近鉄、新型車両8A系の主要諸元は? 運転台は2ハンドル、最高120km/h

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2024年09月26日 07:11  マイナビニュース

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●ストレート車体で簡素化、八角形デザインに前照灯も融合
近畿日本鉄道の新型一般車両8A系が9月20日に報道公開された。10月7日にデビューし、奈良線、京都線、橿原線などで運行。老朽化した既存車両の更新を進めていく。当日配布された資料・パンフレット等をもとに、車両概要や主要諸元についてまとめた。


新型一般車両8A系は、近鉄奈良方からTc車(制御車)「ク8A1形」、M車(電動車)「モ8A2形」、T車(付随車)「サ8A3形」、Mc車(制御電動車)「モ8A4形」の4両固定編成。車両番号はTc車を「8A101」、M車を「8A201」、T車を「8A301」、Mc車を「8A401」からそれぞれ付番している。5桁ある車両番号に関して、万の位は所属線区(奈良線・京都線系統は「8」)、千の位はアルファベット順で編成両数・車両構造によりグループ分けを行う。百の位は近鉄奈良方からの順、編成番号を表す十の位と一の位は製造順に付番する。



先頭車の定員はTc車・Mc車ともに120名(ロングシート時)・110名(クロスシート時)。中間車の定員はM車・T車ともに130名(ロングシート時・クロスシート時共通)。1編成あたりの定員はロングシート時500名・クロスシート時480名と計算できる。



車体はアルミ合金製。ダブルスキン構造の押出型材を屋根・側・床に使用した構体とし、構造の簡素化を図るため、裾絞りを廃止して側構体をストレート構造とした。1両あたりの最大寸法は長さ20,720mm、幅2,800mm、高さ4,100mm(Tc車・T車)・4,150mm(M車・Mc車)。自重はTc車35.0トン、M車36.0トン、T車29.0トン、Mc車38.5トンとのこと。


車体前面は八角形をモチーフとした特徴的かつ斬新な形状に。他編成との併結を前提としており、正面中央部に貫通扉、窓下部の両端に転落防止幌を設けた。上部中央の種別・行先表示器は幅約1,350mm・高さ約190mmの大きなサイズで、フルカラーLEDで日本語・英語の固定併記とすることにより、表示を見やすくしている。上部の両端に後部標識灯(赤色)と列車種別灯(黄色)を一体化したLED灯を設置。窓下部の左右に設置した前照灯は、小型モジュール式の横長タイプLED灯を斜め配置として車体前面の八角形デザインに融合させ、視認性も考慮した。

車体側面は赤色と白色のツートンカラーで「近鉄らしさ」を残しつつ、新たな塗り分けパターンを採用。乗降扉は1両あたり片側4カ所、幅1,300mmの両引戸で左右対称の配置としている。側窓の大きさは縦940mm・横870mm。ドア間に配置した2連窓の片側と車端部のフリースペース部は固定窓、それ以外はフリーストップ式の一段下降窓を採用した。側面上部の表示器は幅約960mm・高さ約190mmのサイズで、従来の列車種別・行先など表示するほか、次駅案内や女性専用車両表示、ひらがな表示も新たに加えた。この表示器は速度60km/h以上で消灯する。



車内において、ドア間のL/C(デュアル)シートは各車16脚装備。1両すべてロングまたはクロス状態にするだけでなく、1両の中でロング・クロス・ロング(車両中央部のみクロス)またはクロス・ロング・クロス(車両中央部のみロング)といったアレンジができるパターン制御を新たに設定し、利用シーンによる使い分けを細分化できるようにした。座面幅は460mmで、従来のL/Cシートより10mm拡幅。座布団のクッションを厚くしてやわらかさを持たせ、背もたれ形状も見直すことで、座り心地が向上している。シート背面に荷物掛フックも装備した。


ベビーカー・大型荷物対応スペース「やさしば」は1両あたり2カ所、車両中央の扉付近に設置。座席は進行方向または通路向きなどどちらでも座れる形状とし、親子で一緒に座ることもできる。名称の「やさしば」は、誰でも気兼ねなく座れる「やさしさ」を共有する空間(やさしい場所)であることに加え、緑色のデザインで「芝生」とも掛け合わせた。



車端部の優先座席はロングシートだが、先頭車両のみL/Cシートの一部を優先座席として使用する。車内表示器は側扉鴨居部の4カ所に千鳥配置とし、幅約1,040mm・高さ約260mmの大型LCDディスプレイに。列車種別・行先・停車駅・乗換案内など4カ国語で表示を行うほか、画面の一部をデジタルサイネージ用の領域とするなど、1台の表示器で多彩なコンテンツに対応できるようにした。車内防犯カメラも側扉鴨居部の4カ所に千鳥配置としている。


側窓のカーテンは、フリーストップ式にロールアップ機能を付加することで操作性が向上。車両間の貫通扉は幅900mm(有効開口幅800mm)とし、強化合わせガラスによる引戸構造とした。ガラスに花びら模様をあしらい、ぶつかり防止を図るとともに、扉をより軽く開けられるようにアシストハンドルを採用している。


●運転台は操作性に配慮、台車は「ひのとり」ベースに見直し
乗務員室は運転台と車掌台にそれぞれ締切用の開戸を設け、他編成との併結時に通路以外を閉鎖できる構造に。主幹制御器は力行・抑速およびブレーキが独立した2ハンドルのデスクタイプで、計器(速度計・圧力計など)やモニタ情報表示器は集約してLCD表示とした。


運転操作時に必要なスイッチ類は運転席の周囲に配置して操作性に配慮する一方、運転操作に必要のない機器はケーシング内に収納している。故障発生時のバックアップとして、モニタシステムから運転に必要な最低限の情報を取り込み、ディスプレイ故障時は情報表示器画面でもメータ情報を簡易表示できるようにしているという。



