リマスター版が再評価、ニュー・クィア・シネマの旗手グレッグ・アラキの2作品公開

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2024年09月26日 19:21  cinemacafe.net

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『ドゥーム・ジェネレーション デジタルリマスター版』 ©1995 UGC and the teen angst movie company
約30年の時を経てサンダンス映画祭が再評価する90年代ニュー・クィア・シネマの旗手、グレッグ・アラキ監督の2作品『ドゥーム・ジェネレーション デジタルリマスター版』、『ノーウェア デジタルリマスター版』が11月より公開決定。予告編、ポスタービジュアル、場面写真が解禁となった。

異性愛を常識とする概念や、それを支えてきた映画のあり方に対抗した90年代のニュー・クィア・シネマムーブメントを牽引し、インディカルチャーの旗手として知られるグレッグ・アラキの2作品がデジタルリマスター化。さらに、初公開当時の性表現から止むなくカットされたシーンを含むディレクターズカットで劇場公開が決定した。

自身もゲイであることをオープンにし、一貫してティーンエイジャーを主人公にして同性愛者のリアルライフを描いてきたグレッグ・アラキ。

そんな彼がプロデューサーからの「異性愛映画を撮ったら制作予算をあげよう」という提案に対し、彼なりの反骨精神あふれるパンクなやり方で「表向きは“異性愛映画”としつつも、“史上最もクィアな異性愛映画”を作りたかった」と語る『ドゥーム・ジェネレーション』。

「最も野心的な作品」と本人も語る、まるでジェットコースターのようなスピード感で若者たちの〈終末の日〉の一夜を描いた『ノーウェア』。約30年前の作品とは思えないほど、いまの感性を刺激する魅力とパワーを放つ2作品だ。

『ドゥーム・ジェネレーション デジタルリマスター版』
パンクでシュールでロマンチック――かつてなく刺激的な逃避行

「今夜は何か起こりそう 胸騒ぎがするんだ」。今回、公開された本作の予告編(60秒)は、ロサンゼルスのクラブで若いカップルのジョーダン・ホワイト(ジェームズ・デュバル)とエイミー・ブルー(ローズ・マッゴーワン)が語り合う場面から始まる。

その後、2人の予感は的中。セックス、ドラッグ、ロックで華やかに彩られた静かな夜は、危険な香りを纏った流れ者グザヴィエ・レッド(ジョナサン・シェック)の登場によって一変。途中、立ち寄ったコンビニで銃を向けられたり、会計のたびに不吉な数字「6ドル66セント」という数字が現れたり、常軌を逸した出来事ばかりに見舞われる。

しかし、謎に包まれたグザヴィエはたびたび2人を窮地から救い出し、図らずも追われる身となった3人は、サイコたちが徘徊する不毛の荒野と化したアメリカを逃げ回る…。“運命共同体”としてのジョーダン、エイミー、グザヴィエのかつてなく刺激的な逃行避行が始まるのだった。

旅を進めるにつれて、「君たちを愛してるよ」「私が愛するのはあなただけ」「愛してる!」と愛を叫び、性的な境界線が次第に曖昧になっていく三角関係…しかしラスト、「“愛してる”にはいろんな意味があるだろ?」というジョーダンの言葉で締め括られる映像となっている。





また、劇中歌には「ピチカート・ファイヴ」「ナイン・インチ・ネイルズ」「スロウダイヴ」「ジーザス&メリー・チェイン」「コクトー・ツインズ」「エイフェックス・ツイン」「ザ・ヴァーヴ」など、音楽ファンが歓喜するミュージシャンたちが名を連ねている。

また、ヒロインであるエイミーが強い視線で睨みつける写真が印象的なポスタービジュアルも新たに解禁。



シーンのバリエーションの広さを感じさせる場面写真で構成されたビジュアルは、エイミーとジョーダンが寝そべる写真の上に、ジョーダンとグザヴィエが親密に顔を近づける様子もほのめかされている。

『ノーウェア デジタルリマスター版』
クィアでカオスでロマンチック――真実の愛を求めて街を彷徨う若者たちの青春群像行

同じく今回公開された本作の予告編(60秒)では、混沌とした世界で永遠の愛をもとめて彷徨う若者たちの明るくも悲劇的な1日の様子が描かれる。

舞台は太陽が燦々と降り注ぐロサンゼルス、映画監督志望の18歳の青年ダーク・スミス(ジェームズ・デュバル)は、恋人のメル(レイチェル・トゥルー)が心の底から自分に夢中になってくれることを求めている。

