中大卒ルーキー2人がライバルチームで好走 男子1500mは中野翔太、10000mは吉居大和【全日本実業団陸上】

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2024年09月26日 12:00  TBS NEWS DIG

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全日本実業団陸上(山口市維新百年記念公園陸上競技場)が9月21〜23日の3日間、山口市の維新百年記念公園陸上競技場で行われ、大会2日目に中大卒のルーキー2人が好走した。男子1500mでは中野翔太(23、Honda)が3分41秒47で優勝。中距離種目でもスピードがあることを示した。男子10000mは吉居大和(22、トヨタ自動車)が28分13秒10で日本人トップの7位。中大時代には箱根駅伝で区間賞を獲得した2人が、実業団でも順調なスタートを切った。

狙い通りの展開に持ち込んだ中野

中野は好結果の要因として、レース展開が自身に合っていたことを挙げた。

「(ペース的に)1周目が60秒、2周目が60秒で余裕を持つことができました。(展開的にも)しっかりついて行ってラスト100mから50mくらいで差せればと考えていましたが、その通りにできましたね。最後に出し切るレースが最近なかったので、1500mは専門種目ではありませんが、最後に(自身の体を狙い通りに)動かして勝つことができてよかったです」

今大会では3分44秒58の自己記録更新が「最低目標」だったが、「良い流れになれば3分30秒台も視野に入れながら」と考えていた。次週のアスレチックスチャレンジカップ(新潟)5000mで「悪くても13分30秒切り、メインの目標は自己記録(13分24秒11)の更新と13分20秒切り」につなげることが、全日本実業団陸上で1500mに出場した目的だった。

3分30秒台と13分10秒台は、数年前なら快記録と言われたタイムだが、中野は「当たり前に出したい」と言う。「日本のトップで戦うにはそういうタイムが必要になってくるし、その上の世界で戦っていきたいと思っていますから」

1500mで3分30秒台を目標に設定したのは、吉居が5月の中部実業団で3分39秒75を出していたからでもあった。前年までは同じチーム内でのライバル関係が、今年からは実業団ライバルチームの選手として良い形で続いている。

終盤で先頭に立つ積極性を見せた吉居

男子10000mは国内実業団チームの外国人選手たちが先頭集団を作り、日本人選手は9000m付近から吉居1人だけになっていた。残り500mで吉居がトップに立ったが、最後は優勝したエバンス・ケイタニー(24、トヨタ紡織)らに及ばず7位だった。

「走りながら、このまま付いて最後に離されるより、自分で行った方が絶対にいい、と考えていました。ケニア人選手が多く出場していましたが、自分で仕掛けて入賞ができたので、意味のあるレース展開ができたかな、と思います」

6月の日本選手権5000mは20位(13分42秒59)だったが、5月の中部実業団1500mでは3分39秒75の好記録で優勝した。「自分でもビックリするタイム。1500mはこうやって走れるんだから、しっかり練習を積めば5000m、10000mも走れるという気持ちになれました」

今大会に向けても「ある程度良い練習」が積めていた。「本当につけるか不安もあったのですが、一旦ペースが落ち着いたりした中でうまく自分の体を奮い立たせ、絶対離れないぞという気持ちで付くことができました。ラスト3000、2000あたりからは余裕を持てる走りになっていたので、良いレースができたんじゃないかと思います」

同じ日に行われた1500mで、中野が優勝するレースを見ていた。「最後に行かれたかな、と思ったんですよ。(記録を)抜かれなくてよかった」と、元チームメイトらしさが感じられる言葉でライバル意識を表現した。

箱根駅伝の悔しさをニューイヤー駅伝で

Hondaとトヨタ自動車はニューイヤー駅伝の覇権を争うライバルチーム同士。22、23年大会をHondaが2連覇したが、今年はトヨタ自動車が2区から独走優勝した。Hondaは3000m障害の青木涼真(27)、マラソンの小山直城(28)、10000mの伊藤達彦(26)が、東京五輪以降の世界陸上&五輪日本代表入りをしてきた。トヨタ自動車は10000mの太田智樹(26)と田澤廉(23)、マラソンの服部勇馬(30)と西山雄介(29)、西山和弥(25)が代表経験選手だ。

両チームとも選手層が厚く、駅伝メンバー入りは簡単ではない。中野は「練習をしっかりこなして、調子の良さをアピールしていきたい。(11月3日の)東日本実業団駅伝や(例年11月後半の)八王子ロングディスタンスで結果を出して、ニューイヤー駅伝につなげたい」とメンバー入りへの意欲を示した。吉居も「メンバー入りも簡単ではありませんが、連覇がかかるチームに絶対に貢献する、という責任感をもってやっていきます」と気を引き締める。

前述のように2人とも、大学時代の箱根駅伝では区間賞を取っている。吉居は2年時に1区、3年時に2区で、中野は3年時に3区で獲得した。2人が3年時の23年大会で、中大は2位と好成績を残した。

だが28年ぶりの優勝を狙った今年はチーム内に感染症が広がり、2人も大会前に体調を崩してしまった。区間賞を取った前回と同じ区間に出場したが吉居は区間15位、中野は区間20位。チームは13位に終わった。「駅伝の悔しさは駅伝でしっかり返したい」と中野の駅伝への思いは強い。

「中大は最後苦しい状況で、シード(10位以内に与えられる次回出場権)も取れませんでした。これまで自分がやってきたことの証明という感じで、実業団で結果を出していきたい。ニューイヤー駅伝優勝だったり、区間賞だったり、区間新だったり、歴史に残るような走りをしたいです」

ニューイヤー駅伝の優勝争いに、ルーキー2人の走りがどんな役割を果たすだろうか。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)

※写真は左から中野選手、吉居選手
 

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