世界を制した絶対王者を撃破 7番人気の激走に中山競馬場騒然

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2024年09月25日 07:30  netkeiba

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マイネルラヴ(撮影:下野雄規)
 98年のスプリンターズSはラストランとなるタイキシャトルの1強ムードだった。しかし、単勝1.1倍の大本命は直線で伸びを欠いて3着。代わって勝利を収めたのは7番人気の伏兵マイネルラヴだった。多くのファンを驚かせた一戦を振り返りたい。

 前年秋から芝短距離路線はタイキシャトルが不動の主役だった。3歳10月のユニコーンSから5つのGIを含む重賞8連勝。この年は始動戦の京王杯SCから安田記念、仏G1のジャックルマロワ賞、マイルCSと制し、このスプリンターズSがラストラン。レース後には引退式が予定されていた。単勝オッズは1.1倍。ほとんどのファンが勝利を確信していた。

 しかし、そこに待っていたのは”まさか”の結末だった。いつものように、手応え良く好位を追走するタイキシャトル。ファンも当然のごとく、ゴール前で栗毛の馬体が豪快に後続を突き放すシーンを想像していた。ところが、である。追われてからの反応が鈍い。代わって、直線で先頭に立ったのはマイネルラヴ。4角で大本命に並びかけると、直線での叩き合いで一歩も譲らない。ゴール前で強襲した武豊騎手のシーキングザパールをアタマ差抑えてフィニッシュ。

 その瞬間、中山競馬場の空気は一気に凍りついた。負けるはずがない馬が負けたーーー。例えれば、05年の有馬記念でハーツクライがディープインパクトを破ったときに似た空気とでも言おうか。誰も想像していないシーンがファンの目の前で現実として起こったのだ。この年には日本調教馬として2頭目となる海外GI制覇も果たし、絶対王者として君臨していただけに、まさに「競馬に絶対はない」を具現化したのがこのレースのマイネルラヴだったと言ってもいいだろう。単勝37.6倍、7番人気に甘んじていた3歳牡馬を殊勲の勝利に導いたのは、テン乗りの吉田豊騎手だった。

 このレースを最後に種牡馬となったタイキシャトル。一方、マイネルラヴは翌年以降も現役を続け、4歳時にシルクロードSを制覇。残念ながら2つ目のGIタイトル獲得とはならなかったが、スプリンターズSでは4歳時が4着、5歳時が5着と奮闘。「最強馬を倒した馬」の面目を保った。

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