一方のメルはダークのことを深く想ってはいるものの、紫色の髪の恋人・ルシファー(キャスリーン・ロバートソン)にも想いを寄せており、2人の間を行ったり来たりしている。

そんなメルとの心許ない関係に悩まされているダークは様々な妄想で自らを慰める日々を送っているが、オッドアイの美しい瞳を持つ無垢な青年・モンゴメリー(ネイザン・ベクストン)に次第に心惹かれていく。

様々な人間が入り乱れる地元の溜まり場であるコーヒーハウス“ホール”、いつものようにそこに集まり、夜の<缶蹴りゲーム>とパーティの計画を立てていたが、ダークの周囲では奇妙な出来事が起こり始める…。



若さゆえの疑念や不安、思春期の恋愛、SM、ドラッグ、カージャック、殺人、エイリアン誘拐――「ひどい一日だった」という最後のダークの呟き…と、まるで世界の終わりのような絶望に満ちたひと言が想像をかき立てる映像となっている。

また、『ドゥーム・ジェネレーション』同様、劇中歌には「スロウダイヴ」「マッシヴ・アタック」「ソニック・ユース」「ケミカル・ブラザーズ」「ブラー」「ポーティスヘッド」、マリリン・マンソン、「レディオヘッド」「スウェード」などのシューゲイザーやオルタナティヴロックなどの名だたるミュージシャンたちが楽曲を提供している。

また、ルシファーとメルが肩を組む写真が印象的な作品個別のポスタービジュアルも新たに解禁。カラフルな色使いの場面写真から、デザインが凝ったシーンの多さを感じさせる。

文字が一面に羅列された部屋で遠い目でたたずむのはバート、赤や緑のカラフルな部屋で電話をするのはメル、「GOD HELP ME」というサインの横で立つモンゴメリー、そして十字架を不思議そうに掲げ、星条旗を腰に巻いたダーク。愛を求める若者たちがカラフルな世界観で描かれる様子を感じさせる。

サンダンス映画祭がいま再評価する才能
2023年のサンダンス映画祭にて、このリマスター版が上映されると「今回の映画祭で見た中で最も大胆で素晴らしい映画は28年前に作られたグレッグ・アラキの『ドゥーム・ジェネレーション』だった。この作品はX世代の不安や焦燥感を描いた暴力的でエロティックな衝撃作だ」(Indiewire誌)と絶賛された。

『ドゥーム・ジェネレーション』は1995年にサンダンス映画祭にてプレミア上映され、当時の“常識”を超えた性表現に、観客にも衝撃をもたらした。そこから約30年の時を経て2023年にサンダンス映画祭を主催するサンダンス協会が選出するフィルムアーカイブコレクションに『ドゥーム・ジェネレーション』『ノーウェア』が選出され、協会の支援も受けデジタルリマスターされた。

このコレクションには『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999)、『リアリティ・バイツ』(1994)、『セックスと嘘とビデオテープ』(1989)など、これまでサンダンスが生んできた名作が並ぶ。

グレッグ・アラキ監督作品は、これまでサンダンス映画祭をはじめ、カンヌ、ベルリン、ヴェネチア、トロントなど、名だたる映画祭で上映され、『カブーン!』(2010)では同年のカンヌ国際映画祭クィア・パルムを受賞するなど高く評価を受けている。

近年では、TVシリーズ「ナウ・アポカリプス 〜夢か現実か!? ユリシーズと世界の終わり」にて監督・脚本・製作を努めるほか、Netflixシリーズ「13の理由」などのエピソードを監督。さらに今年、オリヴィア・ワイルド主演、本人も監督のファンだと公言するチャーリーXCXやコッパー・ホフマンなど出演の監督作『I Want Your Sex』を準備していることが発表されている。

『ドゥーム・ジェネレーション デジタルリマスター版』は11月8日(金)、『ノーウェア デジタルリマスター版』は11月15日(金)より渋谷ホワイトシネクイントほか全国にて順次公開。




(シネマカフェ編集部)

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