「見たいけど絶対に触ってはいけない」BL絶対領域に挑戦!『毒恋』編集者・三木一馬氏に聞く作品誕生秘話

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2024年09月24日 17:00  TBS NEWS DIG

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ファンタジーやコメディ、シリアス系など、ストーリーのジャンルも幅が広がる中、ドラマストリーム『毒恋〜毒もすぎれば恋となる〜』は、ラブコメであり、「バディもの」「サスペンス」と、新たな要素も盛り込まれている。物語は、「ワンコ系」天才詐欺師・ハルトと出会った「ツンデレ」エリート弁護士・志波令真が、次第にハルトの魅力に「毒」され、「恋」に落ちていく様子を描きつつ、2人がバディを組み巨悪に立ち向かう展開も見せていく。

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ドラマだけでなく、小説・コミックとの3つの「メディアミックス」で発表される点も、見どころの一つ。ドラマ・コミックに先駆け、ひと足早く上巻をリリースしたのが、原作となる同名小説(牧野圭祐著、角川文庫(KADOKAWA)刊)だ。担当編集を務めた三木一馬さん(ストレートエッジ代表)は、ライトノベル編集者としてこれまでにも多彩な作品を手がけ、メディアミックス展開で、原作からのコミカライズやアニメ化も数多く仕掛けてきた。

「一番苦労した」と語るタイトル付けや、作品に「艶」を与えたという“フィクサー”の存在など、『毒恋』誕生秘話を語る。

「美しくて面白い」 BL×バディもの

——今回、BL作品にサスペンスや「バディもの」という要素を盛り込んだいきさつを教えてください。

僕がもともと「バディもの」が大好きで、『あぶない刑事』(日本テレビ系)の時代から老若男女、ずっと愛されてきました。凸凹コンビがいがみ合ったり、ムカつき合ったりする仲なのに、共通した「目的」を見据えると、けんかしながらも協力して進んでいくというドラマがすごく面白いと感じていました。本作ではサスペンス要素として、裁判やアンダーグラウンドな舞台を設定しています。こういうジャンルは、男性も女性も関係なく楽しめるものであるとも思っていました。この普遍的なジャンルと、今のトレンドであるBLを掛け合わせると面白いのではないかと考えたのです。艶がある男性のキャラクター同士の「愛憎一緒くた」なやり取りは、今の時代であればなおさら、ストーリーとしても成立すると思いました。バディものはもともとあったカルチャーですが、切り口としてBLを軸にしたバディものというアプローチをしたのが本作になります。

——ドラマ版の企画・立案をされた渡辺良介プロデューサーとも絶えず打ち合わせしてきたと伺いました。

そうですね。そして、もう1人ブレーンがいて、僕が新卒時代からずっと“同期”として仲の良い女性編集者がいるのですが、その人の知見をとても参考にさせてもらいました。今回『毒恋』のコミック版を出版する白泉社のIさんいう方です。そのIさんに、「バディものでこういうドラマがやりたい」という相談をしながら、これまであった作品と同じではなくて、男性同士の関係性としても面白いアプローチができるかをトライしていきました。プロフェッショナルな彼女のおかげで、例えると、白黒のキャンバスに色を入れてもらったような感じで、作品に「艶」を加えてもらいました。Iさんがフィクサーです(笑)。

ハルトの誘惑=「毒」。苦労したタイトル付け

——打ち合わせで方向性として出たキーワードなどはありましたか?

打ち合わせを進める中で、読者の中にもタイプがいくつかあることを知ったんです。「観葉植物タイプ」という楽しみ方も、初めて知りました。男性読者は「自分がこの作品の主人公だったら」と思って「この子と仲良くなりたい」と介入して楽しむのに対して、BLの主な読者層である女性たちは、自分はそこに介入したくはないんですよね。美しい箱庭を外部から愛でていたい。そのルールは絶対に破ってはいけない、という。そこはとても強く意識しました。「見たいけど絶対に触ってはいけない」という絶妙なバランスを保つように努力しました。

——『毒恋』というテーマにたどり着くまでに、苦労されたことや、いきさつなどを教えてください。

一番苦労したのはタイトルですね。「毒もすぎれば恋となる」という『毒恋』は、渡辺さんが考えました。志波はクールで真面目で完璧主義者なので、その気はないはずなのに、「毒」を注入されていくように自分が侵されていく……そういったドラマを象徴するタイトルになったと思います。自分が変わっていってしまうのを否定したいんだけど否定できない、みたいな描写は、当初からイメージしていたのですが、タイトルをどう付ければいいのか悩んでいたところ、ハルトが誘惑するというアクションを「毒」と表現することで、うまくはまりました。「毒恋」は通常の単語ではないので、あえて気になるようなフレーズになっているのも面白いと思います。「恋毒」でもなく「毒恋」。アンバランスな方が、この関係性も含めていいんじゃないかという話になり、ようやくタイトルが決まりました。

小説家人生を底上げ 編集担当として目指す未来

——三木さんのパーソナルなことも伺います。ドラマのテーマのように、毒が回ったように脳が痺れて抗えないほど、“好き”に支配されたことはありますか?

小説の編集をしていて、無名作家さんと一緒にバディを組んで、初めは誰にも期待されていなかったのに、世に出してめちゃくちゃ売れた時ですね。その時に、期待していなかった周囲の人たちが「いや、売れると思ってたよ」と手のひらを返すんです(笑)。内心嘘だと思いながらも「そうですよね!」と明るく返す時に、毒が回ったような快感を得ておりました(笑)。編集者は本を売ることが一番の目的なので、この快感をもっと得たいなと思いましたね。

——編集者として、今目指していることなどはありますか?

今は本当に出版不況で、購買読者層は増えていない反面、刊行点数は増えています。その結果、何が起こるかというと、平均的に読者が1人の作家にかけるお金が減っていく。すると、小説家が食べていけなくなってしまう。 2、3カ月かけて1冊本を書いても、例えば印税が100万円もいかないと、家族がいたらとても生活できないです。このままだと小説家を目指す人がいなくなってしまうんじゃないかと思っていて。なので、小説家は面白いものが作れるし、好きなことだけをしていいし、しかも金も稼げる、という姿を見せたいんですよね。そういう作家を僕が作り上げられるようにして、それを見た若い子が、小説賞に応募するなどしてほしいですね。そこを今、頑張っています。

——本作の映像化に際して、特に好きなテーマやシチュエーションは何かありますか? また、これから初めて本作に触れる方に注目してもらいたいのはどんなところでしょうか?

まずは主人公2人の魅力。キャラクターが抜群に立っていると思います。そこを注目していただきたいです。そのうえで、僕はどちらかと言うと、志波の方を見てほしいですね。誘惑されて、それに負けていく、籠絡されていく志波。きちんとして真面目な男が、そうして“墜ちていく”さまって、見ていてとてもハラハラするしドキドキするし目が離せない魅力があると思うんです。僕が男性向けのラノベを作ってきた中にも、ツンデレキャラのツンツンしている女の子が恋に落ちていく姿を、男性読者が愛でるというような作品があって。『毒恋』はそれの逆バージョンですね。ピシッとした男・志波がハルトに籠絡されていく姿を、僕も「観葉植物タイプ」になって愛でたいと思っています。ちなみに、“フィクサー”Iさんが手がけたコミック版は、小説やドラマよりもさらに「ガチ」のプロフェッショナルなBLに仕上がっています。ドラマ、小説、コミックと、それぞれで楽しんでいただきたいです。

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