運転士用腰掛は座面の高さおよび前後方向の調整に加え、背ずり単体での前後調整と4段階の角度調整機能を設け、さまざまな体格や身長に合わせられるよう配慮した。運客仕切扉のカーテンは電動のものを採用し、運転士が手もとのスイッチで操作できる。



情報伝達装置(モニタ装置)に関して、乗務員室に制御装置とタッチパネル式情報表示器を備え、乗務員支援機能(行先・時刻など運用情報、故障情報、次駅停車予告、出庫点検支援)、メンテナンス支援機能(検査、試験機能、故障状態記録確認)、サービス機器制御機能(空調、各種表示、電灯、放送制御機能)という3つの機能に大きく分けられるとのこと。基幹伝送はアークネットだが、車内表示器の動画やカメラ映像など大容量のデータ通信も必要となるため、編成内でイーサネットのネットワークも併用している。



8A系の設計最高速度は120km/h、運転最高速度は110km/h。加速度は3.0km/h/s、減速度は4.0km/h/s。ブレーキ性能に関して、既存車両と比べて電制可能な速度領域を停止間際まで拡大したほか、運用線区に35パーミル前後の連続勾配があるため、抑速回生ブレーキを備えた。主制御装置はVVVFインバータ方式で、1C4M制御の主制御器をM車・Mc車に搭載。低損失のハイブリッドSiC素子を採用した電圧形PWM2レベルインバータとなっている。主電動機も低損失化を図り、全閉自冷式かご形三相誘導電動機を採用した。



補助電源装置として、容量190kVAの静止型インバータ装置をTc車に搭載。主回路素子にIGBTを使用した3レベルインバータ方式を採用し、小型軽量化、高効率化、低騒音化を実現している。電動空気圧縮装置もTc車に搭載され、オイルフリースクロール式で容量1,155リットル/min。周辺機器であるアフタークーラ、除湿装置、起動装置など1つにパッケージングして省スペース化を図り、装置内の圧縮機ユニットを3台搭載することで冗長性を持たせた。

台車は走行性能の向上、軽量化、省メンテナンス化を図ったボルスタレス台車(M台車 : KD-327 / T台車 : KD-327A)で、「ひのとり」(80000系)をベースに荷重条件など見直している。連結装置は先頭部に密着連結器、中間部に半永久連結器を採用。なお、先頭部に60点と36点の電気連結器を装備しているとのことだった。


新型一般車両8A系は、2024年度に計48両(4両編成×12編成)を予定しており、整備が完了し次第、順次導入していく。報道関係者向け内覧会が行われた9月20日の時点で、3編成を搬入済みと説明があったという。2025年度も計36両(4両編成×9編成)の導入を予定している。



同車両の開発コンセプトは「ご利用いただくあらゆる方々により身近に、親しみをもっていただける車両」。多様化するニーズに応じ、「特に子育て世代に近鉄沿線に住もうというきっかけになる車両として送り出した」と説明している。この車両が沿線ブランドの価値向上に貢献し、将来にわたって親しまれる車両となることを期待したい。

○新型一般車両8A系の主要諸元


車両形式(奈良寄→大阪寄) : ク8A1(制御車・Tc) / モ8A2(電動車・M) / サ8A3(付随車・T) / モ8A4(制御電動車・Mc)

車両番号(奈良寄→大阪寄) : 8A101〜8A112 / 8A201〜8A212 / 8A301〜8A312 / 8A401〜8A412

電気方式 : 直流1,500V 架空線式

設計最高速度 : 120km/h

運転最高速度 : 110km/h

車両性能 : 加速度3.0km/h/s・減速度4.0km/h/s

主電動機(M・Mc) : 全閉式かご形三相誘導電動機 MB-5183A2 240kW×4台

駆動方式 : 平行カルダン式(WN方式)

歯車比 : 6.31

制御装置(M・Mc) : VVVFインバータ制御式 MAP-244-15V368(1C4M制御-ハイブリッドSiC素子)

補助電源装置(Tc) : 静止インバータ式 SVH190D3A-4111A(待機2重型) AC440V-190kVA

ブレーキ装置 : 電気指令式空気ブレーキ装置 KEBS-21A(停止および抑速回生ブレーキ、応荷重機能、制御圧切換機能、滑走防止装置、保安ブレーキ付)

電動空気圧縮機(Tc) : 交流型オイルフリースクロール式 URC1200SD-I 1,155リットル/min

空調装置 : ユニット型 CU7042 ロールフィルタ内に空間除菌装置(深紫外線LEDユニット)搭載 47,000kcal 54.66kW(6kWヒータ内臓)×1台

暖房装置 : シーズワイヤヒータ 12.0kW

パンタグラフ(M・Mc) : シングルアーム型 PT7605-A×1台

戸閉装置 : 空気式ドアエンジン両引戸(戸閉弱め機能、扉個別開閉機能、扉再開閉機能)

保安装置 : ATS・列車無線・列選装置

蓄電池(Tc) : DC100V-80AH

行先モニタ装置 : 情報伝送装置、セレクトカラー式LED式行先表示装置、LCD式車内案内表示装置

車内灯 : 直管反射型LED式客室灯


(報道関係者向け内覧会で配布されたパンフレット等をもとに作成)(MN 鉄道ニュース編集部)

このニュースに関するつぶやき

  • 近鉄奈良線といえば、特急が少ない割りにはウッハウハの線区。通勤新車はまだ多い方だけど、それでも絶対数が足りないのがつらいからねえ。
    • イイネ!9
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