すごいぞ!ニッポンの500円玉〜偽造防止から始まる進化のおはなし〜(1982年〜)【TBSアーカイブ秘録】

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2024年09月24日 15:05  TBS NEWS DIG

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「岩倉具視の500円札」に代わって500円玉が登場したのが1982年のこと。同じ1982年に韓国で500ウォン硬貨が発行されたのをご存じでしょうか。この2種類の硬貨が大きさも材質も本当にそっくりだったのが不幸のはじまりでした。(アーカイブマネジメント部 疋田 智)

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自動販売機でおかしな「500」硬貨

1982年に登場した500円硬貨と、韓国500ウォン硬貨。
このふたつのコインは本当にそっくりでした。主な材質は銅とニッケル(円は亜鉛を含む)、大きさは測ったように同じ(直径26.5mm)で、同じように大きく500の数字が書かれています。

それが自動販売機などで見つかるようになったのが80年代の半ばを過ぎたあたりから。

ただし、困ったことなのは、500ウォンは今も昔も、500円の10〜8分の1程度(為替レートによる)の価値しかないことでした。

重さを揃えたら分からない

500ウォンを500円だと言ってつかませることができれば、400円以上が丸儲けになります。ここに犯罪者集団が目をつけました。

唯一の違いといえば重さでした。500ウォン玉が7.7g、500円玉が7,2g。その差0.5gと、ウォンの方がわずかに重いのです。そこで、犯罪者集団はドリルで500ウォン硬貨を削りました。すると日本の自販機は間違えて500ウォン硬貨を500円硬貨と認識するようになったのです。

当時の自販機は単純だった!

では、どうやって「偽造500ウォン」を「真500円」に替えたのでしょう。ジュースやタバコ(など)を買って、そのお釣り? いえ、もっと効率の良い方法がありました。

当時の自販機はいったん500円と認識すると、硬貨は上からストックされます。
その後そのまま返却レバーをひねると、返却硬貨は硬貨ストッカーの下から排出されるのです。

つまり上からニセ硬貨が入り、下から本物が出てくる。これを繰り返すだけで、コインは10倍の価値を持って出てくるということになるわけです。

価値の高すぎるコイン

この犯罪はもちろん社会問題になりました。

当時の500円玉は、世界を見渡しても断トツで価値の高いコインでした。いわば「偽造(偽装)する価値のある硬貨」だったのです。中国人犯罪グループがここに目をつけ、韓国ばかりか、ハンガリーやミャンマーのコインまで巧みに偽装して、自販機を通すようになりました。 

小売店も困りましたが、一番困ったのが自販機業界です。ここにいたって、自販機業界は「大きさ」「重さ」だけでなく、表面の素材からもコインを判別するような新システムを導入するようになったのです。

新500円玉の登場(1)

もちろん政府も黙ってはいられません。2000年に登場した新500円玉は、まず材質をニッケル黄銅に変更しました。そして外周のいわゆる「ギザ」を斜め切り込みとして、181本入れるなどの大改造を施しました。この斜めギザは世界でも大変珍しく、偽造が困難だとされました。

これら官民の新技術導入の結果、500円玉偽造は一気に少なくなっていったのです。

新500円玉の登場(2)

現在の500円玉は2021年デビュー。

よく見れば分かるとおり、複数の金属が使われています。しかし、単にはめ込んだだけではありません。まずは2種類の金属板をサンドイッチ状に挟み込む「クラッド技術」で円盤を作ります。その円盤を、別の種類の金属でできたリングの中に「バイカラー技術」ではめ込みます。「バイカラー・クラッド」と呼ばれる匠の技術なのです。

それ以外にも、異形斜めギザ、上下別潜像、微細文字など、技術の粋を尽くした偽造防止処理が施されていて、現代の500円玉は、犯罪者が「こんなものの偽造は難しすぎて割に合わない」と思うレベルになっています。

なお現在も、先代、先々代の500円貨幣は、普通に流通します。「古い500円貨幣が使えなくなる」などという詐欺行為(振り込め詐欺など)にはくれぐれもご注意ください。

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