。さらに、ドローンショーを取り巻くエコシステムを確立していきたいと意気込む。
「現在の課題は、需要に対して圧倒的に供給が足りていないこと。多くのご相談をいただくものの、機体や人員などのリソース不足でお断りする案件が少なくありません。そこで、ドローンショー事業に参入したい企業に当社の機体を購入、または貸与するとともに、培ったノウハウを継承していけたらと考えています」
同社は山本氏の地元である石川県金沢市で創業したが、東京オフィスもオープンした。今後、東京オフィスを強化しながらエコシステムを確立し、海外市場に打って出たいと展望を語った。国外でドローンショー・ジャパンが制作したドローンショーが見られる日も、そう遠くないかもしれない。
(小林香織)
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パン屋みたいなセブン増なぜ(写真:ITmedia ビジネスオンライン)25
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