首都高でトラック運転手が車線をふさぎ、後続車両に暴行か…動画が拡散 いったい何の罪に問われるのか?

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2024年09月25日 11:30  弁護士ドットコム

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首都高で車の通行を遮断するようにトラックが停まり、その運転手と思われる男性が外に出て、後続車に何か叫びながら暴れる——。X(旧Twitter)に9月23日、こんな様子を捉えた動画が投稿されて、翌24日午後までに1.4万以上リポストされています。


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動画の投稿主は、「煽り運転を繰り返しトラックで車線を塞ぎ停車。通行止め状態」「車外で暴れてるトラック運転手は何キロも手前から前を走る車全てに車間ベタ付けで危険運転を繰り返してた」と投稿しました。



実際に動画を見ると、高速道路上でトラックの運転手がトラックで車線を塞ぎ、後続車のドアをむりやり開けようとして暴言を吐いたり、暴れたりしているように見えます。さらに両車線とも後続車両も通行できなくなっており、渋滞が発生しているようでした。



この運転手が勤務する運送会社は9月24日、自社のYouTubeで「弊社従業員の運転する車両による危険な運転について、大変お騒がせしております。この度は、恐怖と危険を感じさせてしまいました被害者の方へ改めてお詫び申し上げます」と謝罪しました。



ネットでは「会社の車でよくやるよ」「あおり運転で逮捕でしょ」などと驚きの声があがっています。法令違反だらけの行為に見えますが、一体どのような罪に問われる可能性があるのでしょうか。



●どのような罪になる?



<妨害運転罪、往来妨害罪>



動画では、トラックが画面左の黒い乗用車の前を塞ぐように移動し、停車しているように見えます。これは妨害運転罪(道路交通法117条の2の2第1項8号ヌ)にあたります(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)。



さらに、本件は高速道路上であり、停車させる行為は著しく危険と考えられますから、同法117条の2第1項4号により、さらに刑が重くなります(5年以下の懲役又は100万円以下の罰金)。



また動画では、トラックが高速道路2車線をふさいでおり、他の車が通行できなくなっているように見えます。これは刑法上の往来妨害罪(同法124条1項)にあたりそうです(2年以下の懲役または20万円以下の罰金)。



なお、道路が完全に塞がれておらず、動画に写っていない部分を通行できる場合にも、過去の判例に照らせば同罪が成立します(最決昭和59年4月12日)。



<暴行罪、器物損壊罪>



さらに、トラック運転手は黒い車両のドライバーを怒鳴りつけ、ドライバーに向かって窓越しに何度も強く殴りかかっているように見えます。トラック運転手はドライバーに直接触れてはいないようですが、暴行罪(刑法208条)が成立しうると考えられます(東京高判昭和30年4月9日、東京高判平成16年12月1日等参照)。暴行罪が成立する場合には、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料となります。



加えて、トラック運転手は黒い自動車のドアや窓ガラスを蹴ったり殴ったり、ミラーをたたんだりもしています。その結果ミラーなどが壊れたりした場合には、器物損壊罪(刑法261条)も成立します。



●死傷結果が生じた場合は?



今回の動画では死傷者は出ていないようにみられますが、もし往来妨害行為の後、後続車が突っ込んできて事故になり、人が死傷した場合には、どうなるのでしょうか?



<往来妨害致死傷罪>



往来妨害行為の後、後続車が突っ込んできて事故になり、人が死傷した場合、往来妨害致死傷罪が成立します。



この場合は傷害罪・傷害致死罪と比べて重い方の罪が成立するため(刑法124条2項)、負傷の場合15年以下の懲役、死亡の場合は3年以上の有期懲役(原則は20年まで、最大30年)となります。



<危険運転致死傷罪>



また、危険運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条)の成立も考えられます。そうなれば、ケガの場合は15年以下の懲役、死亡の場合は1年以上の有期懲役(原則は20年まで、最大30年)となります。



以前は、前の車両を強引に停車させた後に、後続の車両による事故が起こっても、危険運転致死傷罪が成立するかどうかに争いがありました。その理由は、当時の危険運転致死傷罪の条文では、停車行為を危険運転として処罰することが難しかったからです。



しかし、家族4人が死傷した、いわゆる「東名あおり運転事故」(2017年)の裁判をきっかけに、危険運転致死傷罪の条文が見直されました。その結果、前の車を停車させて文句をつけている間に、事故が起こって死傷結果が発生したような場合にも、危険運転致死傷罪が成立することが明確になりました。



●結局、どうなる?

往来妨害致死傷罪や、危険運転致死傷罪は、あくまでも人の死傷結果が生じた場合に適用されるものです。本動画では、そのまま男は立ち去っているようにも見えます。その結果、誰も怪我も死亡もしなかった場合には、先に説明したとおり、妨害運転罪、往来妨害罪や暴行罪、器物損壊罪が成立するにとどまるでしょう。



このように多数の犯罪が成立する場合、最終的にどのように処理されるのかはなかなか難しいのですが、妨害運転罪、往来妨害罪、暴行罪、器物損害罪はそれぞれ守っている利益(保護法益といいます)が異なると考えられるため、全て起訴されて有罪判決が出た場合には、併合罪(刑法45条前段)となりそうです。



この場合には、懲役刑はもっとも長い場合で、もっとも重い罪である妨害運転罪の1.5倍(7年6月)ということになります(同法47条)。



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  • 犬に免許与えた管轄公安も公安だな。
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