「不明の夫、生きて戻って」=能登大雨、目の前で濁流に―「72時間」経過・石川

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2024年09月24日 21:01  時事通信社

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時事通信社

複数の住民が安否不明になった塚田川流域で捜索に当たる警察官ら=24日午後、石川県輪島市
 「生きて戻ってきてほしい」。記録的な大雨に見舞われた石川県・能登半島では24日、家族や消防が不明者の捜索を懸命に続けた。21日の災害発生から3日となり、生存率が急激に下がるとされる「72時間」が経過。家族らの表情には疲労もにじむ一方、停電や断水が続く地域では、元日の地震以上の苦境を訴える声も出ている。

 同県珠洲市真浦海岸沿いで旅館を営む池田幸雄さん(70)は21日、旅館のすぐ横を流れる川にのまれ、行方不明になった。

 妻真里子さん(68)は幸雄さんと避難のため自宅を出た直後、最初の濁流に足をすくわれた。「お父さん、どこ?」。少し離れた場所で幸雄さんが手を振るのが見えた瞬間、幸雄さんは2度目の濁流に襲われ、見えなくなった。息子と一緒に土砂や流木をかき分け、浜辺を捜し歩いたが見つかっていない。

 社交的で誰からも好かれる性格という幸雄さん。「生きて戻ってほしい。冷たい海からいいかげん出てきて」。真里子さんは声を震わせた。

 河川の氾濫で複数の住宅が流された輪島市久手川町。中学3年喜三翼音さん(14)ら3人の安否が依然不明の中、消防や警察は24日、約520人態勢で大規模な捜索を行った。流域に住む女性は「流れ込んで来た土砂は広くて深い。簡単には見つからない恐れもある」と心配そうに見詰めた。

 大規模な土砂災害が起きた同市町野町では、住民が過酷な生活を強いられている。町野公民館の谷紀美子館長(69)は「元日の地震では、家が崩れただけなので物を取り出すことができた。今回は泥が押し寄せ、洗い出す水もない。もっと大変だ」と語った。

 町野町曽々木の避難所に身を寄せる60代女性は「地震から時間がたち気持ちが少し上向いたと思ったら、今度はマイナスになった。この後どうなるのか」と嘆いた。 

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