ドジャースと大谷翔平はポストシーズン不利のデータを覆せるか?〜第1シード、ホームチーム低勝率の近年の傾向〜

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2024年09月30日 17:01  webスポルティーバ

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大谷翔平とロサンゼルス・ドジャースは公式戦162試合を終え、98勝64敗でMLB最高勝率、ナ・リーグの第1シードとして、地区シリーズ(1回戦に当たるワイルドカードの次のラウンド)からポストシーズンに臨むことになった。

ドジャースはロバーツ監督体制になった2016年以降、高い勝率を誇ってきた公式戦の成績とは対照的に、ポストシーズンでは結果を残せていないという指摘も多い。しかし、ワイルドカード制度が導入以降、過去の結果を見ると、第1シードチームでワールドシリーズ制覇をしている例は非常に限られている事実もある。

その背景を分析しながら、このポストシーズンを占ってみる。

ドジャース・大谷翔平 2024年プレーオフ展望 前編

【データが示す上位シード苦戦の傾向】

 ロサンゼルス・ドジャースは公式戦の好成績でポストシーズンに第1シードで臨むが、地元ロサンゼルスでは期待以上に、「今年こそは大丈夫なのか?」とむしろ不安の声のほうが大きい。デーブ・ロバーツ監督がチームを率いるようになって以降、公式戦は100勝以上が5度と圧倒的に強く、9年連続ポストシーズン進出。しかしながら世界一になったのは新型コロナウイルスによる短縮シーズンの2020年だけ。これまで、ほとんどのシーズンの最後は、「162試合の公式戦は何だったのか?」と頭を抱えてきたからだ。

 とはいえ、これはドジャースだけの問題ではない。近年のメジャーリーグでは、公式戦での好成績がポストシーズンでの成功につながらないケースが多く、全米のスポーツファンの間では、それがジョークのように扱われている。

 最高の成績を収めたチームは第1シードゆえ、ワイルドカードラウンドは免除され、選手は休養十分で地区シリーズに臨み、格下チーム相手にホームフィールド・アドバンテージも与えられる。しかし、2023年のアトランタ・ブレーブス、22年のドジャース、21年のサンフランシスコ・ジャイアンツと過去3年の最強チームが、ことごとく地区シリーズで姿を消した。162試合でベストの成績を残した上に、3つのプレーオフシリーズを制し、世界一に昇り詰めることができたのは、2018年のボストン・レッドソックスが最後だ。

 ロバーツ監督は「ポストシーズンで勝てるかどうかは、運の要素が大きい。最高の選手を揃えたチームが勝つわけではなく、その時に勢いのあるチームが勝つ。これはプレーオフのフォーマットが理由」と説明している。

 ワイルドカード制度導入前、つまりワールドシリーズとリーグ優勝決定戦しかなかった時代は、公式戦で100勝以上した72チームのうち32チームが世界一になった。勝率は44.4%。ところが、1995年以降のワイルドカード制度導入後、100勝以上した43チームのうち、ワールドシリーズを制したのはたった6チーム。優勝確率は13.9%にまで落ち込んでいる。

 逆に、公式戦で勝ったり負けたりでも、10月に勢いに乗り、ワイルドカードから世界一になった例が少なからずある。2023年のテキサス・レンジャーズ、19年のワシントン・ナショナルズ、14年のジャイアンツ、11年のセントルイス・カージナルスなど8チームだ。

 さらに最近の結果を見ると、ホームフィールド・アドバンテージの効果も薄れていることがわかる。昨年のポストシーズンでは、ホームチームが15勝26敗(勝率.366)。53年間のポストシーズンで最低の結果だ。18年以降、シリーズを制する最終戦でホームチームは6勝10敗で、「ホーム・スウィート・ホーム」とは言えない。

 もともとアメリカンフットボールやバスケットボールのように、スタンドのファンが大歓声で相手チームのコミュニケーションを妨げたり、プレーを邪魔することができるスポーツではない。一方で遠征チームはチーム全員が同じホテルに宿泊し、行動を共にすることで結束しやすくなるという側面もある。

【ドジャースは打撃で押しきれるのか】

 その上で、今年のドジャースにはアキレス腱ともいえる課題がある。ご存じの通り、ケガによって先発投手が次々に離脱し、絶対的なエースが不在の状況だ。「ピッチングが王者を決する」といわれるスポーツにおいて、戦う前からかなりの不利を抱えている。

 そもそもドジャースは近年、直近15試合のポストシーズンで、先発投手が6イニング目も投げた試合がひとつもなかった。特に昨年は悲惨で、クレイトン・カーショー、ボビー・ミラー、ランス・リンが早々とノックアウトされた。彼らの合計イニングはわずか4回2/3、失点は13。公式戦で16ゲーム差をつけていた同地区のアリゾナ・ダイヤモンドバックスにスイープされる屈辱を味わった。

 今年はジャック・フラーティ、山本由伸、ウォーカー・ビューラー、ブランドン・ナックの4人が先発予定となっている。昨年よりは改善が期待できるものの、絶対的なエースが不在というのは同じ。不利な状況を打破するためには、打線が打って、打って、打ちまくるしかない。しかし実を言うと、過去2年もゲームプランは「打ち勝つこと」だった。

 2022年はムーキー・ベッツやフレディ・フリーマンに加え、トレイ・ターナー(現フィラデルフィア・フィリーズ)もいて公式戦で111勝。チームOPS(出塁率+長打率)は.755で30球団中1位、打撃陣は過去10年のドジャースで最強と言われた。しかしポストシーズンではダルビッシュ有やブレーク・スネルのサンディエゴ・パドレス投手陣に抑えられ、4試合で12得点、打率.227だった。

 2023年もベッツとフリーマンがナ・リーグのMVP投票で2位と3位に入る活躍で攻撃陣を牽引し、30球団中2位の906得点を挙げた(1960年以降のドジャースで最多得点チーム)。しかしながら地区シリーズでは3試合で6得点、チーム打率も.177。牽引役の2人も21打数1安打と沈黙。ベッツは「準備は万全だったが何もできなかった」と落胆している。だから今年こそは打ち勝つと言われても、ドジャースファンの心には不安が募るばかりだ。

 無理もない。地区シリーズではパドレスとの対戦が濃厚だが、先発ローテーションにディラン・シース、マイケル・キング、ダルビッシュ有といった実力派が揃っている。相手がブレーブスだったとしても、サイ・ヤング賞候補の左腕クリス・セールなど今季のナ・リーグNo.1クラスの侮れない投手陣が待っている。

 ナ・リーグ優勝決定シリーズに進めたとしても、エース、ザック・ウィーラー率いる強力投手陣のフィリーズが相手となる可能性が高い。今年34歳のウィーラーは、8月以降の10試合で防御率1.80、相手打者のOPS(出塁率+長打率)を.538に抑え、投手としての絶頂期を迎えている。

 もしドジャースがこういった好投手を次々と打ち砕き、勝ち進むとすれば、大谷翔平が9月後半のように、バットと足で超人的な働きを見せるしかない。しかしながらバッターが打撃で好調を長期間維持するのは難しい。大谷のようなパワーヒッターなら、なおさらだ。大谷自身も9月17日の48号本塁打のあと、「いつどんな時でもちょっとしたズレで(打撃は)崩れてくるものですし、持続するのは難しいかなと思います」と認めていた。

 とはいえ公式戦終盤の大谷の圧巻のパフォーマンスを振り返ると、何が起こるかわからないという期待も膨らむ。大谷は2021年から2023年に、二刀流は不可能とのメジャーの常識を打ち破ったし、今年は打者専念で前人未到の「50−50」を達成。大谷翔平という野球選手に、過去のデータは当てはまらない。

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